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ざっくり、こんな高速バス
「パンダ号」は、青森県弘前市に本社を置く弘南バスが単独で運行する夜行高速バス。同社は帰省バスの時代から長年にわたって長距離バス運行の実績があり、安心して利用できます。
「パンダ号」は上りと下りでそれぞれ1日3便運行しています。上野駅前からは20:30発と22:00発の弘前経由青森駅前行き。ただし別途「東京・函館きっぷ」を予約すると函館港フェリーターミナルまで乗車が可能です。新宿・東京駅からはバスタ新宿を21:30発、弘前経由五所川原駅行きの運行です。
上り便は、青森駅前から20:00発と22:20発の弘前経由上野駅行き、五所川原駅前から21:30発の東京駅・新宿駅行きが運行しています。
上野発着の「パンダ号」は基本的に下りの20:30発と22:00発、上りの20:00発と22:20発の各便、男女兼用の1号車と女性専用の2号車の2台体制で運行しています。女性専用車の運行は、安心して利用できるという点で、女性にとってはありがたいサービスなのではないでしょうか。
車内は、グレーのシートモケットが目立つ4列シートが並びます。定員は補助席を除いて45名ですが、最前部4席と最後部中央席は販売されないため、実際の乗車定員は40名となります。
なお、トイレは設置されていませんので、バス発車前または途中の開放休憩時に済ませる必要があります。
シートは、貸切バスなどでよくみられる標準タイプのシートです。リクライニングの角度はそれなりに確保されています。
前席下は空間になっており、足を伸ばすことができます。これなら多少工夫すれば、それなりに寝られそうです。
各座席にはテーブルが付いています。飲食やちょっとした作業などに重宝します。ブランケットも装備されています。車内備品のため、持ち帰ることはできません。
乗車前までは期待していませんでしたが、この車両には各座席に充電用USBポートが設置されていました。スマートフォンのバッテリー残量が少なかったこともあり、これには大変助かりました。
トランクに荷物を預けると、乗務員から荷物引換札が渡されます。降車の際に必要ですので、無くさないよう大切に保管しておきましょう。
今回乗車する青森行き「パンダ号」の旅の始まりは、上野駅前の東北急行バスのりばから。少しわかりにくい場所ですので、簡単にアクセス方法をご紹介します。
上野駅前の東北急行バスのりばへは、JR上野駅広小路口が一番便利です。
JR上野駅広小路口を出ましたら、目の前の横断歩道を渡り、左に折れます。
上野マルイを過ぎましたら、道なりに歩き右折します。
角にはセブンイレブンがあります。バスのりばから一番近いコンビニですので、乗車前の飲食物の購入は、こちらで済ませるとよいでしょう。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅を利用した場合、4番出口から出るとこちらに着きます。
セブンイレブンから数十m直進すると、もう一つ歩道橋があり、それを超えたところに東北急行バスのバス停が見えてきます。「パンダ号」はこちらから発車します。「パンダ号」の発車時刻もきちんと掲示されています。
詳しいアクセス方法は、以下リンクの「C:上野駅前 高速バス乗り場」を参考にするとよいでしょう。
私が乗車したのは、上野駅前20:30発の2便。今回は「東京・函館きっぷ」で青森港フェリーターミナルまで乗車したのち、津軽海峡フェリーで函館まで行くことにしました。
20:20、2台の「パンダ号」が入線し、乗車改札が行われます。
青森港まで乗車する人には、乗務員から青森~函館間フェリーの乗船券引換証と乗船申込書が渡されます。到着後、青森港フェリーターミナルにて必要事項を記入して乗船手続きを行います。
