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昼夜問わず毎日200本以上の高速バスが運行されている京阪神~東京間。しかしながら、大阪地区に夜遅くまで滞在できる高速バスとなると、便が限られてきます。せっかく大阪を訪れたからには、できることなら日が変わる直前まで楽しみたいものです。
そこで今回私が乗車したのは、24時少し前に大阪を発車する東京行き「グラン中央ドリーム140号」。
JR関西本線(大和路線)のJR難波駅に直結する「JRなんば」(湊町バスターミナル)が始発となります。JRなんば(湊町バスターミナル)の開業当初は、関西国際空港へのアクセス拠点として機能していましたが、現在は全国各地へ向かう高速バスが発着する、関西有数の高速バスターミナルとして機能しています。
JRなんば(湊町バスターミナル)へのアクセス方法は、こちらの記事を参考にするとよいでしょう。
JR難波駅からは、案内表示に沿ってエスカレーターで2階へ移動します。
エスカレーターで2階へ上がった先には、出発案内表示があります。事前に乗り場を確認しておきましょう。「グラン中央ドリーム140号」は、5番のりばから発車します。
各のりばにも発車時刻案内表示が設置されています。こちらも乗車前に確認しておきましょう。
JR夜行高速バス「ドリーム号」大阪~東京線は、1969(昭和44)年6月の運行開始からまもなく50周年を迎える「老舗中の老舗」路線ですが、「グランドリーム号」は2014(平成26)年10月より運行を開始した3列独立シート車になります。新開発のクレイドルシートをはじめとする充実した車内設備が特長です。
今回私が乗車した「グラン中央ドリーム140号」は、原則として平日に運行されます。週末や繁忙期には格安便「青春エコ中央ドリーム340号」が同時刻にて運行されるほか、ほぼ同じ時間帯に大阪駅始発の「プレミアムドリーム338号」も運行されます。
運行は全区間ワンマン(1人乗務)ですが、途中の中央自動車道小黒川パーキングエリアが乗務員交代地点になっており、大阪~小黒川間は西日本JRバスの乗務員が、小黒川~東京間はJRバス関東の乗務員がそれぞれ運行を担当します。
発車の10分前にはバスがのりばに入線し、乗車改札が始まります。
今回乗車したのは、西日本JRバスのいすゞガーラHD。
共同運行するJRバス関東の車両も、車体のデザインやカラーリングは同じですが、車両メーカーやつばめマークの意匠など、若干の相違点があります。(JRバス関東は日野セレガHDを採用。)
では、早速乗車してみましょう。
車内は、幅広の新型クレイドルシートが並びます。
最後部まで一人掛けになっているのと、通路カーテンが全席設置されているのが特長で、プライベートを重視したい方にとって、通路カーテン全席設置はありがたいと感じるはずです。車内後方6席は女性専用席になっています。
この車両の最大の売りである、「グランドリーム号」用に開発された新型クレイドルシートです。シート幅は46.5cm、リクライニング角度は138°を誇ります。
クレイドル(cradle)とは、「ゆりかご」を意味する英語。ゆりかごのように包み込まれるような座り心地が特長となっています。背もたれは色の異なる部分でクッションの固さを変えているほか、シート生地には抗菌防臭加工も施されています。
実際にシートを倒してみます。
一般的なシートのリクライニングは、背もたれが後方に倒れていく構造ですが、この新型クレイドルシートは、座面前部がシートのリクライニングと同期して上に傾く構造になっています。さらに、レッグレストもシートのリクライニングと連動して持ち上がり脚全体を支え、リラックスした姿勢をキープできます。
レッグレストとフットレストをセットした状態です。足を前方座席下にまで放り出すことができるため、ゆったりと足を伸ばせます。
各座席にはコンセントを完備。携帯電話やスマートフォンの充電に便利です。
車内中央部にはトイレを完備。途中、休憩停車は深夜と早朝に各1回ありますが、万が一という時に嬉しい設備です。
