JR東日本が高輪ゲートウェイ駅周辺で進める大規模再開発事業「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」が、3月27日にまちびらきを迎えた。

高輪ゲートウェイシティは、商業施設やオフィスが入居する2棟の大規模複合ビル「THE LINKPILLAR(ザ・リンクピラー)1」と「THE LINKPILLAR2」、展示ホールやライブ会場が入る文化創造棟、住宅棟の計4棟で構成される。品川駅の北側にあった車両基地「田町車両センター」を縮小・改組して生まれた約13ヘクタールの敷地を活用しており、延床面積は約845,000平米。都心の再開発プロジェクトとしては最大級となる。

華々しくまちびらきを迎えたとはいえ、グランドオープンは2026年春の予定で、今後も建設工事は続く。27日の時点ではザ・リンクピラー1内に、「ニコライ・バーグマン」と「ブルーボトルコーヒー」の2店舗が先行開業している。

一方で、2020年3月14日の開業以来「暫定開業」という扱いだった高輪ゲートウェイ駅は、このタイミングに合わせてついに全面開業となった。従来の北改札に加え、新たに南改札の供用が始まり、駅構内にはカフェや飲食店など4店舗が新たにオープンした。

[caption id="attachment_333909" align="alignnone" width="900"] ▲南改札外3階にオープンしたティーサロン&バー「MAISON CLASSIC SALON」。テラス席からは駅構内全体を見渡せる[/caption]

施設全体の概要はすでに他社媒体などで報じられているので、本稿では乗り物好きの読者が多い弊誌「TRAICY(トライシー)」ならではの視点で注目スポットを紹介していきたい。

駅構内から隣接する車両基地を観察

[caption id="attachment_333907" align="alignnone" width="900"] ▲駅に隣接する車両基地(工事現場からJR東日本の許可を得て撮影)[/caption]

前述したように、高輪ゲートウェイシティは田町車両センターの跡地に作られているが、今も車両基地機能の一部は残されており、近郊型電車をはじめ、E255系やE259系などの特急型車両、寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」の285系などが出入りしている。

これまでも高輪ゲートウェイ駅の構内からその様子が見え、知る人ぞ知る鉄道ウォッチングスポットとなっていたが、駅の全面開業によってこれまでとは違う角度から敷地内を見ることができるようになった。まずはこれが注目点の一つだ。

[caption id="attachment_333897" align="alignnone" width="900"] ▲南改札外3階のテラスから品川駅方面を望む[/caption]

鉄道のレガシーを伝える散策路

[caption id="attachment_333903" align="alignnone" width="900"] ▲ザ・リンクピラー1の裏手につくられた「高輪リンクライン」[/caption]

さて、高輪ゲートウェイシティの開発工事中、駅の周辺で明治時代の鉄道遺構「高輪築堤跡」が約1.3キロにわたって発掘されたことはご存知の方も多いだろう。日本の近代化に関する重要な文化財として国の史跡として指定を受けた高輪築堤は、一部が現地保存または移築保存され、今後公開される予定となっている。

その他の大部分は記録保存という形で残念ながら解体されてしまったが、そのレガシーを伝承する空間がつくられた。それが、駅正面にそびえるザ・リンクピラー1と国道15号の間の南北約300メートルにわたる散策路「高輪リンクライン」だ。築堤が見つかった場所にほぼ沿っており、かつて鉄道が通っていたライン上にレールが埋め込まれている。

[caption id="attachment_333910" align="alignnone" width="900"] ▲レール自体はこの場所から出土したものではないが、「新橋停車場から2.60哩(マイル)」などとかつての新橋停車場からの距離を示すプレートが設置されている。[/caption]

注目したいのは動線の脇にある植え込み。この植え込みを囲っている石材こそが、高輪築堤の石垣を流用したものだ。築堤の角度と同じ30度の傾斜がつけて組まれているという。

その近くに設置されている木製の腰掛けにもエピソードが。ここには鉄道施設を強風や吹雪から守る鉄道林のうち、植え替えなどで役目を終えた木を木材として活用。一部には、その木がどこに植栽されていたかが記録されている。

[caption id="attachment_333905" align="alignnone" width="900"] ▲「奥羽本線(秋田新幹線)神宮寺駅〜刈和野駅間 福島駅起点258k020m」と刻まれた木材[/caption]

羽田新ルートの真下で飛行機を見る

ところで、高輪ゲートウェイシティは羽田空港の都心上空ルート(羽田新ルート)の下に位置することから、飛行機のウォッチングスポットとしても楽しい。

羽田新ルートとは、羽田空港の国際線増便のために2020年3月29日から運用されている飛行ルートのこと。風向きの関係で冬場はあまり運用されないが、夏場を中心に年間4割程度の日に使われている。高輪ゲートウェイシティの上には、南風が吹いている日の午後3時頃から同7時頃までの間に、C滑走路に降下する飛行機が約400メートルの高度を通りすぎていく。まさに真上を通るため、普段はなかなか見られない「飛行機のお腹」を観察できるのがおもしろい。

[caption id="attachment_333901" align="alignnone" width="900"] ▲高輪ゲートウェイシティの真上を飛ぶ全日本空輸(ANA)のボーイング777-200型機(機体記号:JA714A)のお腹[/caption]

まちの中のどこからでも飛行機を間近に見ることができるが、おすすめは駅とザ・リンクピラー1の間の駅前広場「ゲートウェイパーク」。山手線で一番新しい駅と東京で最新の街の上をゆく飛行機を、ドリンクなどを片手にベンチに腰掛けながら思う存分ウォッチできる。

“まだ誰も知らない”展望テラス

[caption id="attachment_333914" align="alignnone" width="900"] ▲NORTH棟とSOUTH棟の2つのタワーが立つザ・リンクピラー1[/caption]

最後に、現時点ではまだオープンしていない秘密のスポットを紹介しておこう。それは、ツインタワーとなっているザ・リンクピラー1のNORTH棟とSOUTH棟の間に作られている展望テラスだ。

ここでは地上6階の高さから、正面にお台場方面を見渡すことができる。手前には高輪ゲートウェイ駅隣接の車両基地、その奥にはJR東海の大井車両基地に向かう東海道新幹線の回送線、さらに遠くには東京モノレールやレインボーブリッジを望む。そしてその上空には、羽田新ルートを通る飛行機が、地上で見るよりもさらに近いところを飛んでいく。

ここにも先ほどの鉄道林を活用したテーブルと腰掛けがあり、航空・鉄道ファンにはたまらない眺望をゆったりと楽しむことができる。具体的なオープン時期は今のところ決まっていないが、ザ・リンクピラー1の全面開業後は一般開放される予定だという。

隣の品川駅を起点とするリニア中央新幹線や、羽田空港アクセス線の開業を控え、日本と海外の結節点としてのポテンシャルを秘める高輪ゲートウェイシティ。今後も我々乗り物好きは目が離せない場所として成長を続けていきそうだ。

情報提供元: Traicy
記事名:「 航空ファンも見逃せない「高輪ゲートウェイシティ」 TRAICY的注目スポットはここだ