抜け毛の悩み
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犬を飼う際に、毛が抜けるのと抜けないのとでは掃除や洋服の扱いなどが変わってきます。毛が抜けない犬種であれば想像もつかないような苦労も、毛が抜ける犬種を飼っている方にすれば日常茶飯事です。
もし今犬を飼おうとして犬種を調べておられる状況であれば、毛が抜けにくい犬種に絞って探すのも一つのアイデアです。今回は中型犬のケースでご紹介します。
中型犬とは?
主に、体重10~25キロの犬を中型犬と呼びます。柴犬などはその代表ですが、中型犬でも体重が10キロを切るものもいれば、小型犬なのに10キロを超えんとする犬もいます。
個体差によって大きさが異なりやすいのが中型犬であり、ある意味サイズに関してはもっともフレキシブルな立ち位置です。体格や身体的な特徴に関してももっとも多様で、背が高く足が長い犬種もいれば、筋肉質で足の短い犬種もいます。
日本原産の犬種に関して言えば、柴犬や甲斐犬のように立ち耳で尾尻は巻き尾、サイズも10キロ前後の犬種がほとんどです。
能力的にも、小型犬と大型犬の中間にあります。小型犬のような俊敏性を持ちながら、大型犬に近い体力と知性を兼ね備えます。
ヨーロッパや中央アジアで使役犬として一番多く用いられるのは、実は小型犬です。体が大きくないためどこへでも赴くことができ、小型犬よりも強く身体面で優れているため、どんな任務でもこなせるパワーがあります。
牧羊犬や牧畜犬、狩猟犬、警察犬など、あらゆる分野で必ず活躍するのは中型犬です。
毛が抜けにくい中型犬を飼う
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それでは、毛が抜けにくい中型犬種をご紹介しましょう。中型犬は毛が抜ける犬種が多く、どちらかと言えば候補は少ないのが難点です。でも魅力的な犬種がたくさんいますよ。
ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグ
ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグは、その名の通りポルトガル原産の毛量の多い犬種です。最大で27キロにもなることがありますが、通常は中型犬のカテゴリーに含められます。少し前では、アメリカのオバマ元大統領が飼っていたことで有名になりました。
ウォータードッグと呼ばれるのは、その発祥が海辺や漁師の住んでいた環境にあることから来ているようです。漁での使役犬として使用されていた時代があり、水に強い個体や犬種を地元の犬と交配させて出来たとされています。
漁師と共に船に乗り込み、伝令を書いた内容物を泳いで届けに行ったり、鳥を追い払ったり網の引き込み、魚を網の追い込む作業さえも手伝っていたと言い伝えられるのが、ポーチュギーズ・ウォーター・ドッグです。
・外見的特徴
毛並みは、全身にウェーブがかかった立派なシャギーコートとなっており、寒さや水に強いのが特徴です。
現在では、見た目のためにカットされることがほとんどですが、当時から首から胸、前足には毛を残しておき、下半身は毛を剃って泳ぎやすくする「ライオンクリップ」が伝統的なスタイルでした。
冷えや凍傷を防ぐために、尾の先端にも毛を残します。毛を残しておいても問題ありませんが、毛量が多くすぐに伸びやすいため、手入れが大変になります。
毎日のブラッシングを楽しめるようであれば、光沢のある立派な巻き毛を育ててやるのもいいでしょう。月1回のトリミングは必須です。たれ耳は大きく、尾も垂れているのが特徴です。
・性格
飼い主には忠実になるタイプで、一度信頼関係が築けるといつも一緒にいようとします。あまりに長時間放ったらかしにすると、ストレスを感じやするくなるので注意が必要です。
近年では、網を使って行う漁が衰退したため、役割を失うとともにショーやペットとして使用されるようになりました。扱いやすい性格がその生存を手伝ったと言われています。
・散歩について
体力があり運動量も多いことから、漁では重宝されていました。現代の環境で飼うには、それ相応の運動をさせてやらなければならないため、それなりに飼い主を選ぶ犬種です。
最低でも、1時間程度の散歩に2回、毎日連れて行くことが必要です。それ以上運動させてやると、さらに健やかな状態を保てるでしょう。
・寿命とかかりやすい病気
平均寿命は13年程度です。中型犬としては長くも短くもありませんが、個体差によってある程度変わります。
遺伝性の疾患にかかることが他の犬種に比べて多く、「股関節形成不全(関節の疾患で、歩行困難になる可能性がある)」と「進行性網膜委縮症(網膜が少しずつ萎縮し、視力の極端な衰えや失明に至る」などが代表的です。
現在の技術では根本治療を行うことが出来ないため、寿命と共に表れやすい病気として付き合っていくしかないこともあります。
