はじめに


イギリス美術は、「旅」から多くのものを得て成熟してきました。新しい発想が生まれ、美しい作品を生み出したイギリス美術と旅との関係と、栃木にゆかりのある作家の作品を集めた企画展が「栃木県立美術館」で開催されています。

今回は、イギリスの外交官アーネスト・サトウが建てた奥日光中禅寺湖畔の別荘が一般公開を開始したことを記念して企画された企画展「旅するイギリス美術」についてご紹介します。

イギリス美術の歴史と旅とのかかわり


J.M.W.ターナー《風景・タンバリンをもつ女》 1840-50年頃 栃木県立美術館蔵


イギリス美術の黄金期は19世紀です。しかし、黄金期の到来前の18世紀にその準備段階の時代がありました。当時「グランド・ツアー」と呼ばれる、良家の子弟の教育の一環としてヨーロッパへの旅行が盛んに行われました。このグランド・ツアーによって、ヨーロッパの古典美術の影響を受けたことが分かっています。

さらに19世紀に入ると産業革命が起こり、人々の交通の便ははるかに向上しました。富裕層だけでなく、庶民でも旅に出かけられるようになったのです。

こうした流れの中で、イギリスの美術は旅から多くのものを得ていたといえるのです。

企画展「旅するイギリス美術展」とは?


トマス・タルボット・ベリー『リヴァプール・アンド・マンチェスター鉄道の彩色風景』より 1831年刊 栃木県立美術館蔵


19世紀の産業革命以後、旅行は庶民にも手が伸びる一般的なレジャーとして、イギリス国内で人気が出ます。その人気は衰えることなく、イギリスからの旅行者たちは極東にある開国間もない日本にまで訪れていました。

『旅するイギリス美術展』では、『トラファルガーの戦い』『雨、蒸気、スピード-グレート・ウェスタン鉄道』で知られるジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーや、『乾草の車』『主教の庭から見たソールズベリー大聖堂』といった代表作を遺したジョン・コンスタブルなどの作品を展示し、旅の途中で生まれたイギリス美術について紹介しています。

他にも栃木の自然の中で作品を作り上げたデイヴィッド・ナッシュとアンディ・ゴールズワージなどの作品も展示。旅とイギリス美術の展示だけでなく、栃木にゆかりのある作家の作品を展示するなど、見どころも多い展示となっています。


◆企画展[旅するイギリス美術]
開催期間:10月29日~12月25日
開館時間:9:30~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜日
観覧料:一般800円、大高生500円、中学生以下無料

栃木県立美術館へのアクセス方法


◆公共交通機関を利用する場合
JR宇都宮駅から西口バスターミナルの6・7番乗り場にて、関東バス「作新学院・駒行」に乗車し、「桜通十文字バス停」にて下車後すぐ。バスの乗車時間は約15分ほどです。

または、東武宇都宮駅前バス停より、関東バス「作新学院・駒行」に乗車し、同じく「桜通十文字バス停」にて下車後、歩いてすぐ。バスの所要時間は約5分ほどです。

◆車を利用する場合
東北自動車道・鹿沼ICから約15分・もしくは宇都宮ICから約20分です。
北関東自動車道・壬生ICからですと、約25分程で到着します。

◆栃木県立美術館
住所:栃木県宇都宮市桜4-2-7
電話番号:028-621-3566
営業時間:9:30~17:00
定休日:月曜日・年末年始・展示振り替え期間
※月曜日が祝日・振り替え休日は開館して火曜日休館

栃木県立美術館



イギリスの外交官アーネスト・サトウとは?


栃木県立美術館で「旅するイギリス美術展」が開催されるきっかけとなったのが、イギリスの外交官、アーネスト・サトウが立てた別荘が一般公開されたこと。

1896年(明治29)年に中禅寺湖の湖畔に建設されたアーネスト・サトウの別荘は、後に英国大使館別荘となり、2008年(平成20)まで利用されていました。その後、2010年(平成22)に栃木県へ寄贈され、改修を終えてようやくお披露目となったのです。

アーネスト・サトウは明治維新に大きな影響を与えた人物で、勝海舟や伊藤博文とも交流があったことで知られています。

故郷であるイギリスの風景を彷彿とさせる中禅寺湖を愛したアーネスト・サトウ。現在、別荘は「英国大使館別荘記念公園」と名前を変えて、2階からはまるで絵画のような風景を眺められるスポットとなっています。


◆英国大使館別荘記念公園
住所:栃木県日光市中宮祠2482
電話番号: 0288-55-0880 (栃木県立日光自然博物館)
※12月から翌年3月までは冬季休館中

栃木県立日光自然博物館




情報提供元: 旅色プラス