ワンちゃんにエアコンは必要か
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ワンちゃんを飼っている方にとって、夏場にエアコンをつけてやるかどうかは迷いどころでしょう。
電気代を節約したいのはやまやまですが、愛犬の健康を差し置いて節約するわけにはいかない、かと言ってエアコンをつけっぱなしにしてワンちゃんの健康にいいのだろうか、などと考えてしまうこともあるかもしれません。
今回は、ワンちゃんとエアコンというテーマで情報を集めてみました。
熱中症に注意
犬も熱中症を発症します。暑さでは犬の方が弱く、まだ人間の方が耐久力があります。
犬が熱中症を発症してしまうと、いつまでも舌を出してハァハァと荒く息をしていたり、そのままへたり込むように休みます。舌が赤黒くなっていたり、目が充血していたりすることもあります。
ぐったりして何も反応がない場合や、おしっこをもらすほど弛緩している場合は、すぐに水を飲ませたり首やわきの下を保冷剤で冷やすなどして体温を下げ、急いで動物病院で診察と適切な処置を受けさせてください。
人間と同じように、死に至る可能性があるため一刻を争う緊急事態となります。
さらに、ヒューヒューと苦しそうに息をするなど呼吸困難の症状を見せたり、大量に唾液を落としたりなどの症状もあります。
これらは一例ですが、水の飲み方や疲れ方に常に気を配り、いつもと何か違う様子でいないかを観察してください。
ワンちゃんの体温調整機能
人間と同じように、ワンちゃんの身体にも汗腺が備わっています。これによりある程度体温を調整しているのですが、人間と比べて調整幅が少ないのが特徴です。
汗を分泌する汗腺には「アポクリン腺」と「エクリン腺」があります。いわゆる汗臭い、強い臭いを発するのがアポクリン腺です。
アポクリン腺からは臭いと粘りのある汗が分泌され、これにより個体の特徴を示すフェロモンとして機能します。
ワンちゃんをしばらく洗わないと臭うあの犬らしい臭いは、このアポクリン腺から来ています。人間では脇の下など限られた場所にしかありませんが、犬は全身にアポクリン腺を有しています。
ワンちゃんは洗わないと臭いがすぐに発生してしまう理由がこれです。
これに対し、エクリン腺は無臭でサラサラした汗を分泌します。水分が大量に身体の外へ出てしまいますが、体温を下げるのに効果的な機能です。
人間は、このエクリン腺を全身に有することで一気に発汗し、かなりの高温でも体温を調節することが可能です。
しかし、ワンちゃんはエクリン腺を非常に限られた場所にしか持っておらず、なんと鼻と肉球にしかありません。
そのため、汗をかいて体温を調節することがほぼできません。特に、夏場の蒸し暑い日には、いくら肉球の間に汗をかいてもまったく追い付かないのが現状です。
そこで、舌から唾液を蒸発させることで体内の別を発散し、熱を拡散しようとします。
人間に比べると体が小さいワンちゃんですので、熱は逃がすよりも保つ方が生命維持に必要です。一気に発汗して体温を下げてしまうと、エネルギー源が限られている自然界では、いざという時に必要な体温を確保できないことにもなります。
このような事情から、ワンちゃんの体は体温調節が人間よりも未発達であることが考えられます。
夏バテを起こしやすい犬種
ワンちゃんの種類によって夏バテを起こしやすいものとそうでないものがあります。
・短鼻の犬種は、比較的夏バテを起こしやすいと言われています。
鼻が短く口腔の面積が狭いという体の構造上、汗をかいて体温を逃すのも唾液を気化させて熱を逃がすのも苦手です。熱中症のリスクが中頭種や長頭種のワンちゃんと比べるとはるかに高くなってしまいます。
ブルドッグやシーズー、パグ、ボストンテリアなどがこれにあたります。
・北国出身のワンちゃんも、熱は苦手です。日本では、ありとあらゆる種類のワンちゃんを購入可能ですが、日本の気候に十分に適合できるワンちゃんはそれほど多くありません。