なお、終点の青森港フェリーターミナルまで乗車できるのは、事前に企画きっぷ「東京・函館きっぷ」を予約・購入した場合のみ。それ以外の方は、青森駅前までの乗車となりますので注意しましょう。
20:30定刻に上野駅前を発車した「パンダ号」は、不忍通りから尾久橋通りを経由して、首都高速道路扇大橋ランプをめざします。その間、自動音声と乗務員の肉声による各種案内が行われ、20:35に車内は消灯。私にとっては早すぎる消灯ですが、こればかりは仕方がありません。
しばらくはスマートフォンで音楽を聴いていましたが、私なりの「パンダ号」で快適に過ごすための攻略法を実行してシートを倒すと、やがて眠気が襲ってきました。
そして、東北自動車道浦和本線料金所を通過してからは寝ていたようで、後でその先の記憶がないことに気付いたのでありました。
東北自動車道浦和本線料金所を通過した「パンダ号」は、東北自動車道を弘前・青森へ向けてひたすら北上しますが、約700km離れた青森まではまだまだ遠い道のりです。
なお、私なりの「パンダ号」攻略法は、のちほどご紹介することにします。
「パンダ号」の途中休憩は、全部で3回です。
1回目の休憩は、栃木県の佐野サービスエリア。こちらでは21:40から20分間停車しました。
売店やレストランなどの施設が充実していることで有名なサービスエリアですが、佐野サービスエリア下り線の売店といえば、私としてはやはりこちらが気になります。
佐野サービスエリア下り線売店の一角に設けられている「おもちゃコーナー」です。
プラモデルやトミカ・バスコレクションなどが所狭しと並べられており、長時間居ても飽きません。鉄道模型やバスコレクションなどを製造・販売しているトミーテックの本社が栃木県にあるからなのでしょうが、おもちゃコーナーが充実しているサービスエリアの売店は非常に珍しいのではないでしょうか。時間を忘れてバスに乗り遅れないよう、気を付けたいものです。
トイレや買い物などを済ませてバスに戻った私は、再び就寝態勢に。次に目が覚めたのは、2回目の休憩場所である福島県の国見サービスエリアに到着した時でした。こちらでは00:28から15分間停車しました。
国見サービスエリアは大規模な改修工事中で、トイレ・売店ともに仮設状態で営業していました。
こちらでもトイレを済ませて車内に戻り3度目の就寝態勢へ。国見サービスエリアを発車後、夢の中へと吸い込まれていきます。
3回目の休憩場所は、岩手県の紫波サービスエリア。こちらでは02:58から17分間停車しました。
ここまでは細切れの睡眠時間ではあるものの、思っていたよりは寝ている気がします。ですが、できることならもう少し寝ていたいもの。こちらでトイレを済ませてから、紫波サービスエリア発車後に再度寝ることにしました。
03:15に紫波サービスエリアを発車した「パンダ号」は、東北自動車道をさらに北上。2時間弱走行し、大鰐弘前インターを通過したところで、室内灯が灯され起床となります。
05:30前にバスは最初の降車停留所である弘前バスターミナルに到着。半数以上の乗客が下車していきました。併せて、こちらでは時間調整も兼ねて10分間のトイレ休憩となりました。
その後、弘前バスターミナルを発車した「パンダ号」は、一般道を青森へ向けて北上し、約1時間後には青森駅前9番のりばに到着。こちらで残りの乗客を降ろし、車内は私を含めて僅か数名のみとなりました。
青森駅前から青森ベイブリッジを渡ると、青森港フェリーターミナルはすぐそこです。
そして、定刻よりもかなり早く、バスは終点の青森港フェリーターミナルに到着。約10時間に及んだ「パンダ号」の旅は、無事に幕を閉じたのでありました。
今回私は、高速バスを下車後、青森港から津軽海峡フェリーで津軽海峡を渡り、函館港へと向かいました。
「パンダ号」の到着が定刻であれば、青森港10:00出港の「ブルーハピネス」が乗り継ぎ指定の便なのですが、この日は予定よりもかなり早く到着したため、1便早い青森港07:40出港の「ブルードルフィン」に乗り継ぐことができました。
