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このマークⅠは世界初の組み立て3ピースホイールで、〝スピニング〞という手法が、リム製作に応用されたもの。身近なモノだとパラボラアンテナなどに用いられている。
このスピニングの技術は、SSRではいまも受け継がれていて、熟練の職人が手を入れて調整する。この製法が、軽くて強いリムを生む、現在のスピニング工法の元である。
「SSRはもともと、クルマが好きでレースも好き、だから軽いホイールを作りたい、を根本に生まれました。いまも変わらずモータースポーツ活動に携わっていることも、軽さと強さにこだわっているのも、それが根幹だから」。
マークⅠの誕生からほどなくして、マークⅡ、マークⅢという伝説的モデルが登場。その後も75年のスターメッシュ、81年のフォーミュラメッシュ、93年のGP―θと、ヒットは続く。
そのどれもがスポーティなレーシング系デザインで、SSR=レースというイメージが定着した95年に突然、転機が訪れた。
時代を大きく動かしたVIPブランド、ヴィエナの誕生である。中でも99年のヴィエナ・ディッシュの勢いは凄まじく、ヴィエナはシーンを席巻する。ここからSSRはドレスアップ路線にも本格参入。
2013年にはGTシリーズを立ち上げ、同年に現在の主力、エグゼキューターも誕生。モータースポーツ活動で得たノウハウを背骨に、モータースポーツ用ホイールと同じクオリティ、ポテンシャルを市販ホイールにも投入するという、世界でも希有なモノ作りの手法を構築することに成功した。
レース用ホイールと同等のポテンシャルを市販品にも。
SSRホイールの開発に携わるの専門職は3名。特徴的なのはその3名それぞれが、市販品も開発するし、レース用ホイールも開発するということ。
だから当然、サーキットでのテストにも立ち会うし、ドライバーやエンジニアから直接、アドバイスをもらったり注文を受けることもあるのだという。
つまり、レースからのフィードバックが、直。だからこそSSRホイールは、レース用ホイールと同等のポテンシャルを、市販用ホイールでも確実に再現できるのだ。
「レース用とできるだけ同じデザインで、強くて軽いモノを常に目指しています。プロドライバーの評価を直接聞けるというのは貴重で、まずは作って、テストで壊して、作り直してまたテスト、という具合。
軽さは燃費にも直結しますし、いったん壊すことで、どうすれば壊れないかをとことん追求できる。重要保安部品なので、やっぱり一番大事なのは安心、安全です」。
ちなみにSSRは、1ピースモデルも販売するが、特に2ピース、3ピースの組み立て式ホイールに、こだわる。なぜか。
「3ピースなら、リムとディスクとで表面処理を変えられる。バリエーションを楽しめるんですよね。それに1ピースだと、想定したクルマのためのサイズにしかならない。マルチピースは、汎用性が高いから、どんな仕様のどんなクルマにも装着できる。楽しんでもらう製品だから、マルチピースを大事にしてるんです」。
SSRの工場では、今日も熟練の職人によるスピニングでリムを成型し、手作業でマルチピースを組み付け、溶接や仕上げなどでも人の手を介す。その様子は最先端とアナログとの共演。
それらはすべて、人の目と手を介することで、決して間違いのないホイールをユーザーの手元へ届けるため。繰り返されるチェックに、信頼が透けて見えた。
株式会社タナベ ホイール製造部 開発課 小田文裕さん
ディスク加工
リム成型①
リム成型②
組立・溶接
耐久・衝撃試験
スタイルワゴン2020年5月号より
[スタイルワゴン・ドレスアップナビ]