はじめまして、トラベルライターのさかいもとみと申します。欧州と日本を行ったり来たりしながら、旅行関連の媒体やニュースサイトへの寄稿をしておりますが、このほどトライシーで執筆させていただくことになりました。どうぞよろしくおねがいします。
さて、この数年、インドネシアやマレーシアに住むイスラム教徒(ムスリム)の訪日客が増えています。ムスリムの人々は教義に沿った食事を食べる習慣がありますが、日本での対応はいまひとつ遅れ気味で「食べるものがなくて困る」という声も良く聞きます。
せっかく日本へ行きたいのに、食べ物への不安が理由で日本訪問を避けることになるのは残念です。日本に向かう飛行機でも同じような問題が起こります。そこで、ANAのアジア便でどんなムスリム向け対応があるのか実際に試してみることにしました。
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日系航空会社のフライトでは、まず飲み物とともにあられなどが入ったスナックが配られます。
これまで筆者は「機内食物は全てハラール」という便に何度も乗ったことがあるのですが、その時はミネラルウォーターを含む、「出されるもの全てがハラール」なので、具体的な”区別”を感じたことはなかったです。
「あなたにはこれ」と渡されたときは、なんとも言えないショックを感じました。なんだかある種の病気の時に渡される特別食をもらった時のあの感じです。
「ハラールおかき」は、見た目は醤油かけの普通のおかきなのですが、妙に甘い!
餅を揚げただけのようなのですがなんとも不思議です。食感は日本の普通のおかきなのに未体験の味です。日本の空港で「ムスリム向けみやげ」と売っているのはこんな感じの商品だと見て取れます。
一方、普通のスナックパックももらいましたが、エビエキスパウダーが結構強烈に使われており、甲殻類アレルギーの筆者には少々辛かったです。わざわざスナック菓子だけ「ハラールで」と事前予約するのは変態的ですから、今後のANA便搭乗時には注意が必要かもしれません。ちなみにナッツアレルギー対策でピーナッツはいずれにも使われていません。
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続いていよいよ機内食が登場です。
わざわざ「ご注文のイスラム教のお食事持って参りました」とまで言われて届けられたこともあり、ある種の肩身の狭さを感じました。しかもMOML(ムスリムミール)のステッカーがバチバチ貼ってあるのがなんとも異様。自分だけ全く違うモノを食べるという疎外感があります(偏見ありすぎ?)。
「妙な特別視対応」はそれだけではありません。他の方の分が全く配られる前に食べ終わってしまうほど早めにサービスされましたから、「あの人ナニ?どうして先に食べてるの?」と周りの「一般客」の方はきっと思っていたことでしょう。特に何も言わないでフツーのタイミングで持ってきて欲しいです。
さて、機内食の中身を見てみましょう。ちなみに今回紹介するハラール機内食(MOML=ムスリムミール)は香港で積まれたものです。
目を惹くのは、「お水がハラール」だったことです。マレーシアで最も産量の多い「SPRITZER」をわざわざ輸入してきて機内食と共に供給しています。これはマレーシアでも食の都として知られるイポー(Ipoh)近郊のタイピンという街で採取されるブランド水ですが、飲めばタダの水です。とはいえ、サントリーのペットボトル水を補充してもらうムスリムが普通にいるのではないでしょうか。
メインはラムカレーのスイートポテト添えでした。マレーシアにあるインド系ムスリムレストラン「ママ(Mamak)」でフツーに出てくる類のメニューですが、妙に凝った怪しい白身魚の洋食メニューよりはずいぶんと作り込んであります。しかし、ハラールメニューとしては、ムスリムの人にとっては当たり前すぎて日本らしさが感じられません。
一般メニューには冷やしうどんが付いていましたが、これのハラール版が待たれるところです。おそらく、お酒やみりんの成分なしで作るタレの調合が難しい(日本人が食べると多分美味しくないものになる)ところではないかと推察します。
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日本国内にあるムスリム向けレストランを探して「ハラールミール」をわざわざ食べに行くのはなかなかハードルが高いと思われます。一方、機内食のスペシャルミールはおおむね出発の48時間前までに注文したら応じてくれます。
ネットでチケット予約した人なら、予約番号さえわかれば航空会社各社のサイトを通じ、予約確認画面から「ハラール(イスラム教徒向け)特別食」を選択するだけです。特段の追加料金が取られるわけでもありませんので、ぜひトライしてみてはいかがでしょうか?
特に東南アジアのムスリム接客をなさっている方は、彼らが現地でどんなものを食べているか知る良い機会にもなるでしょう。是非一度試してみて下さいね。