全日本空輸(ANA)は、「ANAスーパーフライヤーズカード(SFC)」のサービスを2028年4月1日に刷新すると、発表していたが、9月末までに当初発表した改定内容を見直すという。


当初の変更内容は?



ANAカード・ANA Payの年間決済額が300万円以上の人を、「ANAスーパーフライヤーズカード SFC PLUS」として、ANAラウンジの利用、5,000マイルのマイル積算、スターアライアンス・ゴールド資格を付与する。ANAカード・ANA Payの年間決済額が300万円未満の人を、「ANAスーパーフライヤーズカード SFC LITE」として、ANAラウンジの利用はできなくなるほか、スターアライアンス各社でもラウンジ利用が原則できないスターアライアンス・シルバー会員に格下げとなる。なお、ANAグループ運航便で100万ライフタイムマイルに到達した場合は「ANAスーパーフライヤーズカード SFC PLUS」となる。


「決済しないとラウンジに入れない」のが今回の制度変更のキモ



ざっくり言えば、これまでSFC会員は「年会費さえ払えば無条件でラウンジに入場できた」のが、今後は「決済額などの条件を満たさないと入場できなくなった」というのが今回の制度変更の最大のポイントだ。


大きく影響を受けるのは、会員資格をすでに取得しているものの、現在は年に数回しか飛行機を利用しないライト〜ミドルユーザーたちである。年数回の利用しかない客に対してサービスを縮小し、混雑するラウンジの適正化を図り、上級会員を選別すること自体は、企業側の論理として致し方ないともいえる。


立ちはだかる「年間300万円」の壁、SFC層でも厳しい現実



しかし、「ANAカード・ANA Payの年間決済額が300万円」という線引きは、あまりに「やりすぎ」ではないだろうか。


年間300万円ということは、月に均して25万円のカード決済が必要になる。日本の平均年収が概ね450万円であることを考えれば、そもそも到達不可能な水準だ。


仮にSFC会員の多くが大企業の管理職等であり、平均年収が1000万~1500万円の層だったとしても、このハードルは高い。税金や社会保険料が引かれた手取り額から、クレジットカードで支払うことができないことが多い家賃や住宅ローンを差し引き、さらに貯蓄や教育費などを除けば、自由に使える「カード決済可能な生活費」は大きく目減りする。


現在では国税のクレジットカード払いや、スマートフォン決済を通じた納税なども可能になってはいるものの、決済手数料の負担やチャージルートの煩雑さを考慮すると、誰もが積極的に利用する手段とは言いがたい。結局のところ、平均年収が1000万~1500万円の層と想定しても、年収の多くを占める生活費の大部分を「ANAカードでの決済」に集中させなければ、300万円という数字には届かないのではないだろうか。


他社カードとの還元率競争のなかで



さらに追い討ちをかけるのが還元率の問題だ。ANAカード(一般・ゴールド)の基本マイル還元率は概ね0.5~1%程度に留まる。年会費無料で高還元を謳うクレジットカードや、特定の経済圏で爆発的にポイントが貯まるカードが乱立する昨今、日々のあらゆる決済を「還元率の観点では必ずしも最強とは言えないANAカード」に一本化しようという気になりにくいのが、消費者の率直な心理だろう。5,000マイルの積算があってもだ。


現実的な「見直し」の妥当なラインとは?


現在、ANAは9月末までにこの改定内容を見直すと発表している。現実的に見直しを行うのであれば、ラウンジ入室等の要件となる「決済額の引き下げ」が妥当な線ではないだろうか。


クレジットカード業界において、年間100万円~200万円という決済額は、翌年の年会費無料化やボーナスポイント付与などの「マイルストーン」として設定されることが多い標準的な水準だ。SFC会員に求める優良顧客としてのハードルも、この100万〜200万円のラインに落ち着かせるのが、ユーザーの生活実態と企業側の選別の両立を図るうえで、最も現実的な落とし所だと考えるが、いかがだろうか。

情報提供元: Traicy
記事名:「 ANAのSFC制度変更、「年間決済300万円」の壁は非現実的?「改悪」見直しなるか【コラム】