服を着ている犬は、屋内で抱かれている犬にも、公園や散歩中の犬にも見られます。そしてペットショップでも大小さまざまな可愛い服がたくさんありますね。
可愛らしいという一方で、「犬に服を着せるのはどうなのか」という意見もあります。飼い主さんが楽しんでいるだけで、犬には迷惑なだけでメリットがないと思われるのでしょう。
犬が服を嫌がる理由
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確かに初めて服を着る犬にとって、服自体は体外の異物以外の何物でもありません。背中やお腹にまとわりつく異物、脚の付け根の動きを邪魔する異物という感じですね。
例えば、皮膚炎を起こしてしまっている犬に炎症部分を引っかいたりなめたりすることを防止したり、お腹の冷えを防止したりするといった理由で飼い主さんが服を着せることがありますが、犬にはまず理解することができません。
服を着ることをあまり気にしない犬もいますし、犬によっては服を取り除こうとするのはそれぞれで自然な行動です。また、厚手の服や硬かったり重かったりする服、きつく縛られ体に密着した服は背中を圧迫してしまっているのかもしれません。
犬の祖先であるオオカミは、群れ内で優越関係をはっきりさせるときなど、優位個体が劣位個体にのしかかって馬乗り状態になることがあります。服を着せられた犬の中には、背中に外部圧迫がかかることで、群れで生活していたころの劣位行動が呼び起こされてしまうような子もいるのかもしれませんね。
犬に服を慣れさせる方法
首輪やハーネスを初めて付けたときも犬にとっては違和感しかなかったかもしれません。だからと言って首輪やハーネスを付けずにお散歩に行くなら、最悪の事態に遭遇してしまうことになりかねません。
服に関してはそこまでの危険度はないにしても、風邪のリスクやヘルニアのリスク・害虫のリスクなど服を着たことによって軽減できることがあると考えられます。それで服を着ることに慣れてもらうことは愛犬にためにもなるということもあります。どのように嫌がる犬に慣れさせることができるのでしょうか。
1.服を着せたらご褒美のおやつをあげる
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最初は服を着せたことで噛みたがったり変な動きをしてしまうことがあります。それで服を着せたらご褒美のおやつをあげることによって、服を着るといいことがあると犬に刷り込みをすることによって感情を変化させるようにしてあげましょう。お気に入りのおやつを用意しておくのはいかがでしょうか。
2.服を着せたら遊んであげる
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服の存在が気になってぐずるといった仕草をさせないように、服を着たことを忘れてもらえるように一緒に遊んであげることができます。遊びに夢中になると服を着ていることを忘れるので、遊んでいる最中は着せて遊び終わったら脱がせるということをしましょう。
そうすることによって服を着せられること=飼い主さんが遊んでくれるという刷り込みをすることになります。楽しいことと関連して愛犬が覚えることになるのです。
3.服を着せたら散歩に出かける
散歩に出かけることも犬にとってストレスを発散する機会です。散歩に夢中になると服の存在を忘れてしまうので、散歩に行った際に着せて、散歩から帰ってきたら脱がせるということをしてみましょう。服を着たら散歩につれていってもらえるという刷り込みをすることもできます。
愛犬にとって服を着るといいことがあるという記憶を残してあげることによって、服に慣れてもらい違和感を忘れてしまえるように工夫してみることができるでしょう。夏の暑さや冬の寒さで体がこたえるようなときに、辛さを緩和してしてくれるような素材の服を着せて散歩させるようにすれば、服に好感を持つことができるかもしれません。
また、服も最初は厚手で袖があるものは苦手とする子も多いので、薄手でタンクトップ型の袖なしを選ぶと良いでしょう。少しでも違和感を少なくまず慣れてもらうことから始めれば服を好きになってくれる可能性を高めることができるでしょう。
犬に服を着せる際に注意すべきこと
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服を嫌がるといっても個体差が大きいですし、初めは嫌がっていても慣れればほとんど気にしなくなる子もいます。
また、室内犬として強い選抜を受けてきた品種などを含めると、「一概には犬は服が嫌い」とは言えないようです。そんな状況を踏まえながら、犬に服を着せたいと考える際に注意するべきことを挙げてみましょう。
子犬の頃から慣れさせる
幼い子犬は成長しながら自分のことや周囲のことを学んでいきます。遊び盛りの子犬時代に服を着せるとほとんど気にすることなく、それが自然のことのように思って成長してくれる可能性が高いと言えます。
子犬は成犬よりも皮膚が弱いため、シャンプーのし過ぎによって皮膚トラブルを引き起こしてしまう可能性が高いです。
それで、頻繁にシャンプーをしなくて済むように、汚れ防止のために散歩の際に服を着せてあげることができるでしょう。外から帰ってきたらウイルスや雑菌、害虫が付着している可能性がありますので、おうちに帰ってきてからも体温調節のために着せるのであれば、着替えをさせて清潔さを保てるようにしましょう。
時期を逸することがないように、早く始めることによって慣れてもらうとよいでしょう。
犬に合わない服を着せない
厚い服・重い服・硬い服・長袖の服・サイズの合わないきつい服・耳が隠れるのようなフード付きの服などは犬の行動を束縛してしまう可能性があります。精神的・肉体的ストレスの原因になってしまうこともあるかもしれません。愛犬にあった服を選んであげることも大切です。
特に小型犬や体力の落ちている老犬などを散歩するときには服を着せたほうが体への負担が少ないと考えられています。体の負担を軽減するつもりがサイズが合わなかったり、素材の感触が気にいらなかったりすると効果が感じられず、ストレスにつながってしまうことになります。
着せるのは短時間にする
犬に服を着せるのは一緒に外出するときや室内でも写真撮影やお披露目などの時に限るようにしましょう。もちろん、寒さや暑さ対策のための体温調節のために着せることが必要な場合もあるでしょう。愛犬の健康管理のために調整しながら着せてあげることができるでしょう。
だだし、犬はお人形さんではありませんので、飼い主さんの遊びの一環で行なうのはよくないと言えるでしょう。一日中服を着せることは避けるほうがよいでしょう。
どうしても嫌がる犬には着せない
残念ながら、何度試しても服を身に着けることを嫌がる犬もいます。それは犬の品種差かもしれませんし、犬の性格や個体差やそれまでの生活環境の差かもしれません。いずれにしても、いろいろ試してみて難しい場合は無理矢理着せて強いストレスを与えることを避けましょう。
犬が嫌がる原因について考えてみることも大切です。素材やタイプの違うものを試すだけでなく、もしかしたら触れられること自体が嫌いな子もいます。そのような場合は、まずは触れられることに慣れてもらうように訓練することができるでしょう。
術後や特別の場合を除いてはストレスを与えるため、無理矢理には服を着せることがないように気をつけていきましょう。