はじめに


台湾ブームの盛り上がりと共に、来訪者も急増中の温泉地・北投。台北からMRTで約40分という立地の良さはもちろん、天然ラジウム温泉をはじめとした3種のお湯が楽しめる点も他にはない魅力。そんな北投で注目なのが、温泉施設とレストラン、カフェを擁する複合施設「少帥禪園(マーシャル ゼン ガーデン)」。歴史的建造物のなかで供される料理は、その背景を知っていただくと、一層味わい深いものに。レストラン「漢卿美饌」のコースメニューを紹介します。

歴史的建造物がレストランに。


瓦屋根が目を引く日本風の建物が連なる「少帥禪園」は、もともと日本統治時代に建てられた高級温泉宿「新高旅社」として建てられたもの。それが第二次世界大戦中の末期に神風特攻隊の接待所となり、戦後には国民党と共に台湾に渡った軍人・張学良を幽閉する住居に。時を経て1980年代にレストランとして一般に開放され、2011年の大幅リニューアルによって、現在の「少帥禪園」が誕生しました。レストラン、カフェに加え、白硫泉が楽しめる個室風呂や足湯、歴史に思いを馳せる展示室を擁し、週末には家族連れがレジャー感覚で訪れるスポットとなっています。

張学良ゆかりの長寿食に世界が注目!


“少帥”とは、張学良の愛称のひとつ。この地に幽閉されるなど、波乱に満ちた人生を送りながら、100歳まで力強く生きた張学良。彼の長寿の秘訣は食生活にあったとも言われています。レストラン「漢卿美饌」では、当時の食生活に関する情報からレシピを再現したり、台湾風、現代風のアレンジを加えるなどして、3つの懐石風コースとベジタリアンコースを完成させ、食生活の大切さを私たちに伝えています。フランス外務省が発表する世界の最高峰レストラン1000選「La Liste」に3年連続でランクインするという快挙が、そのクオリティの高さを物語っています。

今回紹介するのは、張学良の愛称を冠した「少帥私房套餐」(1800元+10%)の冬のメニュー(2月末まで)。彼の出身地である中国の東北地方の主食である五穀や雑穀、毎日食していたと言われる大好物のエビや海鮮、地元の旬の食材で作った料理などを組み合わせ、当時の食生活をしのばせるコースに仕上げています。すべての料理は塩分と油を控えめに調理し、素材そのものの味を生かすことを心がけているそう。

写真映えする美しい盛りつけにも注目。


全10品にも及ぶコースは、繊細な前菜からはじまります。口当たりのよい牛スネの煮こごり、香ばしく焼いたマナガツオの大根もち、ショウガを効かせたアワビの煮込みが、フォトジェニックな姿で登場。ここで見逃してならないのは、付け合わせの香の物。爽やかな味わいの正体は、なんとパッションフルーツ! 台湾らしさ満点お漬け物は、お土産に持ち帰りたいほどの美味しさです。
そして、早くも張学良の食を象徴するエビ料理がやってきます。お皿の上で踊るのは、ボリューミーな車エビ。蒸す際に出てくるエビの旨味は、下に敷かれた平たい冬粉(春雨)がしっかり吸収しているので、温かいうちにぜひ。
お口直しに供されるのは、張学良夫妻が花を愛好していたことに由来する、バラの花の自家製酢と茶梅。どちらも酸味は抑えめで、キュッと飲めてしまう爽やかさです。
次にやってくるのは海鮮料理。夫人がシンプルな調理法を好んだことから、今回のマナガツオも香ばしく焼いたもの。ふわっふわに焼き上がっていて、そのままでも十分美味。かぼすやキャビアでアクセントをつけて噛みしめれば、華やかな味わいが楽しめます。
張学良が幽閉されていた際、この地の原住民たちが勧めた料理もまた、彼の食生活を語るうえで欠かせないレシピ。そのひとつが花雕酒と呼ばれる紹興酒で鶏肉を煮込んだ一皿。上品な味わいのタレが染み込んだ皮も必食です。
続くご飯ものは、台湾人のソウルフード・魯肉飯(ルーローファン)。巷のそれとは一線を画す、高貴な味わいの肉そぼろは、忘れがたい味。トッピングされた香菜との相性も抜群で、いくらでも食べられそうな秀作です。
スープは、枸杞や蓮の実などの薬膳素材がたっぷりはいった、滋味豊かな具だくさんの中華スープ。鶏ガラベースで、具には歯ごたえあるモモ肉がゴロゴロ入っています。時折現れるコリコリした食感のホルモンは、豚のガツ(胃袋)。ショウガやホワイトペッパーを効かせていて、臭みなどはまったくありません。この季節のスープは濃いめとのことですが、体に深く染み入る、優しい味わいです。
こちらは、自家栽培した野菜を好んで食した夫人にちなんだプレート。旬の野菜そのものの味を楽しむべく、できるだけ手を加えず調理。お皿を鮮やかに彩っているのは、紫芋のペースト。
お待ちかねのスイーツには、とびきり贅沢な食材のお出ましです。この季節に登場するのは、ツバメの巣とココナッツミルクのスープ。ツバメの巣(燕窩)といえば、滋養強壮や美肌効果で知られる高級食材。どんなにお腹いっぱいになっていても、完食必須。ほどよい甘みと温かさに、ほっこりすること請け合いの一品です。フィナーレは季節の果物。フルーツ天国ならではの新鮮な果実の甘さもまた、格別です。

メインが3品もあるフルコースとあって、そのボリュームはかなりのもの。でもご心配なく。レストラン「漢卿美饌」では、スローフードを提唱していて、3時間をかけ、ゆっくりいただくシステム。一皿一皿、じっくり味わって。より高級でゴージャスなコースを望むならば「大帥府傳套餐」2500元+10%(2/4からは2800元+10%)、魚好きなら龍虎石斑(全ハタ)をふんだんに使った「四小姐鱻食套餐」2000元+10%(2/4からは2200元+10%)という選択肢も。いずれも食材に限りがあるため、週末は早めの予約がベターです。

※個室風呂

とびきりの食事で滋養を取り込んだ後は、ぜひ温泉効果で新陳代謝の促進を。オススメは60分の個室風呂。関節炎、皮膚病、婦人病などに効果があるといわれる白硫泉を引いていて、蛇口から出てくるのは約42℃まで下がった源泉。これを好みの温度に調整して入ります。アメニティは、マイルドな洗い心地のボディソープ、シャンプー、ボディーローション。そのほか、綿棒やブラシ、ドライヤー等も揃っているので、メイクを落とさないなら、洗面用具の準備は不要。ミネラルウォーターを飲みながら、カウチソファーで休憩しつつ、窓越しの北投の景色を眺めて温かいお湯にゆるむという、至福の1時間を過ごせます(2人までの使用料は1500〜1800元、レストラン利用で割引になるセットコースもあり)。

気軽に北投温泉を体験するなら、足湯というチョイスも。源泉掛け流しの贅沢な足湯が楽しめます。


おわりに


長寿食と温泉効果で、翌日のお肌の透明感の違いを実感! 毎日でも通いたくなる美と健康の殿堂、北投まで足を伸ばす価値は絶大です。

レストランと個室風呂の利用者は、片道100元のシャトルバスが無料になるサービスも。予約時に送迎を希望する旨を伝えると、新北投駅からの往復がぐっと便利に。

◆少帥禪園(マーシャル ゼン ガーデン)
住所:台北市北投區幽雅路34號
電話:+886-2-2893-5336
情報提供元: 旅色プラス