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日本有数のリゾート地として知られ、古くからの温泉地としても有名な「和歌山県西牟婁郡(にしむろぐん)白浜町」。同町から運行される高速バスは、2002(平成14)年の白浜・田辺~大阪線の開設を皮切りに路線数が増え、現在は大阪線のほかに京都線、首都圏線(横浜・東京・さいたま)の計3路線が運行されています。
中でも利用者が増えているのが「南紀白浜」と「首都圏」(横浜・東京・さいたま)を結ぶ夜行高速バス「ホワイトビーチシャトル」。その乗り心地や車内の様子は? さっそくレポートしていきます。
ざっくり、こんな「ホワイトビーチシャトル」
「ホワイトビーチシャトル」は、明光バス(本社:和歌山県白浜町)と西武観光バス(本社:埼玉県所沢市)が2013(平成25)年3月に共同で運行を開始した夜行高速バスです。両社とも高速バスの運行に際しては実績があり、安心して利用できます。
今回乗車したのは、明光バス担当便。2種類のカラーリングがありますが、いずれの車両も和歌山観光PRシンボルキャラクター"わかぱん"が大きく配置されており、遠くからでも目立ちます。
どちらの車両が使用されるかは、当日になってのお楽しみ。この2台の車両ですが、実はカラーリングのほかに、外観上の違いが7つあります。どの部分が違うのか…興味があればぜひ探してみてください。(答え合わせは後ほど。)
19:05頃、バスのりばに横浜・東京・大宮行き「ホワイトビーチシャトル」が入線。乗車改札が行われます。
入口横には座席表が掲示されています。間違いがないように、座る前に事前に確認しておきましょう。
早速、車内に入ってみます。
車内は、幅広の3列シートが並びます。青系のシートモケットと最後部まで一人掛けになっている座席配列が特長です。
シートは、夜行高速用の標準シートを採用。リクライニング角度も深く、ゆったりと身体を休めることができます。
シートカバーにも、"わかぱん"のアクセントが入っています。
レッグレストとフットレスト(足置き台)です。フットレストは、靴を脱いで使用します。
窓側座席には通路カーテンを装備していますが、この通路カーテンが優れモノで、座席~通路間のみならず、座席の前後もカーテンで仕切ることができるのです。実際にセットすると、さながら個室風に早変わり。周りを気にせずに眠れることから、特に女性客に喜ばれるのではないでしょうか。
各座席には、毛布(ブランケット)が備えられています。ただし、スリッパは備えられていませんので、必要な方は事前に携帯スリッパや使い捨てスリッパを用意しておくとよいでしょう。なお、毛布は車内備品のため、持ち帰ることができませんのでご注意を。
携帯電話やスマートフォンの充電に便利なコンセントも、各座席に完備されています。
車内中央部にはトイレを完備。途中、休憩停車は2回ありますが、いざという時に嬉しい設備です。
トイレ入口付近には、セルフサービス式の紙おしぼりがあります。
車内ではWi-Fiサービスも提供されています。シートポケットに入っているリーフレットに従って設定します。
トランクに荷物を預けると、写真の「荷物引換券」が乗務員から渡されます。降車の際に必要となりますので、無くさないようにしましょう。
以上、明光バス「ホワイトビーチシャトル」の車内を紹介しました。夜行バスに必要な装備はひと通り揃っており、南紀白浜~横浜・東京・大宮間約12時間半の道のりを快適に過ごせるバスといえます。
今回は南紀白浜から埼玉の大宮まで移動しました。
やってきたのは、南紀地方の空の玄関口「南紀白浜空港」。今回の「ホワイトビーチシャトル」の旅は、なんと、この南紀白浜空港から始まります。
以前はリゾートホテルなどが点在する新湯崎が起終点でしたが、2019(平成31)年4月1日より南紀白浜空港への乗り入れを開始。空港の駐車場が無料であることを生かし、「パーク&バスライド」停留所としての機能も担うようになった結果、利便性が向上しました。
また、南紀白浜空港はビューポイントとしても有名。昼間であれば展望デッキから大規模テーマパーク「アドベンチャーワールド」や会員制リゾートホテル「エクシブ白浜」を見渡すことができます。
首都圏行き「ホワイトビーチシャトル」の南紀白浜空港発車時刻は19:16。東京行き飛行機の最終便はすでに出発していますが、ターミナルビル自体は19:20まで開いています。トイレや自動販売機もターミナルビル内にありますので、快適な環境でバスを待つことができます。なお、バスのりばは到着口から少し離れた場所にありますので、乗車の際は注意しましょう。
