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丸みをもった外観が特徴の「モノコックバス」。1970年代まで主流だったこのバスも、今やほとんど見かけなくなりました。
そんな中、旭川市から北へ約50kmに位置する士別市の士別軌道では、全国でも珍しいモノコックバスが1台活躍しています。
そこで今回は、北の大地で唯一活躍するモノコックバスをご紹介。乗車の模様もレポートします。
そもそも、モノコックバスとはどんなバスなのでしょうか。
モノコックバスとは、「モノコック構造」と呼ばれる、フレームの替わりに鉄板などの外板だけで強度を得られるように設計されたバスのことです。
より高い強度を得るためにボディに丸みを持たせてあるのにくわえ、鉄板の張力を高めるために「リベット」と呼ばれるピン状のものが数多く打たれているのが特徴です。
これに対して、現在のバスは、鉄骨で車体の骨格(スケルトン)を作り、そこに外板となる鉄板を張っていく「スケルトン構造」が主流となっています。
モノコックバスは、外板の厚みとリベットが多用されていたため、軽量化に限界があり、窓や扉を大きく取ることができませんでした。そのため、モノコックバスは徐々に衰退していきます。
現在、日本国内で路線バスとして活躍するモノコックバスは、士別軌道に在籍する1台を含め、わずか4台のみです。
うち2台は沖縄県の沖縄バスと東洋バスが、残りの1台は愛媛県の伊予鉄南予バスが保有していますが、どちらも不定期運行扱いになっているため、平日を含めて定期で運行している「モノコックバス」は、全国どこを探しても士別軌道の1台のみです。
士別市に本社を置く士別軌道は、かつてバス事業にくわえ軌道(軽便鉄道)事業や貨物運送事業も行っていましたが、現在は士別市およびその近郊で路線バス事業や貸切バス事業を行うバス専業の会社となっています。
士別軌道に在籍するモノコックバスは、1982年式の日野自動車製「K-RC3101P」というバスです。もともとは、となり町の上川郡和寒町が自家用車として所有していたもので、1998年に士別軌道へ移籍してきました。
移籍後の十数年間は同社のオリジナルカラーをまとっていましたが、2014年に旧塗装の復刻車両へと外観が変更され、現在に至っています。
2014年に復刻塗装車として外観が変更されてからは、春から秋にかけての平日朝1便(「中多寄線」30線西3号7:50発→士別8:15着)が運行されていましたが、古いバスを愛するファンからの要望があったことから、2018年より運行便を期間限定で増やしています。
モノコックバス運行便として新たに設定されたのは、「中多寄線」の士別9:40発→風連行きと、折り返しの風連10:40発→士別行きの2便。この知らせを聞いた私は、久しぶりにモノコックバスと対面するために士別へと向かいました。
やってきたのは、JR宗谷本線士別駅から線路沿いに北へ数百メートル歩いたところに位置する士別軌道の本社。こぢんまりとした建物が特徴で、敷地内には車庫が併設されています。
到着すると、これから乗車する予定の「モノコックバス」(日野K-RC3101P)が停車していました。
本社社屋の1階は待合室になっており、一角には回数券や定期券が購入できる窓口もあります。昔懐かしい写真も飾られていました。
今回私が乗車したのは、士別9:40発の風連行きとその折り返し便。発車まで時間が空いていたことから、許可をいただいた上で「モノコックバス」を見学させていただきました。
昔活躍していたバスならではの「愛らしさ」と「懐かしさ」が感じられる外観です。
士別軌道の路線バスは、市内循環線を除き、本社前から乗車できます。
発車前の車内です。リベット打ちの内装に丸型の室内灯と、「昔のバス」ならではの独特な雰囲気を醸し出しています。
降車ボタンも、昔懐かしいタイプのものが取り付けられています。
