ジャコウネココーヒーとは?
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みなさんは高級コーヒーとして知られている「ジャコウネココーヒー」をご存知ですか?
コーヒーにはさまざま種類がありますが、ジャコウネココーヒーは猫のフンから焙煎された、世界一高いコーヒー豆とも言われています。この記事ではジャコウネココーヒーについて詳しく解説していきます。
コーヒーについて知っておきたい基本情報
食後やほっと一息つきたい時、朝の目覚ましなどに飲みたくなってしまうコーヒーの原料となるコーヒー豆は、”コーヒーノキ”と呼ばれる植物の果実の種を使っています。種を焙煎して挽いた粉末状のコーヒーを、お湯や水などで抽出したドリンクがコーヒーです。
自宅や職場で簡単にドリップしてその風味を楽しむこともできますし、カフェやコーヒーチェーン店、コンビニなどでも手軽に楽しめるドリンクとして老若男女問わず親しまれています。
猫の糞からできている「コピ・ルアク(kopi luwak)」とは?
コーヒーが大好きな方は、コーヒー豆の産地や抽出方法などにこだわりを持っておられることでしょう。
さまざまな種類のコーヒーがありますが、その中でも世界一高価なコーヒーと言われているのが「コピ・ルアク(kopi luwak)」です。コピとはインドネシア語でコーヒーという意味があり、ルアクはマレージャコウネコの現地の呼び方から、コピ・ルアクと呼ばれています。
ではなぜインドネシア産のコピ・ルアクが世界一高価なコーヒーと言われているのでしょうか?それは、ジャコウネコのフンからコーヒー豆をとりだして焙煎しているコーヒーだからです。
日本では猫の糞のコーヒーのことを「ジャコウネココーヒー」と呼ばれています。このコーヒーは産出量が少なくて希少性が高いことから高額な金額で取引されており、世界一高価な猫の糞のコーヒーとして知られています。
ジャコウネコの糞からコーヒーができるまで
ジャコウネコのコーヒーが、ジャコウネコの糞であることが分かりました。ではどのようにジャコウネコの糞からコーヒー豆をとり、製造しているのでしょうか?
ステップ1:ジャコウネコがコーヒー豆を食べる
ジャコウネコのコーヒーを製造するためには、まずジャコウネコがコーヒーの実を食べることが最初のステップです。
ジャコウネコがコーヒーの実を食べることは特に変哲もないことですが、実はジャコウネコはかなりの食通のグルメと言われています。つまり、ジャコウネコはコーヒーの実の中でも本当に美味しくて、熟れたコーヒーの実しか食べません。
人間が手摘みでコーヒーの実を収穫していくよりも、ジャコウネコの方が美味しいコーヒーの実を選定する能力が優れているのです。そのためジャコウネコのコーヒーは、味はもちろんのこと、香りも最高級なコーヒーとなるのです。
ステップ2:ジャコウネコがコーヒーの実を消化していく
ジャコウネコは、コーヒーの実をまるでジャンディのように食べていきます。まずコーヒーの赤い実を丸ごと口の中に入れます。その後、口の中で皮の中から甘い実を取り出し、口の中でコロコロと転がした後に飲み込みます。
飲み込まれたコーヒーの実はジャコウネコの腸に届き、腸内の消化酵素がコーヒーに含まれているアミノ酸を分解していきます。体内で約12時間かけて自然発酵されるため、消化されていく過程でコーヒー豆が絶妙な深みを持ち、独特な香味となります。
一般的なコーヒーであれば、収穫から発酵までの作業は人の手で行われていますが、ジャコウネコの場合はすべてジャコウネコの体内で加工されているのです。
さらにジャコウネコの消化酵素は果肉のみを溶かし、種子に当たるコーヒー豆は溶かさないので、消化されずに残ったコーヒー豆がジャコウネコの糞として排出されます。なのでジャコウネコの糞で作るコーヒーと言っても、汚いコーヒーではないのです。
つまりコーヒー豆自体は消化されていませんが、ジャコウネコがコーヒーの実を食べる際に消化液がコーヒー豆に染み込むことで化学変化が生じ、コーヒー豆に独特の風味が加わり、高級なコーヒーへと仕上がるというわけなのです。
ステップ3:ジャコウネコの糞を集めて洗浄する
食べ物を床に落とした場合、3秒以内に拾うことができたらセーフという”3秒ルール”をよく見聞きしますが、ジャコウネコのコーヒー豆の場合は2時間以内に集めることがルールとなっています。
ジャコウネコのコーヒーを製造する上で、糞を集める作業が最も難しいと言われています。なぜなら、ジャコウネコがいつうんちをするか分からないからです。2時間以内に集めることができなかった糞は、コーヒーの豆がすぐに劣化してしまいます。
ちなみにジャコウネコの糞は、ジャコウネコがコーヒー豆ばかり食べるのであまり臭くないと言われています。ですから、糞を2時間以内に集めることは簡単なことではありませんが、臭くないので作業自体は大変ではないと言えるでしょう。
ステップ4:ジャコウネコの糞を乾燥させる
続いてのステップは、集めたジャコウネコの糞からとったコーヒー豆を乾燥させる工程です。数日間かけて太陽の光に当てて干し、しっかり乾燥させます。
屋外で干すことが一般的ですが、ジャコウネコが生息している熱帯雨林はかなりの雨が降るため、シートを上にかけてコーヒー豆が濡れないように雨をしのいでいます。コーヒー豆の水分含有率が11%になるまで乾燥させることができれば、次の作業へと進むことができます。
ステップ5:コーヒー豆を焙煎する
最後の製造工程は、ジャコウネコの糞から取り出したコーヒー豆の焙煎です。コーヒー豆を焙煎するとコーヒー独特の苦味が消え、ジャコウネココーヒー豆特有の甘くてフルーティーな香りがでてきます。
焙煎は専用の焙煎機、もしくはフライパンを使って行うことで、浅煎り~深煎りまで自由に調節することが可能です。
ジャコウネココーヒーの値段はどのくらい?
