日本航空(JAL)は、10月28日のロンドン/ヒースロー発東京/羽田行きのJL44便(ボーイング777-300型機、機体記号:JA733J)に乗務予定だった副操縦士から検出されたアルコール値がイギリスの法令で定められた基準値を超えていたことから逮捕・拘束されたことを受け、調査の経過と再発防止策を国土交通省に提出した。東京都内で開いた記者会見で、赤坂祐二代表取締役社長らは陳謝した。
副操縦士は同便への乗務前、航空機へ送迎するバスの運転手がアルコール臭を感じたため、運転手は保安担当者にその旨を伝え、保安担当者が警察に通報したことから、ロンドンの警察当局に身柄を拘束された。血中アルコール濃度を検査した結果、法令基準である1リットルあたり200ミリグラムを大きく上回る、同1,890ミリグラムのアルコールが検出されている。同便は社内規定により機長2名による運航が可能と判断し、ロンドン・ヒースロー空港を1時間9分遅れの現地時間午後8時9分に出発。羽田空港には1時間1分遅れの午後4時56分に到着した。
副操縦士は現在もイギリスで勾留されており、JALでは勾留後に一切聞き取りができていないという。11月1日の勾留直前に行った適切な検査方法だったかとの質問に、「申し訳ありません」と発言したという。社内で検証した結果、使用したアルコール感知器は量や角度を調整するとアルコールを検知しないことが起こりうるとしており、JAL側は意図的に不正を行ったと認識しているとした。
機長2名は4回に渡る調査で、副操縦士のアルコール臭に気づかなかったというものの、そのうち1名は副操縦士は機長らから距離を置く素振りが合ったと話しているとした。アルコール測定時の相互確認は怠っていたという。ロンドンベースの客室乗務員や保安検査員など、比較的至近距離で接触した13名のうち、通報したバスの運転手以外は気づかなかったという。ロンドンでは滞在する客室乗務員は別の動線となるという。機長2名は乗務停止処分を受けているとしている。
再発防止策として、旧型アルコール感知器の正確な使用方法の徹底と、文書などによる事例周知や注意喚起、アルコール検査時の地上スタッフの立会い、乗務開始24時間前以降と国内・海外滞在地での飲酒の禁止を行っている。海外の空港への新型アルコール感知器の配備は11月19日までに完了する。
赤坂社長は20%、進俊則取締専務執行役員兼運航本部長は10%、役員報酬をそれぞれ1ヶ月間減額する。役員の処分は社外取締役を含めた委員会によって決定するとしており、最終的な処分ではないという。
2017年8月から今年10月までの間、パイロットからアルコールを検知した事例は19件発生し、12件で乗員交代、7件で基準値未満まで乗務を見合わせた。
■アルコール検知事例一覧(日付、便名、出発・到着地、資格、年齢、遅延時間の順)
2017年8月2日 JL585 東京/羽田発函館行き 副操縦士(48) 5分遅延(乗務員起因の遅延なし)
2017年9月1日 JL45 東京/羽田発パリ/シャルル・ド・ゴール行き 副操縦士(55) 3分遅延(乗務員起因の遅延なし)
2017年9月8日 JL900 沖縄/那覇発東京/羽田行き 副操縦士(41) 38分遅延(うち乗務員起因の遅延は35分)
2017年9月9日 JL232 岡山発東京/羽田行き 機長(58) 16分遅延(うち乗務員起因の遅延は16分)
2017年9月20日 JL605 東京/羽田発長崎行き 副操縦士(39) 7分遅延(うち乗務員起因の遅延は7分)
2017年10月4日 JL120 大阪/伊丹発東京/羽田行き 副操縦士(32) 遅延なし
2017年10月9日 JL565 東京/羽田発女満別行き 機長(57) 9分遅延(うち乗務員起因の遅延は9分)
2017年12月8日 JL500 札幌/千歳発東京/羽田行き 機長(55) 10分遅延(うち乗務員起因の遅延は10分)
2017年12月12日 JL514 札幌/千歳発東京/羽田行き 機長(47) 8分遅延(うち乗務員起因の遅延なし)
2017年12月18日 JL104 大阪/伊丹発東京/羽田行き 副操縦士(42) 2分遅延(うち乗務員起因の遅延は2分)
2018年1月7日 JL60 大阪/関西発ロサンゼルス行き 機長(53) 20分遅延(うち乗務員起因の遅延は20分)
2018年1月9日 JL252 広島発東京/羽田行き 機長(42) 遅延なし
2018年1月20日 JL231 東京/羽田発岡山行き 機長(49) 34分遅延(うち乗務員起因の遅延は33分)
2018年3月10日 JL514 札幌/千歳発東京/羽田行き 機長(46) 遅延なし
2018年3月14日 JL141 東京/羽田発青森行き 機長(61) 1時間11分遅延(うち乗務員起因の遅延は1時間11分)
2018年6月15日 JL502 札幌/千歳発東京/羽田行き 機長(50) 1分遅延(うち乗務員起因の遅延は1分)
2018年8月16日 JL725 東京/成田発ジャカルタ行き 機長(50) 20分遅延(うち乗務員起因の遅延は20分)
2018年8月20日 JL302 福岡発東京/羽田行き 副操縦士(46) 12分遅延(うち乗務員起因の遅延は10分)
2018年10月8日 JL741 東京/成田発マニラ行き 機長(54) 45分遅延(うち乗務員起因の遅延は45分)