それだけ温度や湿度の面で日本の気候が厳しいために仕方がないことなのですが、原産国が気温の低い国で、そこで代々飼育されてきたワンちゃん達は、日本の暑さで簡単に熱中症になってしまうことがあります。
犬の毛は、基本的に二層式です。上毛と下毛に分かれており、下毛は体温を保護するためにあります。一層しかないシングルコートの犬種もいますが、北国出身のワンちゃん達はもれなく二層式の毛を有しています。
おかげで、雪の中を何時間も活動できるほど体温を保温する能力に優れている代わりに、暑さには一撃でやられてしまいます。
チャウチャウやシベリアンハスキー、アラスカンマラミュートなどの犬種は、日本の暑さに非常に弱い特性を示すことがあります。
・長毛種も、似たような理由で日本の暑さに耐えられない場合があります。
マルチーズやプードル、チワワなどの犬種は、小型犬で体力も少ないことから余計に暑さへの適応力が少ない犬種です。
シングルコートで分厚い毛皮に覆われていなくても、毛が長いことでいつもコートをまとっているからです。
これ以外にも、肥満によって脂肪で体温調節が上手くできないワンちゃんや、体が小さく本来の機能が未発達な状態にある子犬、体力が落ちている老犬も、体温調節に関しては不利な状態にあります。
付け加えると、短頭種のワンちゃんが熱中症にかかってしまうと、気管が狭くなってしまう気管虚脱や気管低形成などの病気にかかっていることがあり、グスグス、フガフガといった苦しそうな息を発することがあります。
冷房をガンガン効かせれば大丈夫?
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では、とにかく冷房をガンガンに効かせて部屋を冷やしておけば、ワンちゃんが熱中症にかかることはないのでしょうか?
確かに、熱中症のリスクは室温を下げることで大幅に減らせますが、今度は冷房にまつわる体調不良や健康リスクが発生します。
冷房を付けることのリスク・デメリット
夏の暑い日には、冷房ガンガンに効かせた部屋でゆっくりするのが最高ですが、ワンちゃんにとっては体調を壊してしまう理由になってしまうことがあります。
「冷房病」にかかってしまうと、ワンちゃんも人間と同じように様々な体調不良を起こしてしまうのです。
外気温との激しい落差によって自律神経が乱れて体調不良になったり、冷房が直接当たる場所に長時間いることや冷えすぎた床に体をずっと当てることで、体温が下がり過ぎて適切な状態に保てなくなったりします。
冷房によって体調を壊してしまうと、ワンちゃんは夏バテと同じように元気がなくなったり食欲不振などに陥ります。
全くもって人間と同じような体調不良ですが、ワンちゃんも恒常性を維持して生きる動物であるため、極端な体温の上下には非常に弱いのです。
冷房によって過度に不調に陥った場合は、下痢や嘔吐に苦しんだり、息を快適にすることができず、咳や荒い息になったりすることもあります。
“鼻が濡れていると健康の証”と言いますが、体調を崩した場合は鼻水がやたらと出るケースが見られます。
体の小さいワンちゃんは冷房の影響を受けやすい
熱中症になりやすいのと同じように、体の小さいワンちゃんは冷房による体温低下の影響も受けやすい状態にあります。
体が小さく発熱量が少ないため、中型犬や大型犬に比べて体温が下がりやすく、エアコンの風を直接受け続ければ、簡単に下痢や食欲不振になってしまいます。
留守中にエアコンをつけっぱなしにして出かけた場合、人間によっては快適な温度に設定しているのに、ワンちゃんにとっては家の中が冷えすぎてしまうことがあり、気がつけばゲージの中で凍えていることも決して珍しくありません。
基本的に、小型犬は暑さにも寒さにも弱く、こまめに世話してやらなければ簡単に体調不良になってしまうことを忘れないでください。
体を温めるために外に出してやるのも一つの方法ですが、真夏日や猛暑日であれば、ほんの少し外に出るのも危険という場合もあります。夏場も冬場もやはり、人手でこまめに世話してやらなければ健康的な環境はなかなか作り出せません。