犬の皮膚が伸びるのはなぜ?
Unchalee Khun/shutterstock.com
愛犬と遊んでいるときにほっぺをつまんだことがあるでしょうか。そのまま伸ばしてみたことありませんか?そしてこう思ったかもしれません。
「どうしてこんなに皮膚が伸びるのかしら?」
そうなんです、犬の皮膚は想像以上に伸びるんです。皮膚が伸びるのはすべての犬種に共通していることではありませんが、犬の皮膚が伸びることで有名になったのが「柴犬」です。
柴犬を飼っている方がほっぺを引っ張ったところ、愛犬の皮膚がびよーんと伸び、その様子をSNSに乗せたところ話題になったのがきっかけです。きっとこんな写真や動画を見た後で、うちの愛犬はどうだろう?と思って試した人は少なくないのではないでしょうか。
それにしても、どうしてこんなに犬の皮膚は伸びるのでしょうか?今回は犬の皮膚の謎に迫ってみましょう。
外敵から身を守るため
犬の皮膚がよく伸びる一つの理由は、外敵から身を守るためというものがあります。
野生で生きてきた犬にとって自分の身を守ることは大切です。外敵にいつ襲われるか分かりません。万が一襲われたとしても致命傷にならないように、皮膚が伸びやすくなっているようです。そのため、特に急所ともいえる首の皮膚は伸びやすくなっています。
母犬や母猫が子犬や子猫の首をくわえて移動させることがあります。これも首の皮膚が伸びるからできることです。首の皮膚が伸びるようにできているのには、いろいろな理由があるようです。
他にも外敵から身を守るため、大事な器官が入っている頭や、外側に露出している背中の皮膚なども伸びやすいようです。
逆におなかの皮膚はそこまで伸びないようです。足も外側は伸びやすいようですが、内側は伸びにくいようになっています。内側と外側で比較してみるとよくわかるでしょう。
皮膚が伸びることにはデメリットもある
犬の皮膚がよく伸びるのは外敵から身を守るためという大切な理由がありました。しかし皮膚が伸びやすいことは、良いことばかりではないのです。
皮膚が伸びやすいと、伸びた部分に菌が入り込みやすくなってしまいます。というのも皮膚が伸びると皮膚と皮膚のあいだに隙間ができてしまいます。そのため菌が侵入しやすく、もし傷があった場合などは菌が繁殖して、最悪壊死を起こしてしまうのです。
ですから、特に愛犬が皮膚の伸びやすい犬種なら、けがをした場合は獣医師に診てもらうようにすると安心です。壊死を起こしてしまうと皮膚が剥がれ落ちて肉が表に出てしまうため、さらなる感染症などの危険性が高まってしまいます。
よく伸びるパーツはどこ?
PHATSUKE/shutterstock.com
では犬の体の中でどのパーツの皮膚がよく伸びるのでしょうか?
①ほっぺ
SNSでも話題になった「ほっぺ」は皮膚がよく伸びる部分です。
横に伸ばしてみたり、縦に上下に伸ばしてみたりと面白いほどよく伸びます。犬自身もそんなに嫌がらないパーツなので、調子に乗っていつまでも伸ばして遊んでしまいがちですが、引っ張り過ぎには注意しましょう。
②くちびる
ほっぺ同様によく伸びるパーツの一つです。ただし敏感な部分でもあるので、触られるのを嫌がる犬は少なくありません。口周りを触られることに慣れている犬でしたら伸ばしても怒らないかもしれませんね。引っ張ることに成功すればかわいらしい愛嬌のある顔になるでしょう。
③眉間
大事な脳が入っている頭に近い眉間の部分は、ほっぺほど伸びませんが十分つまめるほどに伸びます。とはいえ頭蓋骨に守られているのでそこまで伸びないかもしれません。
④耳
意外に伸びるのが耳です。特に耳の裏の皮膚はよく伸びます。耳の裏は犬も触られると気持ちがよいのか喜ぶパーツです。皮膚を伸ばして遊ぶだけではなく、優しくマッサージしてあげると気持ちよさそうにして喜ぶはずですよ。
⑤背中
大切な内臓を外部の敵から守るために、背中の皮膚や伸びやすくなっています。背中をつまんだ時に皮膚が伸びるため、肉がつまめる、太ったのかしら!?と勘違いする方もいますが、皮膚が伸びやすいというのが理由でしょう。そのためちょっとたるんでしまっている犬もいます。
皮膚が伸びやすい犬種と伸びにくい犬種
すべての犬の皮膚が伸びやすいか?といったらそうではないようです。
皮膚が伸びやすい犬種には、SNSでも話題になった「柴犬」を挙げることができます。他にもゴールデンレトリバーやダックスフンド、パグなどは皮膚が伸びやすい犬種です。
逆に皮膚が伸びにくい犬種はドーベルマンやブルテリア、グレイハウンドなどです。短毛種で皮膚が張っている犬種は皮膚が伸びにくい傾向にあります。あなたの愛犬の皮膚は伸びやすいですか?
