子犬を家に迎えることは、飼い主家族にとって大きな喜びとなると同時に、どうやって育てていこうかと飼い主としての責任を重く感じることもあるでしょう。
特に、愛犬の人生をより良いものにしてくれる丈夫な体を作り上げるために、「何を食べさせたほうがいいのか」「何は避けたほうが良いか」「いつからどれくらいあげるのがベストなのか」など、食事やおやつについて正確な情報を知りたいと思われることでしょう。
そこで今回は、おやつはいつから与えるべきか、また最初は何を食べさせるべきかについてご紹介していきたいと思います。しかし、まずは基本となる、子犬の食生活について考えたいと思います。
子犬と食事
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人間も生まれたての時は母乳やミルクを飲んでいましたが、徐々に離乳食と言われる、おかゆやすりつぶしたフルーツ、柔らかく茹でた野菜などを食べるようになっていきます。
味付けも、調味料をほとんど使うことはせず、大人の味覚では何も味がないと思うほど薄味だったり、食感も柔らかいものばかりです。
歯が生えてきたと言っても、大人が食べているようなお刺身などの生物や、硬い肝などをいきなり子供に食べさせる人はいないと思います。
なぜなら、子供の内臓機能などは大人とは違い、まだ未完成で大人が食べて良いものすべてが決して子供の体が受け入れられるわけでも、成長に寄与するわけでもないからです。
ですから、その後も成長に合わせて、栄養素的にも消化機能的にも、子供の年齢や体調に相応しいものを食べさせていきますよね?日本では、20歳で成人と呼ばれるようになりますが、それほどの長い年月をかけて心身とともに成長していくということです。
犬の場合は、大型犬は18ヶ月~2年くらいで大人になり、小型犬や中型犬はほぼ1年で成犬になると言われていますので、成長のペースは人間と比べるとびっくりするほど早いですが、徐々に成長していくという点では同じです。
数ヶ月かけて、骨格や内臓機能、さらに免疫機能など、将来の健康を支える体の機能が整っていくので、適した食べ物も段階的に変わっていき、飼い主は、子犬の成長ペースに合わせて、健全な成長を促すために必要な栄養素を与えてあげる必要があります。
ここで犬の成長ペースと、適した食事内容をざっと説明しておきたいと思います。
生後2週間 新生児期
生後2週間までの「新生児期」には、高エネルギーで栄養価と消化率が高く、免疫も引き継げられる完全食の母乳か、代用乳が望ましいとされています。
生後5週目頃~生後2ヶ月頃 離乳期
生後5週目頃~生後2ヶ月頃は「離乳期」に入り、乳歯も生えてきますので、母親が食べている食べ物に興味を示すようになります。
そんな離乳期には、成犬用のドッグフードに白湯をかけてふやかしたものや、子犬用の総合栄養食をミキサーで砕いたり、おかゆ状にしたものを食べさせるのが適しています。
生後3ヶ月~1年 変革期
生後3ヶ月~1年は離乳期から成犬期への「変革期」で、個体によって成長の幅にも差がでます。ですから、愛犬の様子を見ながら、ふやかしていたドッグフードをそのままあげてみたり、量を増やしていくことが勧められています。
生後6ヶ月頃までは、摂取した栄養の半分は成長のため、残りの半分を健康維持のために使っていますので、栄養不足にならないように、栄養価の高いフードを十分な量をあげて、健全な成長を促してあげるように特に注意しましょう。
この頃はまだ胃袋が小さいので、きちんと栄養を摂取し、かつ消化できるように、離乳期直後は、1日の食事量を5回~6回に分けてあげ、生後5ヶ月以降には3回ほどにするなど、細やかな配慮がまだまだ必要です。
生後6ヶ月を過ぎると、成長のスピードが一気に緩やかになり、取り入れるカロリーのしよう比率も変化が見られ、成長よりは、健康維持のために使われるようになります。