19:16定刻に南紀白浜空港を発車した「ホワイトビーチシャトル」は、白浜町内の新湯崎・白浜バスセンター・とれとれ市場前にて乗車扱いを行なったあと、隣の田辺市内へ。田辺市内の滝内・つぶり坂・田辺駅前・田辺市役所前・芳養(はや)駅前、隣町のみなべ町役場前にて乗車扱いを行なったバスは、みなべインターから阪和自動車道に入ります。
乗車扱いの停車はさらに続き、印南(いなみ)・御坊インター前・藤並駅東口・海南駅前・高速道和歌山と、高速道路の出入りを繰り返しながら和歌山県紀南地域の各バス停に細かく停車していきます。対象エリアも4市4町と広く、その沿線人口は約55万人を誇ります。
南紀白浜を発車した時点では閑散としていた車内も、高速道和歌山を発車した時点では定員(28名)の半分以上の座席が埋まっていました。明光バスの担当者にお伺いしたところ、現在は1便当たり平均20名前後のお客様が利用しており、その数はここ数年増加傾向とのこと。競合路線が殆どないことに加え、乗り換えなしで和歌山県紀南地方~首都圏を移動できる便利さが利用者に評価されているのではと感じました。
高速道和歌山での乗車扱いが終わったところで、乗務員による運行経路、注意事項、車内設備の案内が行われます。ポイントを押さえた分かりやすい説明が印象に残りました。
高速道和歌山を発車したバスは、阪和自動車道から名神高速道路~新名神高速道路~東名阪自動車道~伊勢湾岸自動車道~新東名高速道路~東名高速道路を経由して、横浜・新宿・池袋・さいたま大宮へと向かいます。
「ホワイトビーチシャトル」首都圏行きの途中休憩は、夜の2回のみとなっています。朝の休憩停車はありませんので、注意しましょう。
消灯前の休憩場所は、南紀白浜空港から2時間30分ほど走行した阪和自動車道紀ノ川サービスエリア。こちらでは21:50から20分間停車しました。
紀ノ川サービスエリアは、トイレや売店、コンビニのほか、売店、フードコートも完備している大きなサービスエリア。売店の品揃えも充実しており、みやげ物の購入も可能です。とはいえ、停車時間が20分と長くはありませんので、トイレや洗顔、買い物は早めに済ませましょう。
紀ノ川サービスエリアに停車する「ホワイトビーチシャトル」です。
バスのドア付近には、発車時刻を知らせる案内ボードが掲げられます。出発時刻は下車時に必ず確認しておきましょう。
紀ノ川サービスエリア発車時にバス車内は消灯。次の休憩場所到着まで、車内灯は消されたままとなります。
2回目の休憩は、紀ノ川サービスエリアから2時間ほど走行した名神高速道路草津パーキングエリアにて実施されます。定刻では24:00頃に到着しますが、こちらも停車時間は15~20分と短いです。広いパーキングエリアですので、洗顔や買い物は早めに済ませておきましょう。
本当は、草津パーキングエリアで「生八つ橋」を購入する予定でしたが、不覚にも紀ノ川サービスエリア発車後に寝てしまい、草津パーキングエリアでの休憩停車に気付きませんでした。目を覚ました時、バスはすでに草津パーキングエリアを発車しており、新名神高速道路を東へ向けて走行しているところでした。やってしまったか…と思いましたが、それだけシートの寝心地がよかったのでしょう。
なお、草津パーキングエリア発車後は、数か所のサービスエリアにて乗務員交代と車両点検のために停車しますが、乗客は目的地到着まで下車することができません。また、「ホワイトビーチシャトル」南紀白浜行きの途中休憩は首都圏行きとは異なり、消灯前と起床後の2回となっていますので注意が必要です。
翌朝、目を覚ますとバスは横浜市内を走行していました。
最初の降車停留所である横浜駅東口(YCAT)は降車客がいなかったために通過。JR各線・京急線・相鉄線・横浜市営地下鉄への乗り換えや、羽田空港・成田空港行きリムジンバスへの乗り換え、東京ディズニーランド行き高速バスへの乗り換えは、横浜駅東口(YCAT)で下車すると便利です。
その後、首都高速道路を1時間ほど走行し、06:11にバスはバスタ新宿(新宿駅南口)に到着します。JR各線・京王線・小田急線・東京メトロ丸ノ内線・副都心線・都営地下鉄新宿線への乗り換えは、こちらが便利。バスタ新宿では、約半数の乗客が下車していきました。
その後、池袋駅東口にて降車扱いのために停車したバスは、東池袋ランプから再び首都高速道路へ。30分ほど走行し、07:12にバスは定刻よりも早く大宮駅西口に到着します。JR各線、東武野田線(東武アーバンパークライン)、埼玉新都市交通ニューシャトルへの乗り換えは、こちらで下車すると便利です。
そして、雨が激しく降りしきる中、07:24にバスは終点の西武バス大宮営業所に到着しました。
バス停の向かいには、パーク&バスライド専用のコインパーキングが設置されています。マイカー利用の方は、こちらのコインパーキングを利用するとよいでしょう。
