旭川電気軌道の3軸バス・1963年式三菱ふそうMR430

5月12日に大阪で開催されたぽると出版主催の「2023バステクフォーラム」は1,200人近い来場者を得たが、そこで大きな注目を浴びたのが、北海道から参加した旭川電気軌道の3軸バス、1963年式三菱ふそうMR430であった。このバスは1978年に引退し、以来40数年を、農家の倉庫を経てバス愛好家による保存車として生きながらえてきたが、2021年に元の持ち主である旭川電気軌道に引き取られた。その時点の姿は廃車体同然だったが、創業100周年を数年後に控えた同社では、このバスをメモリアルとして保存する目的でレストアに着手、その過程で営業車として復活させる方針に変わり、より完璧なレストアが目指された。

レストアは一部骨格を含めたボデーの再生、道内に残る廃車体からの移植も含めた部品調達、また小物は3Dプリンターで新規製作するなど、旭川電気軌道傘下の整備会社AASの熟練技術者の地道な努力で2022年秋に完成した。

今回のバステク出展は、復活した美しい姿をより多くのバス関係者に見てほしいという旭川電気軌道の意思によるもので、「最初で最後」と言われる道外出張が実現した。ちなみに移動は小樽~京都舞鶴間がフェリー、そのほかが一般道の自走であった。

さて、かつて愛好家も保存に乗り出したこのバスの最大の特徴は「3軸バス」という点にある。現代でも2階建てバスは「前1軸・後2軸」の3軸だが、このMR430は「前2軸・後1軸」という国産バスでは特異なレイアウトを持つ。これは定員110人というラッシュ時の大量輸送を目的に、重量配分や機動性などを踏まえて前2軸としたもの。現代の国産連節バスの定員が110人程度だから、シート配置こそ違え、単車で連節バス並の輸送力を備えていたことがわかる。

なお旭川電気軌道ではこのバスを貸切で登録したが、一般の貸切には使用せず、その特徴を活かせる特定のツアーに使用する方針のようだ。

旭川電気軌道の3軸バス

5月11日、長旅の前半を終えて、大阪・舞洲のバステク会場に進入する旭川電気軌道の3軸バス。なお3軸バスは旭川電気軌道が1968年に吸収合併した旭川バスが新車採用したもので、当時の観光バスのような斜めのウインドーは旭川バス独自の仕様である。

5月12日、バステク会場で一番人気を獲得した3軸バス。ボデーは富山の呉羽自動車工業(現三菱ふそうバス製造)製で、曲線の強いリヤスタイルが特徴。ナンバープレートは新車当時に合わせた希望番号。


西武バスの1997年式日産ディーゼルKC-UA460HSN

2022年12月、西武バスは1997年式の路線車をレストアして自社イベントでお披露目した。このバスは2003年まで同社の主力として新造された富士重工製日産ディーゼル車の1台で、都内の一部路線に投入されていた3扉仕様である。西武バス引退後に西武グループの近江鉄道に移籍したが、近江鉄道退役を機に西武バスに戻ったもので、西武バスでは貸切登録し、愛好家などを対象にしたツアーに使用する。レストアに際しては九州の西鉄車体技術で入念な作業が行われた。

同型のボデーを持つ3扉車はほかに、関東バスが1995年式日産ディーゼルU-UA440HSNを動態保存している。関東バスの3扉車は1964年暮に日本初の3扉ワンマンバスとして導入され、以来1995年まで同社の標準的仕様として約1,000台が導入された。保存車は排出ガス対策を行ったうえで28年にわたり在籍し、近年まで路線でも稼働していた。西武バスのレストア車とは路線域が接していたが、今年5月には路線現役時を彷彿とさせる、両車合同のツアーが行われた。

なおこれら2車は、シャーシーとエンジンが2011年にバス事業から撤退した日産ディーゼル(現UDトラックス)製、ボデーは2003年に製造を終えた富士重工(現SUBARU)製であり、両社のバス事業のメモリアルとしても重要な存在だ。

西武バスのレストア車、1997年式日産ディーゼルUA

所沢登録のナンバーは新車時代の「練馬22か7071」に合わせたもの。当時は大泉学園・吉祥寺・保谷など都内の一部路線で稼働し、通常は前乗り・中降り。後扉は主要停留所や終点の降車に使用した。

関東バスの3008号、1995年式日産ディーゼルUA

日本の3扉バスの元祖・関東バスが新車から保有する車両で、吉祥寺・三鷹などを拠点に稼働、2011年からはメモリアル車として動態保存されている。3扉のうち中扉は終点の降車で使用し、通常は前乗り・後降りだった。


四国交通の1966年式いすゞBXD30

一度引退したバスを観光資源として復活させた例は、1976年の東海バスのボンネットバス「伊豆の踊子号」が最初と思われる。これもすでに半世紀近い歴史があり、最近大がかりな修繕が加えられたが、1976年当時は各地に現役のボンネットバスが残っており、狭隘路や山間路などの路線で運行されていた。

山間路に使用していた徳島の四国交通もそのひとつだが、1980年代には1台を観光用に残して他社などに移籍した。正確に言うとその後もう1台、電電公社が使用していたボンネットタイプの電源車を改造してバス登録し、観光用に動かした時期もあったが、現在では本来のボンネットバス1台のみが在籍する。1966年式いすゞBXD30(富士重工製)で、1982年から2021年までは定期観光として稼働した。ボデー腐食など経年化が著しく進んだことから昨年、大規模修繕を行ったが、その手段としてクラウドファンディングが導入されるとともに、無事目標額をクリアし、今年春に修繕を終えた。修繕後も特定日に稼働している。写真は修繕前の2021年撮影で、外装のカラーリングは現在と異なる。

昭和のバスがインターネットによる募金で再生されたことは興味深いが、ボンネットバス自体、現在の若い世代には「懐かしい」ではなく「未知」のスタイルといえるのではないか。

四国交通のボンネットバス598号

車齢は57年で、上掲の3軸バスよりわずかに若い。1982年以降、祖谷・大歩危の定期観光で稼働してきた。写真は大修繕を行う前の姿で、現在は新車当時のクリームイエロー/紺/緑のデザインに復刻されている。



ぽると出版「バスラマNo.198」

【発行日】2023年2023年6月25日(日)
【税込定価】1,498円(本体1,362円+税10%)
【サイズ】A4判 96ページ
【書籍コード】978-4-89980-198-6
【概要】
・バス事業者訪問247 おんたけ交通
・【特集】各地の電気バス ニューフェイス
・【特集】2023バステクフォーラム開催!
・【レポート】アルテックに聞く カルサンe-JESTの国内市場展開
・【レポート】京浜急行バス BYD J6 電気バスが登場
・【レポート】ミストクーラー“Cool Jet CV”はとバスで試用中!
・【レポート】日進市の自動運転実証実験
・【レポート】商用汎用EVプラットフォームの提案 ZF “Enerlity”
・【短期連載】低公害バスの系譜をたどる 最終回
・粒よりの最新レポート、連載ほか
ぽると出版HP

(バスラマインターナショナル)

情報提供元: バスとりっぷ
記事名:「 昭和&平成レトロ…バス会社が自ら手がける旧車復活