そろそろ1歳という頃には、体がほぼ出来上がってきていますので、幼犬用のドッグフードから成犬用のドッグフードに変えたり、食事の回数も大人と同じように2回でも大丈夫か確認ができます。
人間の子供でも、アレルギーはないか、体がちゃんと消化できるか、様子を見ながら少しずつ食べさせるように、子犬の場合も、便や目の輝き、体の動きなどを見ながら、少しずつ食事内容を変更させていくことが大切なポイントになります。
1歳までは特に食事に気を付けよう
このように、最初の1年間は、最高に可愛い時ではありますが、劇的に変化する時でもありますので、こまめに変化を観察しながら、食事に気を使ってあげなければなりません。
大抵の方は、ペットショップやブリーダーから購入して、家族として愛犬を迎えることになると思いますので、ちょうど離乳食が始まる、生後3ヶ月くらいで一緒に暮らし始めることでしょう。
ですから、主に離乳食や、幼犬用として作られているドッグフードから始めることが多いと思います。
食事は体づくりの基本になりますので、食事内容や量については、ドッグフードのパッケージに表示されている目安量なども参考にすることもできますが、獣医さんと相談して決めるのが一番安心でしょう。
神経質になり過ぎるのはよくありませんが、真剣に取り組まれると、愛犬と元気に楽しめる時間が長くなり、病気知らずの愛犬を見て、本当に頑張ってよかったと報われた気持ちになれると思いますよ。
ここまで、子犬の時の食事について見てきましたが、今回の本題はおやつです。ではこれから、「おやつはいつから与えるのが良いか?」について見ていきましょう。
いつからあげるべき?
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いつからおやつを与えるかについては、考え方が色々あり、専門家の間でも意見が分かれます。ですから、聞く人によって答えが分かれるので、困惑する飼い主さんも多いですね。
例えば、ペットショップの人に聞くと、子犬用のお菓子を扱っていれば「これなら大丈夫です」と進められるでしょうし、ストイックなドクターだと「おやつは一生食べさせる必要はない」と真逆の意見がかえってきます。
本当は何が真実なのでしょうか?これを知るために、まずは犬にとっておやつとは何か、どんな時におやつをあげるかを把握することが役立ちます。
犬にとってのおやつとは
人間にとって、メインの食事とおやつは全く違うものであり、甘いものや、可愛らしい見た目のスイーツは、休息や気分転換、自分のモチベーションを上げるなど、”おやつ”といジャンルとしてその役割を認識し、楽しんでいますよね。
しかし犬には、主食とおやつの境目はありません。私たちがスペシャルなおやつだよ?”とあげても、それは人間側の自己満足でしかなく、犬にしたら”食べ物がもらえた”という認識に過ぎないのです。
ですから、全くあげなくても良いという意見も一理あるのですが、おやつも食事の一部と捉える犬ならではの食性や、もともと群れで生活する動物という習性を考えると、犬との信頼関係をスムーズに築くために、おやつを上手に使いましょう。
野生の動物が群れで生活する時には、統率をはかるために上下関係が徹底されます。自分よりも力が強く敵から守ってくれる存在や、生き延びるために必要な食料を確保し、群れや自分に与えてくれる存在をリーダーとして認め、信頼し、従います。
この犬のもともと備わっている習性を利用し、おやつを有効に使うなら、自分をリーダーとして認めさせ、愛犬との信頼関係を確かなものにするために役立ちます。
先ほど触れたように、犬はおやつの内容で感情が変わるということはなく、食べ物をくれる回数分だけ喜び、食べ物をよくくれる人のことを自分のリーダーと認識するようになります。
そしてリーダー決めたルールを守り食べ物をもらえることがわかれば、飼い主の指示に忠実に従ったり、共に快適に生活していくために必要な、トイレトレーニングや無駄吠えをしないことなどを学習していきます。
