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2020年に開催される東京オリンピックで大型クルーズ船をホテル代わりに使う「ホテルシップ」構想の制度案概要が明らかになった。東京、神奈川、千葉の1都2県の計5カ所の埠(ふ)頭を停泊港とする予定で、制度化に向けて詳細を詰めていく。
東京五輪・パラリンピックに向けて、宿泊施設の不足が問題となっているが、問題解決に向けて政府が着目したのは海上だ。
ホテルシップは、宿泊客1,000人以上を収容できる5万t級の大型客船を指定する埠頭に停泊させて利用。新たに宿泊施設を建築する手間やコストも省け、ホテル並みの設備を誇る大型客船は利便性や快適性も兼ね備えている。
【ホテルシップで停泊対象となる5埠頭】
・東京港15号地木材埠頭(東京都江東区)
・川崎港東扇島地区(神奈川県川崎市)
・横浜港山下埠頭(神奈川県横浜市)
・横浜港本牧埠頭(同)
・木更津港南部地区(千葉県木更津市)
ホテルシップでの利用は、通常のクルーズなどの寄港と違い、宿泊に関する法整備が問題となっていた。2017年から政府や1都2県の自治体との協議を重ね、あいまいだった法的根拠を旅館業法の許可を義務化することで決着。今後、法的な問題の見通しが立ったことで、具現化に向けて大きな弾みがつきそうだ。
ホテルシップでは、近隣自治体にとっても大きなPR材料になり、地域活性策にもなる。川崎港は1964年東京五輪で5隻の客船がホテルシップとして接岸し、期間中に3,500人が宿泊、延べ約6万人の見物客が訪れた。各港を擁するほかの自治体も同様で、停泊地周辺の地域経済の活性化にもつながる。
横浜市でも19年に迫ったラグビーのワールドカップに向けても、ホテルシップを導入する予定で着々と準備が進めてられている。2017年のインバウンドは過去最高となる2,869万人を記録。政府では20年までに4,000万人の目標を掲げているだけに、受け入れ体制の強化は五輪開催に向けて重要な施策の一つだ。
現在、大都市を中心にホテルの新設・増設ラッシュが続く。さらに、6月15日には住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、多くの事業者による民泊参入も見込まれる状況だ。
ホテルシップ構想が実現すれば、停泊港に移動可能な大規模ホテルが突然現れることを意味する。停泊港周辺の宿泊施設にマイナスの影響を与える可能性もあり、今後の動向が気になるところだ。