犬がサイレンに向かって遠吠えする理由は、周波数が本能を刺激するから、仲間からのサインと勘違いしているからの2つが考えられます。
この理由を理解するには、犬のルーツと犬に備わっている習性を理解する必要があります。21世紀になり近代的な人間社会の中で暮らすようになっても、犬の本能や習性は基本的には変わりません。
犬と暮らしている方は愛犬の行動と照らし合わせながら、犬の遠吠えとサイレンとの関係性について読み進めてみてください。
犬が遠吠をするのはなぜ?
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犬は昔群れで生活していたので、遠くにいる仲間に自分の居場所を伝えたり、家族の絆を強めたり、縄張りを他の群れに主張したりする必要がありました。
そこで、通常の鳴き声よりも音域が高く遠くまで聞こえる「遠吠え」を使ってコミュニケーションをとっていました。その習性の名残で現代でも遠吠えをします。
現代では犬本来の習性に加えて、飼い主さんの注意を引いたり、嬉しやさ寂しさなどの感情を吐き出したりするために遠吠えをすると考えられています。また、ストレスから遠吠えをすることもあるともいわれています。
ただ、全ての犬種が遠吠えをするわけではありません。犬のルーツであるオオカミに近い犬種は遠吠えすることが多いですが、原種から遠い短頭種や小型犬はあまり遠吠えしません。
遠吠えをする代表的な犬はシベリアンハスキーやアラスカンマラミュートで、日本で人気のあるシーズーやパグはあまり遠吠えをしない犬種です。
サイレンに反応して遠吠えをする理由
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犬が遠吠えをする本来の目的が仲間とのコミュニケーションであるなら、なぜ無機質なサイレンの音に反応して遠吠えをするのでしょうか。
人と暮らしている犬が、飼い主さんを家族と見なしたり近所の犬を仲間と思ったりして遠吠えするのは分かりますが、パトカーや救急車のサイレン音を聞いて感情が動くとは想像できません。
ではここからは、犬がサイレンに反応して遠吠えをする2つの理由をご紹介します。
理由1:周波数が本能を刺激する
犬がサイレンの音に反応して遠吠えする1つ目の理由に、「サイレンの周波数と犬同士が危険を知らせる時の遠吠えの周波数が似ている」ことが挙げられます。
群れで生活していなくても、危険を知らせる音を聞くと本来の習性が呼び起こされ、危険をキャッチしたことを本能的に周りに伝えようとします。
サイレン音といっても、救急車やパトカー、消防車など車の種類によってリズムや音が異なりますが、周波数はおおむね770Hz~960Hzです。
音の大きさも90dB~120dBと定められているので、犬にしてみたらどのサイレンでも響きは同じように聞こえている可能性があります。いずれにしてもサイレンの周波数を聞くと、オオカミに近い犬種は本能ゆえに危険信号と認識し、遠吠えを始めます。
面白いことに、本物のサイレンではなくスマートフォンから流したものでも周波数が同じなら反応します。一方、周波数を変えて聞かせると遠吠えしません。このことから、犬は周波数に反応して遠吠えすることがわかります。
理由2:仲間のサインと勘違いする
サイレンの音に反応して遠吠えする2つ目の理由は、「サイレンを聞くと仲間が危険を発信していると勘違いし、それに応えてしまうから」です。
1つ目の理由と少し似ていますが、1つ目は「発信のための遠吠え」に対し、2つ目は「受信したことを知らせるための遠吠え」です。
サイレンが聞こえる方向から、犬が軒並み遠吠えを始めるのを聞かれたことがあると思いますが、それはまさに危険をキャッチして知らせている犬と、それに答えて遠吠えしている犬との連鎖反応です。
遠吠えはそもそも犬同士の大事なコミュニケーションツールであることを考えれば、発信する側と受信する側がいて当然です。
遠吠えに対処する方法
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サイレンが原因で遠吠えをしている場合、サイレンが遠のけば犬は自然と遠吠えをやめます。そのため無理にやめさせる必要はありません。とはいえ、夜中や来客中など迷惑になりそうな時のために遠吠えをやめさせる方法を紹介します。
「やめなさい」「ダメ」といっても遠吠え中は耳に入っていかないので、好きなものを見せて気を散らすのが一番いい方法です。
例えば、好きなおもちゃを見せて遊びに誘ったり、おやつを見せて犬の注意をグッと引きつけたりするのが有効です。大抵の犬は、魅力的なものが目の前にあると我に返ったように遠吠えをやめて、おもちゃやおやつに釘付けになります。
犬の注意が引けたら「おすわり」や「ふせ」など、何かしらのコマンドを与えてからおもちゃやおやつを与えてください。コマンドを挟むことによって、遠吠えしたからご褒美をもらえるのではなく、コマンドに従ったからもらえるのだとインプットさせられるからです。簡単な方法ですのでぜひ試してみてください。