11月24日午後7時47分頃、札幌航空交通管制部(札幌ACC)の通信施設に障害が発生し、札幌ACC内を飛行していた航空機と航空管制官との間で一時的に音声通信ができなくなった。
対空通信施設に電源を供給する、バックアップ機能を有する電源供給装置に不具合が発生し、電源が供給されなくなったことが原因で、不具合が発生した電源供給装置を迂回する電源経路に切り替えたことで、同日午後9時20分に復旧した。この影響で20便以上が欠航した。
本記事では、航空機の運航における音声通信の位置づけと、障害発生時に札幌ACC周辺を飛行していた航空機がどのような動きをしていたかを紹介する。
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写真上の空域が札幌ACCの管轄となっており、北海道や北東北の空港を離着陸する航空機や、ヨーロッパ方面に向かう航空機などに対して航空管制官が音声通信によって様々な指示をしている。航空管制官はパイロットに対して速度の調整や上昇降下の指示をすることで飛行している航空機の間の間隔を調整し、空の安全を守っている。航空機は出発してから目的地に到着するまでいくつかの管制区を飛行しており、それぞれの管制区で航空管制官と超短波(VHF)無線で音声通信を行っている。
私達が普段利用する航空機は計器飛行方式という方式で飛行している。計器飛行方式とは、航空法第二条十七項を要約すると、常時国土交通大臣の指示によって離陸から着陸までの飛行を行う方式である。実際は国土交通大臣の委任を受けた航空管制官が指示を行っている。つまり離陸から着陸までの飛行を行っている間は、航空管制官とパイロットの間に双方向の音声通信を確立させ、航空管制官からの指示に常時従えるような体制が取られていなければならない。今回の障害によって札幌ACCで双方向の音声通信ができなくなったため一時的に当該空域を飛行することができなくなった。
NH77便は羽田空港から新千歳空港に向かっていたが。岩手県上空で旋回し、羽田空港に引き返した。NH717便は中部空港から新千歳空港に向かっていたが、新潟県上空で旋回し、羽田空港に目的地を変更した。
NH717便は札幌ACCに移管される前に旋回したものの、NH77便は札幌ACCの管轄に進入していた。札幌ACCに移管されても直ちに東京ACCと音声通信ができなくなることはないが、VHF無線の性質上、伝搬距離には限界がある。
DJ10便は中部国際空港にむけて新千歳空港を離陸したが、函館北東の海上を旋回した後、出発地の新千歳空港に引き返した。
DJ10便は本来、新千歳空港への到着機、出発機が音声通信を行う千歳進入管制区から札幌ACCに移管されるはずであった。
今回は管制側の音声通信機器の障害だったが、もし航空機側の機器が正常作動しなかった場合は航空機の安全な運航が阻害され、重大インシデントになる可能性もある。それだけ航空管制官とパイロットの間に常時双方向の音声通信を確立させることは航空機の安全な運航に重要なものである。