「ブルードルフィン」の船内は広々としたエントランスに、オートレストランコーナー、プロムナード、シャワールームなど、充実した設備が特徴。2等船室に該当する「スタンダードルーム」も、広々としていて快適でした。
東京~青森間の高速バスの場合、シートや車内設備などにより異なりますが、バス比較なび調べでは片道運賃が3,800円~11,000円と様々です(2019年9月現在)。
そんな中、弘南バス「パンダ号」は、最安で片道3,800円と、競合路線と比較して格安なのが特長。
また、新幹線「はやぶさ」の東京~青森間の片道が17,350円(普通運賃+新幹線特急料金)ですので、4列シートトイレなしとはいえ、繁忙期でも新幹線の約半額、閑散期で新幹線の約4分の1で移動できることを考えると、「パンダ号」の安い運賃が魅力的に映る方も少なくないのでは。
なお、週末や繁忙期は混み合いますので、利用する際は早めのご予約をおすすめします。
また、今回私が利用した「東京・函館きっぷ」は、「パンダ号」上野~青森間片道普通運賃プラス2,000円の金額で購入することができます。
事前予約制となっており、予約は電話もしくはインターネット(発車オーライネット)で受け付けています。
くわしくは、弘南バス公式サイトにてご確認をお願いします。
多くの夜行バスに乗車してきましたが、私自身、4列トイレなしの夜行高速バスに乗車するのはほぼ初めてだっただけに、乗車する前はかなり不安でした。しかし、乗車前の健康管理、トイレの調整などを行なったこと、さらには、今回乗車した便が比較的空いており、隣の座席が空席ということもあって、思っていたよりも快適に過ごすことができました。主に次の3点を準備して実行しました。
ネックピローとは、首の周りにつけるU字型の枕のこと。長時間移動に欠かせない、安眠グッズのひとつです。「パンダ号」乗車にあたっては、ネックピローを適度な硬さに膨らませて寝た結果、首に負担がかからずに済みました。
「パンダ号」にはレッグレストやフットレストは装備されていません。長時間移動するだけに、できれば靴を脱いでくつろぎたいもの。そこで役に立つのが、使い捨てスリッパまたは携帯スリッパです。
「パンダ号」乗車にあたっては、他の夜行バスで乗車した際に持ち帰った使い捨てスリッパを事前に準備して活用。前方座席の下が空間になっていたこともあり、足を伸ばしてくつろぐことができました。
「パンダ号」の車内にはトイレが設置されていません。途中の開放休憩はありますが、休憩と休憩の間の約2時間~2時間半はトイレへ行くことができません。その間に、もし腹痛などになったら大変なことです。緊急の場合は、最寄りのサービスエリアに停車してくれますが、それでも後ろめたさを感じずにはいられません。
このようなことにならないよう、熱中症にならない範囲内で水分補給をコントロールする(水分を取り過ぎない)、乗車前の脂っこい食事(消化の良くない食事)を避ける、乗車前に必ずトイレを済ませておく、あまり疲れ過ぎないなど、乗車前の健康管理に気を使っていました。
このほかにも、腰当てクッションを準備する、アイマスクを活用するなど、様々な方法がありますが、自分に合った攻略法なり夜行バス快眠法を準備しておくと良いかと思います。
先述の通り、4列シートトイレなし車両での運行なのでかなり不安でしたが、途中の3回の休憩と私なりの「パンダ号」の攻略法などのおかげで、約10時間の夜行バスの旅を無事に終えることができました。
この路線のセールスポイントは、やはり「格安な運賃」だと思います。上野~弘前・青森間最安3,800円、上野~函館間最安5,800円という運賃は、安さを追い求める利用者にとって魅力であることに間違いないでしょう。
少しでも安く移動したい、サービスエリアでの休憩や買い物を楽しみたい、という方に「パンダ号」は最適なバスだと思います。
(須田浩司)