観光庁はこのほど、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出件数と受理件数について、6月15日の同法施行から1か月と2週間後となる7月29日時点の状況を公表し、民泊届出件数が6,603件(民泊受理件数:5,235件)に達したことを明らかにした。


同法施行の6月15日時点の集計では民泊届出件数は3,728件、民泊受理件数は2,210件で、届出件数は1.7倍、受理件数は2.3倍にまで増えている。


民泊を合法的に行う制度として大阪市や東京都大田区を中心に特区民泊が先行しているが、特区民泊の申請件数3,061居室を上回った。


件数としては着実に増えてはいるものの、同法施行前に約56,000施設※あった民泊施設のうち約1割にあたる施設でしか届出が進んでいない。(※民泊市場のリサーチ・調査を手掛けるメトロエンジン株式会社が提供する民泊ダッシュボードのメトロデータによる)


インターネットでの届出だけで民泊の営業ができるという触れ込みとともに始まった民泊新法であるが、観光庁によると6月15日までの民泊受理件数のうち電子署名を利用することでオンライン上の手続きのみで完結できる「電子方式(電子署名あり)」の割合はたったの5.9%のみ。


届出書類が多く手続きが煩雑なのに加えて、条例に明記されていない不要書類の提出を求める事例などがあり、これらがインターネットでの届出を難しくしている。


 


民泊届出件数ランキングで札幌市が1位となった理由


観光庁の公表データをもとにしたエリア別届出件数ランキング※で届出件数が最も多かったのは札幌市の届出件数873件(受理件数:793件)で、2位新宿区の届出件数550(受理件数:256)を大きく上回る。


※都道府県(保健所設置市及び特別区を除く)、保健所設置市、特別区ごとの民泊届出件数


民泊ダッシュボードのメトロデータでは、新法施行前にそこまで民泊の物件が多くなかった札幌市であるが、民泊届出物件数ではその存在感を示した。


札幌市が届出件数ランキングで日本一となった背景には、大阪や東京などの都市部に比べると物件取得の費用が抑えられるのに加え、夏や紅葉シーズン、雪まつりなどの繁忙期と閑散期の差が大きく年間180日以内でも繁忙期中心に貸し出すことで収益が見込める点が挙げられる。


また札幌市では2017年12月から違法民泊に関する情報の通報窓口を設置するなど取り締まりを強化しており、このような対策強化も合法化を後押ししているようだ。



 


東京23区では届出物件数で二極化進む


東京23区内の民泊届出物件数では、届出件数550(受理件数:256)を新宿区が最多でとなり、第2位には届出件数329件(受理件数:305)の渋谷区が続いた。3位には届出件数283件(受理件数:217)の豊島区が続いており、届出件数上位の行政区は新法施行前の傾向と近い。


一方で、銀座など人気の観光スポットがある中央区は届出件数19件(受理件数:2件)と伸び悩むほか、日比谷公園などがある千代田区も届出件数9件(受理件数:9件)と伸び悩んでいる。


東京23区内では新法施行前時点で民泊物件の多かったエリアでも、新法施行後に届出件数を伸ばすエリアと伸び悩むエリアに二分化されているようだ。



 


観光庁、住宅宿泊事業の届出迅速化を求める通知を発出


住宅宿泊事業法の施行から約1か月と2週間が経過したが届出書類が多く煩雑な手続きが原因で届出件数が多くの自治体で伸び悩んでいる。このような状況を受けて観光庁は7月中旬に通知「住宅宿泊事業の届出に係る受付事務の迅速な処理等について」を発出し手続きの迅速化を求めている。


通知では、民泊制度運営システムを利用した届出を実質的に認めない運用を行うなどする自治体に対して、「民泊制度運営システムを利用して行うことを原則とする」ガイドラインに則りシステムの利用を促進するよう協力を要請。


不要な手続き書類を求めるなどし心理的な参入ハードルを高める自治体もあるが、民泊制度運営システムを活用してインターネットで届出が完結できるよう整備されていくか今後の動向に注目が集まる。


情報提供元: Airstair
記事名:「 【最新】民泊届け出6,000件突破 東京23区は全体の4割 特区民泊の数を上回る