読書灯とエアコンダクトです。読書灯はそれなりに明るいため、消灯後の長時間使用は避けた方がよさそうです。
各座席にはブランケットが備えられているほか、シートポケットには使い捨てスリッパが入っています。
車内ではWi-Fiサービスが提供されています。利用の際はメールアドレスの登録が必要ですが、1回の接続につき180分利用できます。(接続回数の制限はありません。)
以上、「グラン中央ドリーム号」の車内を紹介しましたが、新型クレイドルシートはもとより、昨今の乗客からのニーズに応えた充実の車内設備が印象に残りました。大阪~東京間10時間あまりの道のりも、この車内設備であれば快適に過ごせそうです。
23:20定刻にJRなんば(湊町バスターミナル)を発車した「グラン中央ドリーム140号」は、四つ橋筋を北上し、大阪駅JR高速バスターミナルへ向かいます。JR線・阪急電車・阪神電車から乗り換えて利用される方は、こちらからの乗車が便利です。
待合室、乗車券カウンターも完備されています。
道路が空いていたということもあり、JRなんば(湊町バスターミナル)からは15分ほどで到着。到着後、乗車改札が行われます。
この「グラン中央ドリーム140号」は、大阪駅高速バスターミナルから発車する最終バスになります。
23:50定刻に大阪駅JR高速バスターミナルを発車した「グラン中央ドリーム140号」。発車後、乗務員からの自己紹介と各種案内がマイクを通じて行われた後、自動音声放送による案内が行われ、その後、00:05に車内は消灯されました。
バスはその間、新御堂筋を北上し、吹田インターから名神高速道路に入ります。
この日は、平日にもかかわらず、約7割の乗車率でした。乗車数日前までは空席が多数あったのですが、出発直前にそれなりの数の座席が埋まるあたり、東阪間夜行バスの利用者数の多さと「ドリーム号」の知名度の高さを改めて実感しました。
吹田インターから名神高速道路に入ったバスは、名神高速道路を東へひた走り、その後、東名高速道路~中央自動車道~首都高速道路を経由して東京へと向かいます。
「グラン中央ドリーム140号」の途中休憩は、消灯前と起床後の2回のみです。
1回目の休憩場所は、大阪駅JR高速バスターミナルから1時間40分ほど走行した、滋賀県の多賀サービスエリア。こちらでは1:27から1:50までの23分間停車しました。
トイレや売店、コンビニのほか、フードコートも完備している大きなサービスエリアです。停車時間が約20分ありますので、みやげ物の購入も可能です。
とはいえ、「グランドリーム号」用車両で運行される便は、通路カーテンを装備しており乗客の睡眠の妨げになることから、乗務員による発車時の人数確認を行いません。発車時刻になるとバスは発車しますので、出発時刻はドア付近に掲げられる案内表示にて必ず確認しましょう。因みに私は、トイレを済ませたあと、売店にてみやげ物を購入してバスへ戻りました。
多賀サービスエリアに停車する「グラン中央ドリーム140号」です。
トランクルームには、西日本JRバス公式マスコットキャラクター「にしばくん。」がプリントされた30周年ステッカーが貼られていました。
多賀サービスエリアを発車したバスは、小牧ジャンクションまで名神高速道路と東名高速道路をひた走り、小牧ジャンクションからは中央自動車道へ進路を変えます。
2回目の休憩は、多賀サービスエリア発車後5時間半経過した山梨県の中央自動車道談合坂パーキングエリアにて実施されます。定刻では7:15頃に到着し、15分ほど停車しますが…実は多賀サービス発車後、新型クレイドルシートの寝心地がよすぎて爆睡してしまい、不覚にも談合坂サービスエリアでの休憩停車に気付きませんでした。このため、談合坂サービスエリアで降りることができなかったのです。
目を覚ました時、バスはすでに談合坂サービスエリアを発車しており、圏央道に接続する八王子ジャンクションを通過するところでした。
私のしたことが…と思いましたが、それだけ新型クレイドルシートの寝心地がよかったのでしょう。