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ジャコウネコのコーヒー豆が取れる量はとても少ないため、高価なコーヒーとして扱われています。
一般的に1匹のジャコウネコからとれるコーヒー豆の量は、たったの3グラムだけと言われています。つまり、1杯のコーヒーを淹れるためには3匹のジャコウネコの糞が必要となるため希少性が高く、高価なコーヒーとなっているのです。
では、とても高価なコーヒーであるジャコウネココーヒーはどのくらいの値段なのでしょうか?
ジャコウネココーヒーは、海外で1ポンド(450グラム)当たり300~500ドル(日本円で30,000~52,000円)前後で取引されていると言われています。カフェや喫茶店などでジャコウネココーヒーを1杯飲む場合、5,000~8,000円が相場となっているようです。
ジャコウネコのコーヒー豆の入荷状況によっても値段が変動すると言われています。通販でも手にいれることは可能ですが、サイトによって値段が大きく変わってきます。
ジャコウネココーヒーの中にも上質なものもあればそうでないものもあるので、安心して試飲したい方は、コピ・ルアクを提供しているカフェや喫茶店などに足を運ぶことができるでしょう。
ちなみにジャコウネココーヒーの原産国であるインドネシアでは、現地のモールや喫茶店などで1杯あたり1,000円程度で飲むことができます。インドネシアに出かける予定がある方は、現地でコピ・ルアクを楽しまれることもおススメです。
ジャコウネココーヒーの味や種類
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人それぞれ味覚や感じ方には好みがありますので、実際にジャコウネココーヒーを飲んでその風味を確かめることに越したことはありませんが、一般的に言われているジャコウネココーヒーの印象や感想についてご紹介しましょう。
■ジャコウネココーヒーの香り
ジャコウネコがコーヒーの実を消化する過程で独特の香りが付くのでは?と思われている方も少なくありませんが、特に香りが強いというわけではありません。甘酸っぱい甘い香りがすると言われています。もちろん糞などの排泄物のようなにおいはしません。
■ジャコウネココーヒーの味
ジャコウネココーヒーは酸味が少なく、さっぱりしているのが特徴的です。でもコクもしっかりあるので、酸味とコクがバランスよく整っていると言えるでしょう。
健康にもいいジャコウネココーヒー
とても高いという値段と美味しさにいつも注目されているジャコウネココーヒーですが、健康にもいいことで知られています。とくに老化を予防できる効果が期待されているんです。
そもそも老化の原因のひとつに、紫外線の影響が挙げられます。ジャコウネコのコーヒーにはクロロゲン酸というポリフェノールが豊富に含まれており、紫外線による皮膚のシミを予防して活性化させる働きがあります。
また老化の別の原因にはストレスがあります。ジャコウネコのコーヒーに含まれているカフェインは、63%のストレスを軽減させることが可能という研究報告が寄せられていることから、ストレス軽減も大きく期待されています。
ジャコウネコのコーヒーには老化の予防に加え、更年期障害の予防や子宮がんの予防など女性の健康維持に役立つとも言われています。
ジャコウネココーヒーには種類がある!
ジャコウネココーヒーといっても、たくさんの種類が存在しています。それはジャコウネコがどの種類のコーヒーの実を食べたかによって分類されています。
そもそもコーヒーの実は質が低いロブスタ種、質の良いアラビカ種、そして最高級の質のピーベリーの3つに大きく分かれています。ジャコウネコがとのコーヒーの実を食べたかによって、ジャコウネコのコーヒー豆も異なった種類ができるのです。