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スズキが「ソリオ」をフルモデルチェンジ。同社のコンパクトカーで初めてハイブリッドが採用されましたが、「ソリオ」のそれは「マイルドハイブリッド」と呼ばれます。何が「マイルド」で、なぜそうした機構が採用されたでしょうか。
スズキは2015年8月26日(水)、小型トールワゴンである「ソリオ」のフルモデルチェンジを発表しました。プラットフォームやエンジンなどが一新されたことにより、車両重量は100kgの軽量化を実現。さらにボディサイズを先代とほぼ同等としながらも、室内空間はより広くなりました。そんな新型モデルの最大のトピックは、スズキのコンパクトカーで初となるハイブリッドの採用です。
「ソリオ」に搭載されたハイブリッドは、いわゆる「マイルドハイブリッド」と呼ばれるもの。これにより燃費はクラストップの27.8km/L(JC08モード)を実現しています。
その仕組みは、発電機にモーターの機能を付加した「ISG」と、小型のリチウムイオンバッテリーを組み合わせ、減速時の回生発電で得た電気を使い、発進加速時に最長30秒間のモーターアシストを行うもの。基本的にエンジンで走行し、モーターはあくまでアシストのみですから、通常のハイブリッドカーのように発進時などのEV走行モードはありません。ドライバーもハイブリッドカーを運転している感覚は薄いでしょう。
そんな「マイルドハイブリッド」のメリットは、ハイブリッド化を安価に実現できることにあります。また、ハイブリッドカーに搭載されている大きく重いモーターやバッテリーユニットなどが不要のため、重量やスペースへの影響も最小に抑えることができます。「ソリオ」の場合、車重はガソリン仕様と同等で、しかもスペースはガソリン車と全く変わりません。
ただし、ハイブリッドの機能も絞られているので、一般的なハイブリッド車のように、ガソリン車と比較し劇的な燃費向上は実現されません。それが「マイルド」の意味するところでもあります。とはいえ、コストとハイブリッド化のバランスが重視されたものなので、合理的ともいえるでしょう。
この「マイルドハイブリッド」ですが、実はスズキの軽自動車「ワゴンR」などに搭載されている「S-エネチャージ」と仕組みは同じ。違いはISGの出力が向上し、コンパクトカーに最適な仕様となったところです。これまでの「エネチャージ」開発実績からアシスト領域がより広がられ、燃費効率はさらに良くなりました。
ではなぜ「ソリオ」は軽自動車と同じ「S-エネチャージ」ではなく、「マイルドハイブリッド」を名乗ったのでしょうか。
これは販売戦略上の理由だそうで、エネルギー回生システムの「エネチャージ」を進化させハイブリッド機能を備えた際、軽自動車では「エネチャージ」の発展版という意味を込め、「S-エネチャージ」という名称を選んだといいます。しかし、ハイブリッドが既に定着しているコンパクトカーでは、分かりやすく「ハイブリット」とされました。
「ソリオ」への「マイルドハイブリッド」搭載の狙いは、走行性能の向上とクラストップの燃費効率達成にあります。軽自動車と同様に実用性が重視されるコンパクトカーで、経済性の高さは大きな武器。また、いまやコンパクトカーはファーストカー需要も極めて高いため、走りの良さも重要なポイントになります。新型「ソリオ」では、そんなファーストカー需要を意識した、商品力強化が図られているのです。
現在、スズキはハイブリッド車の開発も進めており、早ければ年内に新たなハイブリッドモデルの投入が噂されています。開発担当者によれば、「エネチャージ」や「S-エネチャージ」の開発により、ハイブリッドカーで重要なリチウムイオンバッテリーに関する技術が、かなり高まってきているといいます。時期は明言されませんでしたが近い将来、国内にスズキのハイブリッドカーが登場するのは間違いなさそうです。
スズキの普通乗用車は、年間販売台数が約9万台。その90%を「スイフト」と「ソリオ」が占めています。現在、10万台達成を目標に掲げるスズキにとって初となるハイブリッド車への期待は、かなり大きいといえるでしょう。
コンパクトカークラスでもハイブリッドが当たり前になったいま、スズキの「マイルドハイブリッド」がどれだけ顧客の心を掴むことができるか、注目です。