はじめに


黒光りする重厚な機関車からぽーっと音を立てて黒煙が噴き出すと、桜がまだ残るのどかな田園風景に煙が散っていく……。新宿駅から約2時間。東京から日帰りでも乗りに行ける蒸気機関車があるのをご存知でしょうか。JR全線を乗車した鉄道アイドルの伊藤桃さんが、春の真岡鐵道の魅力をご紹介します。

Text&Photo:伊藤桃

いちごに彩られたレトロな蒸気機関車!


写真の蒸気機関車が走っている路線は真岡鐵道といいます。JR水戸線の接続駅でもある下館駅から茂木駅までをつなぐ路線で、土・日・祝日を中心に運行しています。
下館駅の乗り換え口でSL乗車券500円と茂木駅までの運賃1,030円を支払い、ホームへ。

先頭の機関車には多くの人が集まり、歓声をあげながら写真を撮っていました。そこだけ昭和にタイムスリップしたかのよう。でもレトロ気分を味わえるのは機関車だけではなく、私たちが乗る後方の客車も国鉄時代の名残、50系です。

この日運行のC12 66は一度その役目を終え、福島県の川俣町にて静態保存(走る列車としてではなく、置かれた状態で保存されることをいいます)されていたものが手入れをされ、再度走ることになったとのこと。そして50系も、栃木名物のいちごにすっかり彩られていました。動くたびにゆれるいちごがとってもかわいいんです。
第二の“車”生を多くのお客さんを乗せることができて、C12も50系もどこか嬉しそうに感じました。

窓を開けて沿線の絶景と春の風を満喫


大きな汽笛をならして機関車が走り出すと、関東郊外ののどかな景色が過ぎさっていきます。煙には注意しなくてはいけませんが、窓を開ければ春の空気を感じながら列車に乗ることもできます。私が訪れた時は線路脇に菜の花が咲き乱れ、心地良い春の風も感じられてとても幸せな時間となりました。


ちなみに機関車側の客車には制帽もあり、こうして車掌さん気分で写真も撮れます。

お昼は機関車の方向転換も見られる茂木駅で


終点茂木駅までは約1時間半。あっという間に着いてしまいます。

茂木駅には機関車の方向転換をするための転車台があり、先ほどまで乗っていたC12が方向転換する姿も見ることができます。
SLを降りるとすっかりお昼時です。

茂木駅構内には「平成そば」があります。名前は平成ですが昭和の香り漂う渋い店構えです。カウンターメインの店内にはいたるところに蒸気機関車の写真があり、このお店が真岡鐡道ファンに愛されていることを感じます。

注文した山菜天ぷらそばもとってもおいしかったです!

ブランドいちご・とちおとめの食べ放題へ


「せっかく真岡鐵道に乗ったのだから思い出をたくさんつくりたい……」。そんな時におすすめなのが北山駅での下車。この駅はSLが停まらない駅なのですが、駅の両隣、西田井駅か益子駅で一旦降り、普通列車に乗り換えても5分程で到着しますよ。

北山駅を降りて5分ほど歩くと、益子観光いちご団地という看板、そして沢山のビニールハウスが見えてきます。そう、栃木名物のとちおとめを時間無制限で思う存分食べられるいちご狩りができちゃうのです! 4/9~5/6は1,000円、5/7~5/13は800円でとちおとめ天国を味わえます。

可憐な白い花をつけて赤く熟したいちごをぱくり。

ん~おいしい!!
大きく熟したものを選ぶと甘味たっぷり、小さくしまりのいいものを選ぶとほど良い酸味が。同じとちおとめでも飽きることなく色々な味を楽しむことができますよ。

◆益子観光いちご団地
住所:栃木県芳賀郡益子町塙527-6
電話:0285-72-8768
営業時間:9:30~15:30
定休日:1月1日

園に併設されている「いちご畑レストラン」内には、「ストロベリーフィールズ」というジェラート屋さんがあり、そこで次の列車まで待つこともできます。
私が選んだのは、オーダーをしてから生のいちごとミルクジェラートを益子焼きの陶器の上で混ぜ合わせて作る「いちご小町」。

果実たっぷりのいちごに上品な甘さのミルクが絶品で……おすすめです!

◆ストロベリーフィールズ
住所:栃木県芳賀郡益子町塙527-6
電話:0285-72-7741
営業時間:9:30~17:00
定休日:12月~8月(無休)、9月~11月(不定休)

おわりに


どこか昔懐かしいレトロな蒸気機関車に乗って、いちご狩りの旅へ。鉄道ファンならずとも楽しめる、春の真岡鐵道の旅、今度の週末にいかがでしょうか?

◆伊藤桃
青森県出身。小さい頃から寝台列車が大好きで鉄道アイドルに。2016年1月JR全線完乗。現在は、多くの執筆を始めメディアでも活躍中。著書に『桃のふわり鉄道旅』(開発社)。  



情報提供元: 旅色プラス