猫に利き手はある?ない?
British cat and Golden Retriever
結論からいうと、猫にも利き手はあります。
利き手というのは、先天的に、反射・動作される手のことを辞書にはありますが、わかりやすくいうと左右の手で優先的に使われる手のことです。
人の場合だと、お箸を持つ時、ボールを投げる時に使う手を利き手と言います。
先ほど書いたように日本人の9割は右手で、左利きは男性の方が多いそうです。
そんな利き手ですが、動物にも利き手はあるのかという疑問は、昔からあるようで1955年には猫の利き手について研究がされていたようです。
ただこの当時の研究は、研究実験のやり方、調べ方などでばらつきがあり、研究結果にブレが生じ、左利きが多い!やそもそも利き手というのは猫にはない!という結果がでました。
その後、2009年イギリスで行われ、クイーンズ大学ベルファスト校の心理学者デボラ・ウェルズ博士とその助手のサラ・ミルソップによって研究され、雑誌「Animal Behaviour」で掲載されました。
猫の利き手の研究をちょっと覗いてみましょう。
実験は、おす猫が21匹、めす猫が21匹の猫42匹で行わました。
この猫たちは、去勢された猫で、1~7歳と7~17歳までの2つのグループに分けられました。
それぞれに三つのテストを1日10回までとし、日にちを変えて実験されました。
一匹の猫でトータル100回繰り返されます。
利き手のテスト1
Andrey Khusnutdinov/shutterstock.com
ねずみのおもちゃを猫の頭上10cmのところに垂らした時に、ねずみのおもちゃをパンチする時に使う手を調べる
利き手のテスト2
ねずみのおもちゃを猫の前に置いて、猫から遠ざけるようにゆっくりと糸で 引いていきます。
その時に猫が最初に手を出す方を調べる
利き手のテスト3
5gのマグロを透明の瓶の中に入れて、猫の前に置きます。マグロを取ろうと最初に瓶の中に入れた手を調べます。
結果は、テスト1.2では利き手がないという結果で、左右両方の手でパンチを均等に出していたのです。
テスト3では、オス猫は21匹中20匹が左手を最初に瓶の中に入れ、メスは21匹中20匹が右手を使ったのです。
テスト3から、確かに猫には利き手があり、利き手は性別によって異なるという結果がでました。
またこの実験に加えて、トイレに入る時にどちらの足から入るかや階段を登る時にはどちらの足から入るのか、そして寝転がる時にはどちら側を下にするのかを、自発的に行い調査されました。
この調査では、70%の猫が階段を降りる時に踏み出す利き足があり、68%がトイレに入る時に先に踏み入れる足があり、寝転ぶには特定の向きが見られないということでした。
これらの結果から、どちらかの足を優先的に使うという利き手があることがわかりました。
そしてオスの利き手は左、メスの利き手は右が優位ということがわかりました。
ではどうしてオスとメスの違いがでるのでしょうか?
そこで、なぜ右利き、左利きという違いがおこるのか調べてみました。
利き手がオスとメスで違うのはどうして?
Gray and red cat isolated on a white background.
利き手は、人間だけではなく犬も猫、そして馬も、オスは左利きが多いとされています。
ではどうしてオスに左利きが多いかというと、ホルモンの影響だと考えられています。
この理由は、先ほどの利き手があることを突き止めたデボラ・ウェルズ博士が、2012年に猫の利き手についての論文をさらに発表し裏付けられました。
その論文では、12匹の猫を生後3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月の時に、2009年に行われたテスト3を行いました。
(テスト3:5gのマグロを透明の瓶の中に入れて、猫の前に置きます。マグロを取ろうと最初に瓶の中に入れた手を調べます。)
すると、生後3ヶ月、6ヶ月の時には利き手はきまらない猫が多く、生後12ヶ月の猫になると、オスは左手で、メスは右手を使ってマグロを取ろうと瓶の中に手を入れたのです。
この結果から、ホルモンが影響して、オスは左手で、メスは右手を使うことになるのではないかと推測されます。
またオスとメスだと、ハンティングの仕方が異なることや、行動パターンの違いなどで利き手が違うのだと考えられています。
人間も男性と女性だと、脳の構造が少し違うことがわかっていて、例えば男性は論理的思考を持ち、女性は直感的に物事を判断するひとが多いと言われています。
これは、脳の仕組みが男性と女性とで、異なることで違いがでるのだとされています。
猫も人間と同様に、オスとメスで脳の構造に違いがあり、その違いが利き手に影響を与えているのではないかともされています。
ただまだまだ猫の利き手については研究段階なので、将来的には性別によっての利き手の役割がわかってくる日が来るのかもしれませんね。
自宅の愛猫の利き手を調べてみよう!
研究ではオス猫は左利き、メス猫は右利きであることがわかったのですが、実際に愛猫の利き手がどっちなのか、気になりませんか?
そこで、実際に利き手を調べると、なるほど!ちょっと雑学が一つ増えた!と思えるかもしれません。
先ほどの利き手のテスト3(5gのマグロを透明の瓶の中に入れて、猫の前に置きます。
マグロを取ろうと最初に瓶の中に入れた手を調べます。)を家で行ってみてはどうでしょう?
家でテストをする時に用意するのは、いつも食べているおやつと、透明で口が広く猫の手が入るものを用意します。
調べ方は簡単です。
1.猫におやつの匂いを嗅がせてからおやつを見せます。
2.猫がみている前で、瓶におやつを入れます。
3.瓶を猫の前に置いて、猫がおやつを取り出そうとした手を記録します。注意点はおやつをとった手ではなく、瓶の中に最初に入れた手を記録します。
4.これを10回ほど行います。
この博士の調べ方以外にも、おもちゃをどちらの手で取ろうとするかを観察できます。
こちらも調べ方は簡単です。
1.いつも遊んでいるおもちゃを用意します。
2.猫の目の前でおもちゃを左右に振ります。
3.おもちゃを振りながら、猫の手をよく観察し、猫が最初に手を出す方を確認します。
4.これを10回ほど行います。
遊びながらできるので、猫ちゃんも喜びますしおすすめです。
そして、小さな 幼猫の時には、まだ利き手が決まっていないのが、少しずつ利き手がでてくるようになり、1歳になる頃には、自然にオスは左利き、メスは右利きになる猫がほどんどなんだそうです。
猫もしっかりと経験を積んで賢くなっているのですね。
さて、愛猫の利き手がわかることで、どんなことがわかるの?