愛犬の皮膚を観察して健康チェックをしよう
Dmytro Zinkevych/shutterstock.com
ここまで犬の皮膚が伸びる話をしましたが、毎日愛犬の皮膚を観察することで健康状態を知ることもできるでしょう。ですからただ皮膚を伸ばして遊ぶのではなく、毎日愛犬の皮膚や被毛を触って健康状態もチェックしましょう。
毎日ブラッシングをし、定期的にシャンプーをして清潔を心がけるようにしたいですね。ブラッシングの時に皮膚の状態や被毛の状態に注目してください。
皮膚をみるときに、フケが出ていないでしょうか?赤みやただれはありませんか?痒がっていないでしょうか?こんなところを見てください。
被毛の状態をみる場合は、毛艶や毛並みはどうか、抜け毛はないか、部分的な脱毛なのか、それとも全体的な脱毛なのかといったところに注目しましょう。
愛犬が痒がっているなら
愛犬がよく痒がっている場合は、ノミやダニなどの寄生虫が原因のことがあります。皮膚や被毛を観察したときに黒い粒がありますか?それはもしかしたらノミの糞かもしれません。
他にも細菌や真菌に感染して皮膚炎を起こしていたり、アレルギーによる皮膚疾患を起こしていたりする可能性もあります。痒がっているほかにも、皮膚の赤みや湿疹、脱毛、異臭などを感じたら病院で診てもらうと良いでしょう。
湿疹や被毛がべとつく、またはフケがあるなら
フケが多かったり被毛がべとついた感じがあったりする場合は、脂漏症の可能性があります。不潔にしていたり、ストレスや栄養不足などで皮膚の抵抗力が弱ったりすると、普段はなんともない菌にも負けて炎症を起こすことがあります。
塗り薬の使用や専用のシャンプーで清潔を心がけたり、栄養をしっかり取ったりすることで症状は改善していきます。体臭がきつい、フケが多く出る、脂でべたついた感じがするといった場合は、病院で診てもらうようにしましょう。
皮膚の色が変わっている場合
皮膚が青紫や赤紫に変色している場合は、内出血を起こしている可能性があります。アクシデントによって打撲ができ変色している可能性もありますが、血液凝固の異常によって打撲傷のように見える場合もあります。
また皮膚の色が黄色っぽい場合は黄疸が考えられます。白目や歯茎も見て同じく黄色っぽい場合は、すぐに病院で診てもらうようにしましょう。
皮膚が異常に伸びる場合
もともと皮膚が伸びるタイプの犬種でも、皮膚の伸び方が違ったり、伸びない犬種の犬でも急に皮膚が伸びるように感じたりすることがあるかもしれません。
これはもしかしたら、急激に体重が落ちることによって皮膚がたるんでいることが考えられます。急激な体重減少はがんなど何らかの病気が隠れている可能性もあります。
また、柴犬の場合気を付けていただきたいのは「エーランスダンロス症候群」という病気です。大変まれではありますが、皮膚が伸びすぎてたるむという病気です。