猫が宙を見ている?
世の中には、摩訶不思議な現象や、理屈では説明できない言い伝えなどが多く存在していますよね?
最もらしいものから、眉唾ものの話までたくさんありますが、ネコに関する話もいくつかあります。
その中でも、「フェレンゲルシュターデン現象」について聞かれたことがある方は、どれくらいいらっしゃるでしょうか?
ネコ好きの方にとってはポピュラーな話かもしれませんね。
今日は、嘘なのそれとも本当なの?と世間を騒がせている、このフェレンゲルシュターデン現象の真実についてお話したいと思います。
フェレンゲルシュターデン現象とは
![猫](https://cdn.mofmo.jp/v3/640/imeditor_storage/1/article/159972527.jpg)
Michael Pettigrew/shutterstock.com
私たち人間の目では何も見えないのに、突然ネコが宙を見つめて、しばらく空中を凝視しているのを目撃されたこがみなさんあると思います。
「ネコには何が見ているのかな?」と不思議に思ったり、夜などにされると少し気味が悪く感じることもあるでしょう。
「フェレンゲルシュターデン現象」とはまさに、このネコが何もないところを見つめる行動に関して言い伝えられている話です。
では早速、そのストーリーをご紹介しますね。
1957年、第二次世界大戦真っ最中のドイツで、物理学者のリーゲン・シュターデン博士は、ナチの超常現象に関する極秘研修施設で、霊の探知や捕獲をする研究に携わっていました。
博士は、自分の飼っているフェレンゲルという名前のネコが、時折、何もない空間を凝視していることに気がつき、どうしてそんな行動をとるのか不思議に感じて、もしかしたら霊が関係しているかもと考えるようになりました。
そして、この行動の理由を突き詰めようと、極秘裏に研究を始めました。
飼いネコのフェレンゲルを温度計を敷き詰めた部屋に住まわせ、数週間に渡って観測を続けました。そうしたところ、ネコが見つめるある特定の地点は、周囲よりも2度低いことが判明しました。
シュターデン博士も関わっていたナチの超常現象の研究では、「霊の存在する地点は、周囲よりも低温になる」ということがすでに判明していたので、博士は「ネコには霊が見えており、ネコが宙を凝視するときには霊がそこにいる」という結論にたどり着いたのです。
そしてこの現象のことを、飼いネコの名前のフェレンゲルと、自分の名前をシュターデンをくっつけて「フェレンゲルシュターデン現象」と名付けて、「ネコは霊感があって、霊を識別できる」という研究結果として世の中に出しました。
真っ赤な嘘
もっともらしい話に聞こえますが、この話は完全なる作り話、つまり真っ赤な嘘です。
「ナチの霊を研究する極秘施設」「リーゲン・シュターゲン博士」など、いかにもありそうな名前だったり、「霊がいるところは温度が低い」という一般的に信じられていることが絶妙に混ぜられているので、事実のように聞こえますが、騙されてはいけません。
実際は、2チャンネルなどの掲示板のスレッドに書き込まれたデマなのです。嘘をつくのが得意で、人を騙すことを楽しむ人が作り上げたフィクションです。
しかし、この作り話を不用意に信じた純粋な人や、面白半分に広めようとした人たちが、質問サイトやつぶやきサイトなどに投稿して、あっという間に世間に広まり、本当にあったストーリーのように大衆に支持されるようになってしまいました。
巧妙に作られている、いかにもありそうな話なので、多くの人が信じてしまうのも無理がないかもしれませんが、デマがまことしやかに真実として広まることに恐怖を感じますね。
一般家庭でペットとしてよく飼育されているネコは、私たちにとってとても身近な動物で、仕草や表情、行動パターンを目にする機会も多いですし、ネコに対する愛情ゆえに仕草の意味を理解しようと意識したり、どんな気持ちなのか気にする飼い主さんも多いですよね。
きっとネコ好きの多くの方が、宙を見つめる行動を目撃し、不思議に思って、なんでそんなことをしているのか知りたいと思っていたことも、この作り話がすごい勢いで広まったことの原因の一つでしょう。
みなさんこれではっきりしましたね。「フェレンゲルシュターデン現象」とは、誰かが面白半分にネットに投稿したただの作り話で、ネコが霊を見れるという科学的証拠は一つもありません。
ネコはどうして宙を見つめるの?
ここまでで、フェレンゲルシュターデン現象は真っ赤な嘘であることはわかりました。
ではネコが宙を見つめたり、空中を凝視するのは何故なの?という疑問が湧きますね。
ネコを飼育されている方ならお気づきでしょうが、ネコはかなり頻繁に宙を見つめたり、ぼーっと部屋の角を見つめていることがあります。
また、扉の前で一点を見つめてジーとしていたり、何かがしっかり見えているかのように感じることもあります。
霊を観ているのでないとしたら、一体何を観ているのでしょうか?
