はじめに
犬が足を上げて電柱や壁に向かってピュッとオシッコをするのを見たことがある人は多いのではないでしょうか?オシッコが終わったと思ったら他の場所でも同じように繰り返し行うことがあるので、「あれ?随分とオシッコが溜まっていたのかな?」なんて思うこともあるでしょう。
しかしこれはオシッコが溜まっているというわけではありません。犬はそれらの場所にオシッコをかけてマーキングをしているのです。さて、このマーキングを人に向かってする犬もいます。足元にピュッとオシッコをかけられると、まるで電柱扱いされたような気分になります。どうして犬は人に向かってマーキングするのでしょうか?
今回は犬が人にマーキングする理由について調べてみましょう。そして人にマーキングするのをやめさせる方法についても考えてみたいと思います。その前にまず、そもそもなぜ犬がマーキングをするのかについて説明しますね。そうすれば、人にマーキングする理由についてのヒントがわかるでしょう。
犬がマーキングをするのはなぜか
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犬はオシッコをかけたり体をすり寄せたりしてマーキングという行為を行います。そもそもどうして犬はマーキングをするのでしょうか?
縄張りの主張をしている
犬がマーキングする理由のひとつは縄張りの主張をしているというものです。「ここは自分の場所だ」と主張して自分のニオイを付けているのです。散歩コースが決まっていると、いつもの電柱や壁に向かって足を上げてマーキングする犬もいます。自分の通り道であることを主張しているのでしょう。
足を上げてオシッコをすることによって、高い位置にニオイを付けることができます。そうすることによって自分が大きくて強い存在だということを示しているのです。小型犬の中には逆立ちをするかのようにして高い位置にマーキングする子もいるようです。とはいっても、小さくて弱い犬のオシッコのニオイは他の犬のオシッコのニオイに負けてしまうと言われています。
室内犬の場合は自分の縄張りが家の中になります。縄張り意識の強い子は家の中でもマーキングをしてしまうことがあります。犬にとって大切なニオイですが、わたしたちにとっては臭いオシッコのニオイなので困ってしまいますね。
あいさつ代わりのマーキング
犬は人間よりも遥かにニオイに敏感です。ニオイは犬にたくさんの情報を与えるものでもあります。犬はマーキングすることによって自分の情報を他の犬に伝えています。犬はニオイで自分がこの場所を通ったこと、いつ頃に通ったかも分かるそうです。
また、犬のオシッコのニオイで性別や感情などを伝えることができるとも言われています。散歩中の犬は自分がマーキングするだけでなく、他の犬たちがマーキングしたニオイからたくさんの情報を得ていることにもなります。発情中のメス犬もその場に座り込んでマーキングすることによって自分の存在をあいさつ代わりに知らせているようです。
自分の地位を示している
自分の地位を示すためにマーキングする犬もいます。家の中でマーキングをされると困ってしまいますが、それは犬が家の中でリーダーだと勘違いしているためだとされています。リーダーである犬が家の中に自分のニオイを付けて存在をアピールしているのです。でも家の中でのマーキングは家族にとって迷惑行為になりますね。
多頭飼いの場合も自分より下の立場の犬に向かってオシッコをひっかける子がいます。我が家の2匹のチワワも、先住犬が新入りに向かってオシッコをひっかけるので困っていましたが、自分ほうが上の立場だということを主張していたのでしょう。リーダー意識の強い犬はマーキングだけでなく無駄吠えが多くなると言われています。
ストレスを感じている
犬はストレスを感じるためにマーキングすることがあるとも言われています。人間と暮らしていると自分のペースを守れなくなったり、飼い主に食事や運動などが全部依存していたりするので、何かとストレスの多い生活を強いられることがあります。ストレスを感じることによって家の中でマーキングをするようになる子がいるようです。
引っ越しなどの生活環境の変化や、結婚、出産などで家族の成員が増えた時、新しいペットを迎えた時などは特にストレスを感じやすくなります。自分に関心が向けられなくなったり、ご飯の時間を忘れられてしまったり、散歩をすっぽかされたりすると、愛犬はストレスをどんどんと溜めていくことになります。
犬が人にマーキングする理由
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上記のように様々な理由で犬がマーキングをすることが分りました。散歩中や家の中でのマーキングの意味が分かりましたが、中には人にマーキングする犬もいます。飼い主にマーキングする場合や、他の人にマーキングをする場合がありますが、どうして人にマーキングするのでしょうか?
飼い主は自分のものだと他の犬にアピールしている
縄張りを主張するために自分のニオイを付けてマーキングすることを説明しましたが、飼い主のことを自分のものだと主張してマーキングすることがあるようです。飼い主と2人だけの時はしませんが、他の犬がやってくると飼い主にピュッとオシッコをかけて自分のニオイを付けるのです。
飼い主のことが大好きなのでひとり占めにしたいと思っているのかもしれませんね。オシッコだけでなく、体をすり寄せて自分のニオイを付けることもあります。体をすり寄せるくらいならかわいいですが、オシッコをかけられると臭いので困ってしまいます。
飼い主の注意を引こうとしている
飼い主の注意を引くためにマーキングすることもあります。例えば散歩中に立ち話をしている時に、話し相手に向かってピュッとマーキングしたとしましょう。飼い主は驚いたように反応して相手の人に謝ります。それから散歩を継続するわけですが、この一連の行動を自分に注意を向けてもらったと勘違いしているのです。
散歩中に立ち話が始まると犬は退屈になりますが、相手の人にマーキングすればまた散歩を再開してくれると思っているのかもしれません。マーキングして叱られているのに、相手にしてもらったと勘違いすることがあります。マーキングすれば相手にしてもらえる、散歩に連れて行ってもらえる、ご飯がもらえるなどと勘違いしてしまうと問題です。
主従関係が逆転している
自分がリーダーであると主張する意味でマーキングすることがありますが、これを人に対してしているとしたら良くありません。飼い主との主従関係が逆転していることが考えられます。この場合はマーキングするだけでなく、気に入らないことがあると飼い主に対して唸ったり威嚇したりするようになります。自分が家の中でリーダーだと勘違いしているのです。
家族の中で自分の順位を決めている子もいます。飼い主にはマーキングしないのに他の家族の成員にはするという場合もあります。家族みんながお父さんに敬意をもって接していないと、お父さんの順位が犬よりも下になってしまい、電柱にするかのようにピュッとマーキングすることがあるかもしれませんね。お父さんとしては絶対に許してはならない状況です。
あいさつをしている
来客に興奮してマーキングしてしまう子もいます。また、散歩中に立ち話をしている相手に向かってマーキングすることもあります。この場合、あいさつとして名刺代わりにオシッコをピュッとひっかけているのであって、決して相手に不快感を与えるためではありません。むしろお近づきの印にといった気持ちが込められていることもあります。
相手に対して、自分には敵意がないことを示すためにマーキングすることがあります。また仲良くしたいという気持ちを表している場合もあります。同様の理由で他の犬に向かってオシッコをひっかけてマーキングすることもあります。