黒髪の人は部分的に白髪が生えることがあります。
これは「黒髪がデフォルト」で、「白髪が混じった」状態だと言えますね。
では、白と黒のシマウマはどちらの毛色がデフォルトなのでしょうか?
ここでは、「黒地に白縞」なのか「白地に黒縞」なのか、という疑問について生物学的な観点で解説します。
目次
- シマウマの皮膚は何色?
- メラニン細胞からするとシマウマは「黒地に白縞」
シマウマの皮膚は何色?

シマウマの縞模様は、種や個体によっていくらか違いがあります。
例えば、顔面や腹部は白色だけの種があったり、脚だけ白い個体がいたりします。
また絶滅したクアッガ(学名:Equus quagga quagga)は、シマウマの亜種ですが、体の後ろ半分には縞模様がありません。

これらの違いについて、アメリカ・カリフォルニア大学デービス校(University of California, Davis)に所属する生物学者ティム・キャロ氏は次のように述べました。
「このように模様がいくらか異なるにもかかわらず、シマウマの皮膚は黒一色です」
しかし皮膚の色が分かったからと言って、毛色のデフォルトが判明するわけではありません。
肌色が薄い人でも黒髪が生えるように、動物の毛色もさまざまな発生過程で決まるものだからです。
ですからデフォルトの毛色は、白色と黒色が占める割合で決まるものでもありません。
つまり「一部のシマウマは腹部が白いので、白地に黒縞が正解だ」という考え方も正確だとは言えないのです。
メラニン細胞からするとシマウマは「黒地に白縞」
シマウマのデフォルトの毛色は、発生過程を調査することで判断できます。
2005年の研究によると、シマウマの白と黒の毛はどちらもメラニン細胞で満たされた毛包から生えているようです。
この細胞は毛や皮膚の色を決定する色素「メラニン」を生成しています。
メラニンが多いと黒やダークブラウンなどの暗い色になり、少ないと白やブロンドなどの明るい色になるのです。
同様に、シマウマの黒毛にはメラニンがたくさん含まれており、白毛にはメラニンが含まれていません。
つまりシマウマの白毛を作る毛包では、メラニン細胞が「オフ」の状態になっており、色素を作り出さないのです。

キャロ氏も「白毛発生時にはメラニン生成が阻止されるが、黒毛発生時には阻止されない」と述べています。
ブリタニア百科事典はこの発生プロセスから、「シマウマのデフォルトは黒毛を作り出す状態だと言えるので、黒地に白縞と表現できる」と結論付けています。
またメラニン生成が阻止される詳細プロセスは解明されていませんが、縞模様の役割は明らかになってきています。
2020年の研究では、シマウマの縞模様によって、アフリカのアブがシマウマに着地しづらくなると判明しました。
これらのアブは動物に嚙みついて致命的な病気を感染させるため、シマウマは縞模様によって病気から守られていたことになります。
つまり黒色がデフォルトのシマウマは、全身黒毛になれるにもかかわらず、生存率を向上させるためにあえてメラニン色素を縞模様に抑制していたのですね。
参考文献
Are zebras white with black stripes or black with white stripes?
https://www.livescience.com/zebras-black-and-white
Are Zebras White with Black Stripes or Black with White Stripes?
https://www.britannica.com/story/are-zebras-white-with-black-stripes-or-black-with-white-stripes
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部