これからネコが宙を見つめ理由として考えられている5つのことをご紹介していきます。
何かが聞こえた
![猫耳](https://cdn.mofmo.jp/v3/640/imeditor_storage/1/article/537567445.jpg)
Astrid Gast/shutterstock.com
ネコの聴力は非常に高く、人間には全く聞こえない音でもしっかりと聞き取ることができます。
具体的な数値をあげると、人間は通常29ヘルツ~19ヘルツの音が聞こえるのに対し、ネコは65ヘルツ~30ヘルツの音を聞き分けることができるそうです。
特に高音の聞き取り能力は動物界の中でも優れており、人間の上限は20,000ヘルツで、聴覚が優れていると言われているイヌでも38,000ヘルツまでしか聞こえないのに、ネコの場合は、60,0000ヘルツの高音まで聞き取ることができると言われています。
これは驚異的な数値で、他の生き物には聞こえない音に、ネコだけが反応するということは現実的に起こりうることなのです。
しかも、ネコは20メートル先の物音までも聞こえるそうで、隣の部屋や家の周りの物音など、視界が完全にシャットアウトされている状況でも、誰がいるか、何が起きているのかを音によって判断することができるのです。
なんと、水道管の水が流れる音や、天井裏にいるネズミの鳴き声、隣の部屋にいる人が肌を掻いた音までも聞こえるそうです。
そんな日常に溢れている、些細で小さな音までを全部拾ってしまうなんて、ネコの聴覚は素晴らしいですが、その分、気になることや、びっくりすることが増えてしまうことは容易に想像できますね。
ドンと壁に何かが当たる音がしたらみなさんどうしますか?
壁の方を観ますよね。無意識のうちに何か物音がしたら、その物音がした方を見ているのではないでしょうか?
しかも物音の原因が見えないと、しばらく見つめ続けることも多いですよね。
ネコも同じはずです。驚異の聴力で、他の誰にも聞こえない音が耳に入ってきたら、確認のためにその方角を見ていると考えられます。
しかも、広い範囲の音を拾っているので、すぐには音の原因がわからずに、ジーと様子を見ていると考えることができます。
宙を見ているのは、家の屋根に鳥が止まったのかもしれませんし、蚊などの小さな虫が部屋に入り込んでいるのかもしれませんし、水道管の水が流れていたり、飼い主の家族が家に近づいているのかもしれません。
このように、ネコだけに聞こえる音がたくさんあるので、聞こえてきた音に反応して、その方角を見つめているというのが、ネコが空中を凝視している一つ目の理由と考えられています。
ちなみに、ネコの視力は決してよくありません。人間の十分の一の、0や0.2程度しかないそうです。
ネコといえば、ギョロッと光る大きな目が特徴的なのでこれは意外かもしれませんね。
しかもネコは暗がりでも動き回ったり、ネズミなどの素早く動く生き物の動きに反応できるなど、一見、視力が良さそうに思える能力を持っていますよね。
しかし、暗闇を自由自在に動けるのは、網膜を通過させた光を鏡のように反射したり、瞳孔を最大限広げて多くの光を取り入れたりできる独特の目の作りをしているからで、視力が良いからではありません。
動体視力が良いのも事実で、1秒間に4mmというわずかな動きでも感知することができます。しかし、きちんと識別できるのは10m先ぐらいまですし、解像力も低いので、静止しているものはぼやけて見えています。
もちろん霊が見えるという特殊能力もありませんので、実際に何かが見えてそれを見つめているのではなく、音に反応していると考える方が妥当なのです。
何か匂った
ネコは聴覚だけでなく、嗅覚も優れています。なんと人間の数万倍?数十万倍だそうです。
餌があるかどうかも、視覚ではなく嗅覚で判断しているそうで、体調が悪く鼻が乾いているなどの理由で嗅覚が正常に働かないと、目の前に餌を置いてもわからないそうです。
餌の好き嫌いも、舌で味わう味覚ではなく、どんな香りがするかという嗅覚で決まると言われています。
生命維持の食物を取り入れることが全て匂いに依存していることからも、ネコの嗅覚がどれほど優れているかがわかりますね。
匂いをかぎ分けるのは食べ物だけでなく、飼い主や、ネコの仲間同士も匂いで把握していて、信頼を表したり、飼い主が他のネコの匂いをつけて帰ると、警戒して挙動がおかしくなる時があります。
また、自分の縄張りも匂いで認識しており、テリトリー内では安心して過ごしたり、飼い主の足にすり寄ってきて、自分の匂いをつけようとします。
そんな匂いに敏感なネコなので、私たち人間には香りに反応して、宙を仰いでいるかもしれないとも言われています。