9:40定刻にバスは士別軌道本社前を発車。発車直後は私を含めて数名のみの乗車でしたが、士別駅前では10名前後の乗客が乗車し、一気に賑やかになります。知り合い同士が多いのか、至るところで世間話も。ローカル路線バスならではの光景です。
バスは士別市街を抜けると、一気にのどかな風景へ。車内の空気もゆったりと流れています。
士別市多寄の坂道を上ると、士別市が運営する日帰り温泉施設「日向温泉」に到着します。
士別駅前から乗車してきた乗客のほとんどはこちらで下車。途中下車して温泉に浸かりたい気分でしたが、ここは我慢して終点の風連まで向かいます。ちなみに、日向温泉にて乗車・降車されるお客様は、路線バスの運賃が無料になるとのことです。
日向温泉からの景色です。手前の桜の木には、まだ花が付いていました。
日向温泉からは、上って来た坂道を下って左折。田園風景を眺めながら進むこと約25分で、バスは終点の風連駅前に到着します。もともとは風連町と呼ばれていたこの地区は、2006年の合併を経て、現在は名寄市の一部になっています。もち米の産地として知られ、その生産量は北海道一です。
終点に到着したバスは、そのまま折り返し便の始発地である風連病院前へ。折り返し便発車時刻の10:40まで、しばし待機します。
風連病院前からは、来た道を士別へ向けて走ります。帰りの便も、日向温泉で10名弱が乗車。全員が士別まで乗車とのことで、温泉施設への足として地元住民に広く利用されているようです。
士別~風連間を往復したモノコックバスは、11:34に士別駅前に到着。日向温泉からの乗客を全員降ろし、約2時間ぶりに士別軌道本社に戻ってきました。
独特の走行音・エンジン音と、時が止まったかのようなのどかな風景、そして至るところで展開される住民同士の会話……これはまさしく、古き良き「ローカル路線バスの光景」そのものではないでしょうか。
そんな、どこか懐かしい、ノスタルジックな雰囲気が味わえる士別軌道の「モノコックバス」。北海道旅行の思い出作りにお勧めです。
モノコックバスに往復乗車すると、記念の乗車証明書がもらえます。
そして、この乗車証明書を窓口に提示すると、通常600円で販売されている「モノコックバス」のオリジナルクリアファイルが、半額の300円で購入できます。(但し、ひとり5枚まで)
このほかにも、窓口ではオリジナルポストカード(4種類)や、オリジナルキーホルダー・ストラップも販売されています。乗車の記念におひとついかがですか?
先程ご紹介した通り、士別軌道の「モノコックバス」は、春から秋にかけての平日朝1便(「中多寄線」30線西3号7:50発→士別8:15着)と、期間限定便の士別9:40発→風連行き、そして折り返しの風連10:40発→士別行きの計3便が運行されています。
期間限定便が運行されるのは、2018年6月30日までと、2018年9月1日~10月14日までの期間。バスに冷房が設けられていないうえに、盆地気候である士別の夏はとくに盛夏の時期にとても暑くなることから、7月と8月は増発便運行期間の対象外になっています。注意しましょう。
詳しくは、士別軌道の公式サイトを確認してください。
士別軌道公式サイト
最後に、士別市までのアクセス方法について解説します。
札幌圏からだと、北海道中央バスと道北バスが運行する高速バス「高速なよろ号」が士別まで直行しています。但し、札幌からの始発便に乗車したとしても、士別軌道「モノコックバス」の運行時刻には間に合いませんので、士別もしくは名寄で前泊する必要があります。
もしくは、「高速あさひかわ号」(北海道中央バス・道北バス・ジェイ・アール北海道バス)や「たいせつライナー」(北都交通・旭川電気軌道)を利用して旭川まで行き、前泊して、翌日のJR宗谷線始発列車(稚内行き普通列車)で士別まで移動するという方法もあります。
いずれにしろ、モノコックバスに乗車するのであれば、旭川、士別、名寄のいずれかで前泊するのが賢明です。
(須田浩司)