この先、「グラン中央ドリーム140号」は中央自動車道沿線バス停(中央道八王子・中央道日野・谷保駅・中央道府中・中央道深大寺・中央道三鷹)に停車した後、バスタ新宿、そして終点の東京駅日本橋口へと向かいます。但し、この先は降車客がいなければ通過扱いになりますので、降りる際は降車ボタンで知らせましょう。
この日は、中央道府中・中央道深大寺・中央道三鷹・バスタ新宿で降車客がいたために停車しましたが、そのほかの停留所は通過となりました。
都心に近づくにつれ、住宅が増えていきます。調布市に入ると、左手に味の素スタジアムが見えてきます。
そして、首都高に入ると、遠くに新宿副都心の高層ビル群が見えてきます。
渋滞気味の首都高速道路を初台ランプで降りたバスは、8:55にバスタ新宿に到着。こちらでは半分以上の乗客が下車していきました。JR線や京王線、小田急線、西武新宿線、都営地下鉄(新宿線・大江戸線)、東京メトロ新都心線に乗り換えの方は、こちらでの下車が便利です。
その後、都内を30分ほど走行したバスは、9:23に終点の東京駅日本橋口に到着しました。
JR新幹線・在来線や地下鉄線各線(東京メトロ・都営地下鉄)へ乗り換えの方は、こちらでの下車が便利です。
大阪~東京間をJR新幹線で移動する場合、片道普通運賃と新幹線特急料金(「のぞみ」指定席利用)の合計金額は14,450円となります。(いずれも1月27日現在、バス比較なび調べ)
また、大阪(伊丹・関西)~東京(羽田)間を飛行機で移動する場合、ANAは11,150円~27,220円、JALは11,150円~25,920円、SFJは11,320円~23,920円となります。(いずれも2019年2月出発で、最安運賃は事前購入割引運賃。各社公式サイト調べ)
LCCを利用した場合では、「peach」が基本パッケージ「バリューピーチ」適用で5,690円~21,990円、「Jetstar」が通常期運賃適用で3,470円~13,490円となります。
そんな中、「グランドリーム号」は、大阪~東京間の普通運賃が6,000円~11,000円、乗車日の出発前までに購入できる特割運賃が5,800円~10,800円となっています。さらに、JR高速バスの予約サイト「高速バスネット」でクレジット決済すると、2%引の「ネット割」が適用されるほか、利用回数に応じて割引率が上がる利用回数割引も適用されることで最大(8回以上の利用)で10%引になるため、特割運賃・ネット割・利用回数割引を併用すれば、最安5,100円前後の運賃で「グランドリーム号」に乗車できるのです。
LCCと比較すると、利用日によっては「グランドリーム号」の方が高くなることもありますが、JR新幹線や大手航空会社の飛行機と比較すると、半額以下の運賃で移動でき、しかもクレイドルシートをはじめとする快適装備の車両で眠りながら移動できることから、各種割引運賃を上手く使えば「グランドリーム号」のコストパフォーマンスは相当高いといえるでしょう。
なお、週末や繁忙期は混み合いますので、早めのご予約・ご購入をおすすめします。
今回は、JRなんば(湊町バスターミナル)から東京駅までの全区間を利用しましたが、平日の木曜日に利用したということもあり、特割運賃・ネット割・利用回数割引を併用して片道5,890円で移動することができました。
バス自体も、包み込まれるような座り心地の新型クレイドルシートや充実した車内設備、そして通路カーテンのおかげで、1回目の休憩停車後は翌朝まで目を覚ますことなく、ぐっすり眠ることができました。
大阪を夜遅く出発する点や中央自動車道沿線に停車する点も見逃せません。大阪に夜遅くまで滞在したい方や、三鷹・調布・府中・日野・八王子地区で乗下車したい方にとっては、かなり使えるバスなのではないでしょうか。中央道日野では多摩都市モノレール甲州街道駅へ徒歩で移動できるほか、谷保駅ではJR南武線で立川方面や武蔵溝ノ口・川崎方面へ移動することも可能です。
・大阪に夜遅くまで滞在したい
・中央自動車道沿線から利用したい
・新型クレイドルシートシでぐっすり寝ながら移動したい
・安心で実績のあるバスで移動したい
という方に、「グラン中央ドリーム号」は最適なバスだと思います。
(須田浩司)