プードル
プードルも、毛が抜けない種として代表的であり、世界中にその名を知られている犬種です。フランス原産のように思われがちですが、より厳密にはロシアや中央アジアが発祥とされています。
主に猟で活躍し、水中に強い回収犬や鳥や小動物の猟犬として古くから利用されてきました。
荷車を引いたりすることもでき、中型犬と大型犬のプードルは体力、パワー共に非常に優れています。ペットとしても古くから歴史があり、飼いやすい従順な性格や知性が特徴的です。
・外見的特徴
大きさにバリエーションがありますが、犬種はどれもプードルです。中型犬に位置付けられるのは「スタンダード・プードル」と「ミディアム・プードル」で、体重はそれぞれ15~25キロ、8~15キロになります。
毛の色は多彩で、典型的なホワイトからブラック、グレーやレッドなどの毛色も見られます。好奇心が強く運動神経が優れており、しっかりと訓練すればあらゆる運動や任務をこなせます。ブリティッシュコロンビア大学の調査によれば、ボーダー・コリーに次いで2番目に賢い犬とされています。
プードルの毛に話を移すと、巻き毛のシングルコートが特徴的で、非常に抜けにくい毛を有します。シングルコートで手入れもしやすいため、毛を伸ばしても管理にはそれほど苦労しないでしょう。
興味深いことに、現在の犬のトリミングやカットの技術は、常日頃から毛の手入れが非常に重要であったプードルを基準にしていると言われています。頭と胸部、足先、尾の先にだけ毛を残して後を剃るのは、水に入った際に重要な部分を守るという、泳ぐ習慣を根強く持つプードルならではのスタイルです。
前述のポーチュギーズ・ウォーター・ドッグの場合でもそうですが、「~クリップ」と呼ばれる各種トリミングスタイルは、プードルの使役環境やショーとしてのスタイルから派生したとされています。そのため、現在でも様々なスタイルにトリミングしやすい代表的な犬種となっています。
・性格
一方で、性格は穏やかで人懐っこく、飼いならしやすい犬種です。プードルは泳ぎが得意です。猟師が撃ち落としたカモを泳いで取りに行く、という使役方法が非常にポピュラーでした。当時はより強く頑丈な犬でしたが、品種改良や小型化によって現在の愛玩犬としての姿になりました。
・散歩について
飼い方に話を進めると、小型犬であるミニチュア・プードルやトイ・プードル以外、運動量は豊富で散歩にも十分連れて行ってやる必要があります。
毛が多い割ににおいが少なく、愛玩動物として飼うには手間がかかりにくい犬種ではありますが、トリミングが毎日のブラッシングが欠かせません。海や川に連れて行って泳がせるのも良い運動ですが、血中のナトリウム濃度が危険なほど薄くなる“水中毒”には十分注意する必要があります。
アメリカン・コッカー・スパニエル
アメリカン・コッカー・スパニエルは、イングリッシュ・コッカー・スパニエルを先祖に持つ、アメリカで品種改良された犬種です。体重は10~13キロ程度です。
スパニエルの名がつくことから想像できるように、ヨーロッパで古くから飼育されてきた犬種として非常に長い歴史を持っています。主に鳥を狩る際の猟犬として使役され、イングリッシュ・コッカー・スパニエルは“最も小さい猟犬”として重宝されていました。
アメリカ開拓のために派遣されたかの有名なメイフラワー号に、アメリカン・コッカー・スパニエルの元祖となるイングリッシュ・コッカー・スパニエルが乗っていたとされています。
・外見的特徴
イングリッシュ・コッカー・スパニエルとは違い、アメリカン・コッカー・スパニエルは愛玩動物やドッグショーのための見た目やサイズを優先して改良されており、美しくウェーブのかかった被毛が特徴となっています。
猟犬を先祖に持つためか、小柄ながらも筋肉質な体格が特徴で、改良されたアメリカン・コッカー・スパニエルは口先が短く、毛の量も多くなっています。
アメリカン・コッカー・スパニエルの毛の色のバリエーションは、美しいブラック、タン・ブラック、明るいクリーム、赤みがかったブラウンが挙げられます。ホワイト系もありますが、ブラックを基調とした毛並みが特徴です。
ドッグショーなどでは厳格な規定があるものの、一般的なアメリカン・コッカー・スパニエルでは、美しく光沢のあるブラックの毛並みが好まれる傾向にあるようです。
・性格や散歩について
改良の例に漏れず、人懐っこく明るい性格です。運動量は多いため、1時間程度かそれ以上の散歩が必要となります。ダブルコートで下の毛量も多いため、ブラッシングには時間がかかります。手間暇かけて毛の手入れをしてやるつもりで飼ってください。
・かかりやすい病気
遺伝的な疾患として、レイジ・シンドローム(突発性激怒症候群)を発症する個体がいます。問題行動が加齢と共に増えるようであれば、動物病院で正確な診断を受けましょう。
他にも、目の疾患や耳の疾患が他の犬種と比べて多い傾向にあり、信頼できる動物病院が身近にあることが重要でしょう。