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信用調査会社の帝国データバンクは、2016年度のホテル・旅館経営を主とする企業の2016年度収入高合計を発表。これによると2016年度収入高合計は、前年度比2.1%増の4兆9,012億2,500万円で、過去10年で最高となったことがわかった。
年商規模で見た増収の構成比では、100億円以上が62.1%で最も高い。逆に1億円未満の増収が14.6%のシェアにとどまり、比率が最も低く年商規模が大きい企業ほど、増収の比率が高いことが浮き彫りになった。
また、地域別でもインバウンドに人気の高いエリアを中心に増収傾向が顕著になっている。大阪や京都などの近畿では、訪日外国人観光客も多く、増収の比率が33.1%を占め、調査を行った11地域の中で最も高いことが明らかに。
一方で、営業年数などの業歴別で見ると、増収の比率が最高だったのは10年未満の38.2%。反対に減収の比率が多かったのは、100年以上の老舗宿泊施設で27.5%だった。
宿泊業界は今年、大きな変革の時を迎えている。6月15日に施行される住宅宿泊事業法を皮切りに、不動産業界からホテルとは無縁と思われる飲食業界や出版業界、ファッション業界まで、実に多様な業種が宿泊業界に参入することが見込まれる。
新規参入を目論む事業者は、多様化する宿泊ニーズを捉え「メイン事業×ホテル」の掛け合わせ技で宿泊業界に切り込む。これまでホテルとは無縁だった異業種によるホテル市場への参入は、オリジナリティにあふれるものが多い。
例えば、高級フランス料理店「ひらまつ」は、ひらまつ ホテルズ アンド リゾーツとして三重県志摩市や熱海、箱根に新規ホテルを開業。ホテルでは、メイン事業の高級レストランで培った料理に徹底的にこだわる。
ソーシャルアパートメントを主力事業に据えるグローバルエージェンシーは、共用スペースを充実させるなどソーシャルアパートメントで培った交流の場作りを活かした「ホテルザ・ミレニアルズ(The Millennials)」を開業。
衣服から生活雑貨、食品に至るまで幅広い品ぞろえと品質の良い商品で知られる無印良品は、自社の強みを活かしたホテル「MUJI HOTEL」を中国深センに開業するとともに銀座での開業も控える。
帝国データバンクの調査データから宿泊業界は全体として上向きであるが、注目すべきは100年以上の老舗宿泊施設で特に減収比率が高い点だ。
昨今、民泊物件が全国で6万件を超えるなど利用者が急増している背景には、多様化する宿泊ニーズを捉えた宿泊施設が多いことが挙げられる。老舗宿泊施設での減収比率が高い理由として、多様化するニーズを捉えたサービス提供ができていないことも要因の一つとして考えられる。
宿泊業界は、2017年から急速に進む飲食や出版業界などの異業種による参入で、二極化がさらに加速する可能性がある。