「自分の限界を決めないでほしい。人と出会うなかで、自分の力を引き出してもらったり、努力の仕方を覚えました。
さまざまなことに挑戦しながら、自分のやりたいことを見つけていってほしいです。
わたしも、自分にできること、自分にしかできないことも見つけながら、挑戦を続けていきたい」
―――これからを担う子どもたちにそう伝えるのは、イトマン東進所属 東京五輪 200m・400m 個人メドレー 金メダリスト(2冠)大橋悠依。
大橋悠依は10月18日、東京・帝国ホテルで現役引退を公表。これまでの活躍を振り返り、イトマン特別コーチ、東洋大学大学院進学、メディア出演と、多彩な今後の道について、いつもの大橋らしさを崩さず笑顔で語った。
もはやスポーツキャスターのオーラ
「もう29か、わたし」
黒のスーツ&パンツで登場した大橋悠依は、想像以上に前を向いてる。もはや、新進気鋭のスポーツキャスターのオーラを放つぐらい……。
苛酷な練習や貧血に悩まされた“空白の時期”を振り返りながらも、引退会見に駆けつけた入江陵介がステージに登壇すると、「ジュニア時代から憧れの人だった」という入江が横につき、この日が29歳の誕生日の大橋にバースデーケーキが届くと、さらに自分らしい表情に。
すべてを無視して更衣室へ逃げ込んだことも
大橋悠依の才能を開花させ、師でもある東洋大学 水泳部 平井伯昌 監督(法学部 教授)もステージに登壇し、花束を受け取ると、辛いトレーニング時代をいっしょに振り返り、笑った。
「わたしがいちばん苦しかったのは東京オリンピックの翌年。2022年は感情がどうなっているのかも自分で把握できないぐらい頭も混乱し、感情が混乱していました。
8月9月の練習は途中でプールからあがって石松コーチが話しかけてくるのもすべて無視して、更衣室に逃げて部屋に帰った日もありました」
2023年秋に引退を決意
東京オリンピック後の不安定な自分を乗り越え、年再び挑んだ2024パリオリンピックに向けて、2023〜2024年の冬季練習に入ったとき、
「パリ五輪をめざすにあたって、冬のきつい練習を乗り越えるのは、“あと1回”だと思わないとがんばりきれない、心が持ちそうにないと思って練習に挑みました」
そしてことし挑戦した有観客開催のパリ五輪には、家族も駆けつけたなか、200m準決勝で敗退。引退を決意して1年目の秋で、この引退会見を開いたかたちだ。
後進育成、大学院でスポーツ栄養学を
大橋悠依は今後、所属企業ナガセが運営するイトマンスイミングスクールの特別コーチにつき、スクール総監督に就任した平井伯昌 東洋大 監督や、入江陵介らと後進を指導・育成していく。
「いま日本水泳界が少し苦しいなかにいますので、オリンピックで金メダルに届くような選手をここから育てていきたいです。
自分の経験を通して話をしていくことはできると思うので、オリンピックに出場する、メダルをとる、金メダルに届くような選手を出していきたいです」
そして引退後の人生で、もうひとつ挑むことがある。東洋大学 大学院でスポーツ栄養学を学び、“プールの外”から貢献していく仕事だ。
大満足の水泳人生、ほんとうは120点
まさにニッポンの競泳界を“曳航”してきた、大橋悠依。引退会見では「晴れやかな気持ち」と伝え、こう続けた。
「大満足の水泳人生でした。点数でいうとほんとうは120点にしたいけど、やり残したというか、届かなかったことを挙げるなら、世界新記録の樹立。だから95点としたいです」
メディア出演も期待大
「メディアに出演する仕事の方も前向きに考えているので、ぜひよろしくお願いいたします」
引退会見終了後、ステージをはけた大橋悠依は、すぐに会場出入り口にたち、「仲良しの友人がつくってくれた“どら焼き”をお土産に」と、記者ひとりひとりに手渡していった。
どら焼き の面には大橋悠依の笑顔が焼入れてあった。
ここにも、“次への気持ち”が込められているようで、その笑顔に、自信も感じるほど―――。
世界各地からレポート、痛快な競技解説、健康系バラエティでトーク…そんな大橋悠依の姿を WEB やテレビでみかける姿も、そう遠くはないはず。
大橋悠依のこれまでの道のり
イトマン東進所属。2018年4月1日 ナガセ入社。
幼稚園時代に姉の影響を受けて、彦根イトマンスイミングスクールで水泳を始める。
小学校3年生で50m背泳ぎで初めてジュニアオリンピックに出場。2014年に東洋大学に入学。
2017年 日本選手権で 400m個人メドレーで日本新記録を樹立。
世界水泳(ブダペスト)では 200m個人メドレーで日本新記録、銀メダルを獲得。2021年東京オリンピックでは 400m個人メドレー・200m個人メドレーで日本女子史上初の2冠を達成。
2024年パリオリンピック 200m個人メドレーに出場。
2024年10月、競泳人生から引退。
大橋悠依所属先の株式会社ナガセ
大橋悠依が所属する株式会社ナガセは、1976年創立。
日本最大の民間教育ネットワークを展開し、「独立自尊の社会・世界に貢献する人財」の育成に取り組む企業。
有名講師陣と最先端の志望校対策で東大現役合格実績日本一の「東進ハイスクール」「東進衛星予備校」、中学受験界をリードする「四谷大塚」、私大総合・学校推薦型選抜(AO・推薦入試)合格実績日本一の「早稲田塾」、メガバンク、大手メーカー等の多くの企業研修を担う「東進ビジネススクール」、優れた AI人財の育成を目指す「東進デジタルユニバーシティ」、いつでもどこでもすべての小学生・中学生が最新にして最高の教育を受けられる「東進オンライン学校」など、幼・小・中・高・大・社会人一貫教育体系を構築。
また、東京五輪で競泳個人メドレー2冠の大橋悠依選手をはじめ、のべ 53名のオリンピアンを輩出する「イトマンスイミングスクール」は、これからも金メダル獲得と日本競泳界のさらなるレベルアップをめざしていく。