東京~紀伊田辺・白浜間をJRで移動する場合、必ず乗り継ぎが必要となります。
乗り継ぎ(新大阪で乗り換え)で移動する場合、片道普通運賃と新幹線特急料金(「のぞみ」指定席利用)、在来線特急料金の合計金額は17,300円です。(2019年10月現在)
また、東京~南紀白浜間はJALが直行便を運航しており、飛行機で移動する場合の運賃は33,100円です。(普通席普通運賃。2019年10月現在)
これに対して、「ホワイトビーチシャトル」は、大宮~田辺・白浜間が9,500円~12,800円、池袋・新宿~田辺・白浜間が8,900円~12,300円、横浜~田辺・白浜間が8,400円~11,800円です。
飛行機(JAL)と比較すると、特割運賃適用で「ホワイトビーチシャトル」の方が高くなる場合もありますが、JR乗り継ぎの8割以下(最安の場合6割以下)の運賃・料金で移動できること、そして何よりも乗り換えなしで寝ながら移動できる(=宿泊費が節約できる)ことから、見た目の金額以上に「ホワイトビーチシャトル」のコストパフォーマンスは高いといえるでしょう。
今回は平日の木曜日に利用しましたが、ゆったりとした1人掛けシートに、コンセント、Wi-Fi、個室風の通路カーテンといった充実の車内設備のおかげで、南紀白浜からさいたま大宮までの移動時間を快適に過ごすことができました。
この路線のセールスポイントは、「乗り換えなしで寝ている間に移動できる利便性の良さ」に尽きるのではないでしょうか。
リゾート地として有名な南紀白浜ですが、残念ながら交通の便は決して良くはありません。東京からの飛行機(直行便)が運航されてはいますが、便数が少ないばかりか、南紀白浜空港~白浜町内・田辺市内間のアクセスもあまり良くはありません。
また、JR乗り継ぎとなると、東京~南紀白浜間の所要時間は早く見積もっても5時間半~6時間以上かかるうえに、大きな荷物をもっての移動も大変。そして、なによりも、飛行機移動、JR乗り継ぎともに宿泊費がかかります。その点、夜行高速バス「ホワイトビーチシャトル」は、飛行機の普通運賃の半額以下、JR乗り継ぎの6割~8割以下の運賃で移動でき、乗り換えが不要、しかも夜行バスなので宿泊費が発生しないうえに、朝から行動することができます。
いわば、「ホワイトビーチシャトル」は、夜行バスのメリットを最大限に生かした路線であるといえましょう。
・乗り換えなしで楽に移動したい
・到着後、朝から行動を開始したい
・出来るだけ安く移動したい
・隣を気にせずにゆったりと快適に移動したい
という方に、「ホワイトビーチシャトル」は最適なバスだと思います。
先程ご紹介した「バス車体の外観上の7つの違い」の答え合わせです。
≪その1≫ 正面の行灯表示
正面の行灯表示が違います。
紫色の車両(602号車)が「明光バス」と日本語表記になっているのに対し、藍色の車両(691号車)は「MEIKO BUS」とローマ字表記になっています。
≪その2≫ 側面行先表示のデザイン
側面行先表示のデザインが違います。
紫色の車両(602号車)が単なる行先表示になっているのに対し、藍色の車両(691号車)はオリジナルデザインを採用したものになっています。
≪その3≫ 側面の飾り(ピラー)
側面の飾り(ピラー)が違います。
紫色の車両(602号車)が側窓最上部まで伸びているのに対し、藍色の車両(691号車)は側窓の下で留まっています。
≪その4≫ 側窓の色(スモーク)
側窓の色(スモーク)が違います。
紫色の車両(602号車)が薄いスモークを採用しているのに対し、藍色の車両(691号車)は濃いスモークを採用しています。
≪その5≫ 側面の帯
側窓の帯の切り込みとデザインが違います。
紫色の車両(602号車)が側面の帯の切り込みを垂直にしているのに対し、藍色の車両(691号車)は側面の帯の切り込みが斜めになっているほか、黄緑のラインが入っています。
≪その6≫ 側面のパンダ(わかぱん)の左目とほっぺ
側面のパンダ(わかぱん)の左目とほっぺに注目。
紫色の車両(602号車)は、側面のパンダ(わかぱん)の左目が開いていますが、藍色の車両(691号車)は側面のパンダ(わかぱん)の左目がウィンクしています。
そして、温泉につかって気持ちよくなっているのか、藍色の車両(691号車)のパンダは、ほっぺが少し赤くなっています。
≪その7≫ リアタイヤ後部の社名表記
リアタイヤ後部の社名表記が違います。
紫色の車両(602号車)が「明光バス」になっているのに対し、藍色の車両(691号車)は「わかやま 南紀白浜 明光バス」になっています。
いかがでしょうか。車体ごとに細かな相違点があるのも珍しいといえば珍しいですが、このような違いをみつけてみると、普段とは違った楽しさが発見できるのではないでしょうか。
(須田浩司)