突然ですが、あなたはオオカミにどんな印象をお持ちでしょうか?童話などではよく悪役として描かれることが多いので、ちょっと悪そうなイメージがあるかもしれませんね。
しかし、その一般的なイメージを払拭するある奇跡のエピソードが存在します。
31匹のオオカミが大自然を復活させたお話
1990年代前半、アメリカのイエローストーン国立公園は悲惨な状況でした。シカが大量繁殖したことで大半の植物が姿を消していたのです。
しかし、これはシカが悪いわけではありません。人間に殺されてしまうことが多かったオオカミの個体数が限りなく減少したことで、生態系の調整役がいなくなってしまったためです。
人間はなんとか自分たちの手で自然を戻そうとしましたが、後の祭りでどうすることもできませんでした。
そこで、1995年に14匹、1996年に17匹という少ない数ですが、イエローストーン国立公園の希望としてオオカミが放たれました。
この31匹のオオカミたちはここから奇跡を起こします。
もちろんオオカミが直接シカを捕食することで、シカの数は減りました。しかし、オオカミがもたらした変化はそれだけに留まりませんでした。天敵が現れたことにより、シカは谷間などの捕まりやすい場所を避けるように行動するようになりました。そして、そういった場所に緑が戻り始めたのです。
エリアによっては、木々の高さが6年で5倍に伸びるという驚きの成長も見られました。こうして園内に緑が蘇ったのです。すると次は、鳥の生息が始まったのです。
植物の再生に合わせて、木の葉や皮などを食物とするビーバーもその個体数を増やし始めました。またビーバーは、木々を使ったダムを作る達人。彼らが作るダムは、カワウソ、マスクラット(ネズミ科の動物)、アヒル、魚類、は虫類、両生類の居住地にもなるのです。
陸の再生も進みました。
シカだけでなくコヨーテの捕食者ともなったオオカミ。コヨーテの個体数が減少するとともに、その被食者だったウサギやネズミなどの個体数が増えてきました。
そして、これらの動物を捕食していたタカやイタチ、キツネ、アナグマなども姿を現し始めたのです。
また、カラスやハゲワシはオオカミの残した死肉を食べ、クマはそれに加えて再生してきた木々のベリーも食べることで個体数を増やしていきました。
そして何より驚きなのは、たった31匹のオオカミの出現により地形にも劇的な変化が訪れたということ。復活した森の存在により川辺が安定したことで、川の侵食がなくなりました。また山の谷間では土壌侵食が減り、土地が安定し始めたのです。
童話などでは悪役として描かれるオオカミは、それとは正反対の、生態系を循環させる「森の守護者」だったのです。
https://www.youtube.com/watch?v=ysa5OBhXz-Q
多くのオオカミが、家畜などへの被害を抑えるために人間に殺されてきました。イエローストーンに関しても、実はオオカミを導入する際、反対の声も少なからずあったのだとか。
自然との共存。昨今よく耳にする言葉ですが、今一度それを改めて考えさせられるエピソードですね。