つまり、犬にとっておやつとは、食べ物に過ぎないが、もらえることは非常に嬉しく、くれる人のことを信頼するようになるものであることがわかります。
このことを理解するなら、躾やトレーニングのを始める頃に、犬におやつをあげることには確かにメリットがあると感じるのではないでしょうか。
もちろん、おやつ抜きで躾をすること可能ですが、「飼い主の指示を聞くと良いことがある」と覚えこませるのに、食べ物は一番わかりやすく、手っ取り早い方法ですので、活用しない手はないと思います。
おやつが食べられない時期
ここまでで、愛犬との良い信頼関係を築き、必要なことを教える時に、おやつは助けになることがわかりましたね。
そうすると次に、「いつから躾を始めるのか」「トレーニングを始めたらすぐにおやつを与えても良いのか」という疑問が出てきます。
結論から言いますと、絶対におやつをあげてはいけない時期があります。
離乳食を卒業する時までは、胃腸が未熟な状態ですので、おやつを消化できずに小さな体に負担になってしまいます。ですから、ミルクを飲んでいたり、ふやかしたドッグフードなどの離乳食を食べている赤ちゃんには、おやつをあげてはいけません。
事情によっては、月齢が低い子を家に迎えることになったり、今まで食べていた離乳食を食べさせるように、獣医やペットショップの人に言われている小さなワンちゃんを飼うことになる場合もあるでしょう。
そんな赤ちゃん犬でも、家に来たならトイレトレーニングや、最低限のことを教えようと躾を始めるかもしれません。しかし、そのような小さなワンちゃんを教えたり、コミュニケーションをとるために、おやつを使用することは絶対にやめてください。
犬は自分で食べない方が良いと判断したり、断ったりすることはありません。飼い主さんが与えたものを疑うことなく食べてしまいます。しかし、受け入れる準備ができていない未発達な体に、大人の食べ物をあげることは子犬の健康に深刻な影響を及ぼします。
子供の時に、消化できないものを食べたことが原因で、アレルギーになってしまい、一生苦しむこともあるそうですから、「ちょっとくらい大丈夫」「可愛いから食べさせたい」などと、無責任な考えはやめましょう。
飼い主の責任として、愛犬の健康を最優先した食事内容を実行し、自分のエゴは捨て去るようにしてください。
あくまで目安ですが、だいたい生後4ヶ月くらいまでは離乳食のことが多いので、おやつを控えることをお勧めします。
おやつをあげ始める時期
離乳食を卒業して、日増しにたくましく成長していく様子を見るのは、飼い主にとって嬉しいことですよね。
今までは、ふやかして食べさせていたパピーフードも、固いままでもガツガツ食べるようになり、体格も良くなり、力もついてきて、やんちゃも盛んになって、可愛いながらも困らせることも増えてきます。
生後6ヶ月になると、反抗期を迎えると言われていますので、躾もいよいよ本格的に、厳しく行わなければと、覚悟を決めておられるでしょう。
確かに、子供の時の躾は非常に大切で、この時期に甘やかしてしまうと、自分が飼い主より偉いと勘違いしてしまい、飼い主に要求吠えをして、自分のわがままを通したり、人間に対して偉そうな態度を取る困った犬になってしまいます。
ですから、おやつを有効活用して、正しい主従関係を教え込み、飼い主に忠実で従順で、みんなからも愛されるお行儀の良い子に育てるために、きちんとした訓練を行うことは大切です。
生後10ヶ月になれば、大抵の犬は、乳歯から永久歯に生え変わるので、成犬が食べるドッグフードは問題なく食べられます。ですから、生後6ヶ月~10ヶ月になれば、様子を見ながら、少しずつ、おやつを与えてもいいでしょう。
もちろん、犬の個体差があるので、おやつをあげても絶対大丈夫ということではありません。ですから、おやつを食べさせた後の便の状態、食欲の変化、嘔吐はないかなど、愛犬の様子をよく観察しながら、臨機応変に対応するようにしてください。