立体物にしか見えない絵を平面に描く。それが「ハイパーリアルアート」だ。いま世界で多くのアーティストがネット上で作品やその制作風景などを公開している。そして日本にも、わずか17歳で「本物としか思えないほど精緻な絵を描く」天才少年・kouki氏が登場した。その作品とインタビューの模様をお伝えしたい。
これがハイパーリアルアートだ!
上の写真。もちろんハリボーのグミの実物を撮影したもの……ではない。
このグミが写真ではない証拠をお見せしよう。↓
ペプシの動画も結構見てもらえてるのでお菓子の絵も動画撮りました pic.twitter.com/08kVNjMBUm
— kouki (@hkkouk) February 17, 2019
「これってアレでしょ? CGを使ったり、特殊な画材を使ったりして描くんでしょ?」と思ったあなたは鋭い。日本でも80年代に「ハイパーリアルイラストレーション」という、エアブラシを駆使した超技巧的なイラストが流行ったことがあった。今はスマホも進化しているので、素人でもイラストを「写真ぽく」加工することは可能だろう。
しかしハイテク全盛の現代だからこそ、あえて逆に「人の手だけで、アナログな手法で」ハイパーリアルアートに挑むアーティストが世界的に増えている。
今回紹介するのもそのひとり。kouki氏という日本の若きアーティストだ。
ペプシのボトルが平面に? どうやって??
色鉛筆でペプシ描きました pic.twitter.com/UZvLMBfTUw
— kouki (@hkkouk) February 12, 2019
これを見て最初に思ったのが「えっ、紙の上にペプシを転がしてるだけやん? だって、ペットボトルのお尻のところが紙からはみ出してるし。ネタでしょネタ!」という疑問。ところがtwitterの反応をじっくり読んでいくうちに、とんでもないことがわかってきた。大半の人は筆者と同じように「実物を写真で撮った、ネタだろう」と思ったようだ。「ペットボトルのはみ出し」を指摘する人もいた。
そこで、もっと細部まで絵を観察できるよう写真を拡大したのがこれだ。↓
確かにペットボトルが紙からはみ出している。しかし……。
陰の部分をよく見ると、ようやく「これはイラストだ!」とわかる。(ボトルの光の反射などはここまで拡大しても本物にしか見えないのだが)
twitterのスレッドには、kouki氏本人が「はみ出している部分は、紙をハサミで切り抜いて表現した」と書いている。マジか!マニアック過ぎる!!
天才少年・kouki氏の素顔
しかし、いったいkouki氏とはどういう人物なのだろう? スレッドから得られたのは次のような情報だ。
・某高校の美術科に通う17歳の高校2年生
・このペプシは1日で12時間かけて描いた
・紙からはみ出しているように見える部分は、逆に紙をハサミで切り抜いた
・使っている画材は色鉛筆だけ。
高校生?17歳? しかも色鉛筆だけで描いた? いや、イラストもそうだが、この事実はさらに信じがたい!そこで、思い切ってkouki氏に直接インタビューを申し込んだところあっさり快諾していただけた。
ー 絵を描き始めたのは何歳からですか?
K 「本格的に始めたのは高校からです」
ー リアルアートに目覚めたきっかけは?
K 「友達がリアルな絵を描いていて、それに影響を受けました」
ー 「どんな練習をしたらたった1年でここまで上達できるんですか?」
K 「とりあえず数をこなして観察力を身につけました。もともと小さい頃から他の人よりは絵が得意だったので、特に習ったことはないです。色鉛筆は高校1年の冬に始めました」
まさに天才としか言いようがない。「将来はプロの画家かイラストレーターを目指しているのか?」と尋ねると「そうなれたらいいと思っている。ただし今のところ仕事の依頼は受けない」とのことだった。ひとつの作品を完成させるには少なくとも8時間はかかる。kouki氏は高校に通っているため、平日の創作時間は1日1時間ほどだというから、確かに仕事の依頼を受ける余裕はないのかもしれない。
高校を卒業したらいきなりイラストレーターデビューか。これだけの才能の持ち主だ。美大などに通いながら腕を磨き、ネット上で活動してファンを増やしていくという道もアリだろう。(twitterフォロワー数は2019年2月時点で約1万3000人)
もしあなたが彼のアートに興味を持ったら、ぜひ応援してあげてほしい。フォローはこちらだ。
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Tweets by hkkouk
どうやってリアルに描くのか?
ところで、「色鉛筆でこんな絵を描くって…具体的にはどうやってるんだ???」と思った読者もいらっしゃるのではないだろうか。同じくハイパーリアルアート作家のMarcello Barenghi氏が創作の過程を動画にまとめてくれているので、参考にしていただきたい(ただしこの人は色鉛筆+水彩絵の具を使っているが)。
ところで、アートの天才少年といえば、若干6歳の少年(というより子供)のトリックアートもすごい。ぜひこの記事とあわせてお読みいただきたい。
画像提供:kouki氏