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東京~大阪間・東京~広島間を走る「ドリームスリーパー」は、常識を覆すほどの豪華な設備とサービスでメディアから注目を集める完全個室型を実現した夜行バスです。
全てがこれまでの夜行バスのイメージを変える「ドリームスリーパー」の魅力を、この乗車記でたっぷりと紹介します。
20:20、広島駅新幹線口バス乗り場に、「Dream Sleeper」と描かれた白い車体が入線してきました。
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ひときわ輝いて見える車体は、ただの白ではなくパールホワイトの高貴な光を放っています。はじめてドリームスリーパーに乗車する人も、すでに何度か乗車したことがある人も、興奮を隠せない瞬間でしょう。
まずは乗車の第1歩から、これまでの「夜行バス」の乗車体験が覆されます。ドアのステップで靴を脱ぎ、黒いビニール袋に入れて座席へと向かわなければならないのです。
1歩車内へ足を踏み入れると、床は全面に敷き詰められたカーペット仕様。ホテルの客室へ入ったような錯覚すら覚えます。ソフトな感覚のカーペットの通路は、おもわず素足で歩きたくなるほどの心地よさです。
車内に入って指定の席まで歩いても「座席」が目に入りません。すべて扉と壁で仕切られていて、中の様子をうかがい知ることができない構造になっています。
自分の座席は壁に記されたプレートで確認します。さながらホテルの客室にかかげられているルームナンバープレートのようです。
ドキドキと興奮しながら通路を歩きます。自分の座席番号がかかげられた部屋(居室)の前に立ち、大きく深呼吸して扉を開けると……「これ夜行バスですよね?」と疑いたくなる空間が。
重厚な趣(おもむき)のあるシートがドーンとむかえてくれます。
ドリームスリーパーでは、この空間を座席ではなく居室と呼びます。その理由がよくわかります。
ドリームスリーパーで採用されているシートは見た目が豪華なだけではありません。
世界の寝具メーカー昭和西川の「ムアツクッション」を全面に配し、座り心地も抜群です! さらに、NASAが理想とするベストポジション(背もたれ角度40度、座席角度30度、フットレスト水平)を再現し、まるで無重力状態にいるような乗車体験ができます。それがゼログラビティシートたるゆえんです。
シートのリクライニングは窓際のコントロールパネルで行ないます。
パネルには、それぞれ背もたれ・座席角度・フットレストを調整するものと全自動ボタン、計4つのボタンがあります。全自動を押すとゼログラビティの理想ポジションになってくれるので、迷ったときはこれだけでOKです。
ボタンの操作に力は必要ないため、指や手に負担がかかるようなこともありません。
このほか、2つある室内灯「ライトフロント」と「ライトリア」の明るさも、コントロールパネルから無段階で調整できます。夜ふっと目が覚めて灯りが必要な時やトイレへ行く際など、シートに横たわっている状態で室内灯のオン・オフができるのはとても便利です。
座席に着くと窓側のキャビンにはビジネスホテル備え付けのものより、さらにグレードの高いアメニティが用意されています。
写真の上から順に、
・スリープマスク
・ウエットタオル
・ヘッドホンカバー(左)
・耳栓(右)
・歯ブラシセット
この他に女性用ヘアバンドの用意もあります。
これらのアメニティは車内での時間をより快適に過ごしてもらうためのサービスですが、お持ち帰りもOKです。
ペットボトルの水も車内サービスなので、自由に飲んでOK。ボトルデザインがカッコイイので、ついお土産に持って帰って「ドリームスリーパー」に乗ってきたぞ! って、自慢したくなりますが、それもOKです。
さらに、車内のマルチチャンネルで音楽などを楽しむためのヘッドホンや、USB端子とスマートフォンなどをつなぐケーブル(Android用のmicroUSB・iPhone用のApple端末lightningケーブル両方に対応)が無料でレンタルできます。ただし、ケーブルとスリッパは備品ですので、下車の際に返却してください。
お手洗いは車内中央の階段下、どの座席からも遠くない位置にあります。
温水洗浄機能付きのトイレで自宅と同じように、いいえ自宅よりも快適に用が足せるかもしれません。広島~東京間は移動時間も長いため、お手洗いは安心の設備です。
車内後方にはパウダールームも完備されています。左右の明るいLEDの照明は鏡を前にしたときに影ができにくく、女性のメイクの時は心強い味方になってくれるはずです。
あまりの設備の充実ぶりに、なにをどうしたらいいのかとまどってしまいそうですが、広島駅を出発した後、各居室まで運転士の方がバス車内の設備・サービスについて解説しに来てくれるので、わからないことはこのときに聞いてみましょう。ヘッドホン・充電ケーブルの貸し出しもこのタイミングでお願いできます。
そうこうしている間にバスは休憩カ所のサービスエリアに到着しました。
23:50、龍野西サービスエリアに到着。ここで約15分の休憩です。
休憩カ所はここ山陽自動車道の龍野西サービスエリアが最初で最後。深夜に近い時間だということもありますが、バスから下車する人がほとんどいないのは、サービスエリアよりバスの中の方がより快適な証拠かもしれません。
休憩から居室に戻りゼログラビティシートに身体を沈めると、いつの間にか深い眠りの中に落ちてしまいました。
窓の外が明るくなった頃、バスは東京都内へ入ってきたようです。カーテンを開くと皇居周辺のサクラが見頃をむかえ、春のおだやかな陽気がバスの中にまで伝わってくるように感じます。
夜行バスでは夜間、まわりの乗客に迷惑がかからないよう、カーテンの開閉はできませんが、ドリームスリーパーは完全な個室スタイルであるため、カーテンを開いてもOKです。
じつは深夜に目がさめてカーテンを開くと、闇の中に浮かぶ富士山のシルエットが見えて、なにか神がかり的な感動を覚えました。これは夜行バスなら「ドリームスリーパー」でしか味わうことができない体験。この車両の醍醐味です。
ドリームスリーパーは、まず「水道橋東京ドームホテル」に停車します。そして、その後に停まるJR大崎駅が終点です。
この日は首都高速道路の用賀付近で渋滞に遭い、約15分ほど遅れて大崎駅西口に到着しました。
しかし、車内のパウダールームで身支度をしたり、テーブルで手帳を広げて予定をチェックしたりと、普段のバスではできないことが当たり前のようにできるので、快適すぎてなんだかもうしばらくバスから降りたくない、そんな気持ちになってしまいます。
ドリームスリーパーが到着した大崎駅は関西在住の私には馴染みがない駅ですが、バスターミナル周辺は都心の混雑も少なく、慌ただしさを感じません。
バスターミナルの前には、24時間営業のファミリーマートをはじめスターバックスコーヒー(7:00から営業)や公衆トイレがあることにくわえ、JR山手線の駅であるため都内各地へのアクセスが抜群にいいことも大崎駅の魅力です。
他の長距離バスも発着しますが、係の人がとても親切に対応してくれて気持ちよく利用できるので、実は私のお気に入りのバスターミナルです。
ホテルのようなプライベート空間を提供してくれるドリームスリーパーに乗車すれば、夜間を移動と睡眠に費やして、翌日は朝1番から効率よく行動できます。しかも、仕事を終えてから新幹線で移動し東京のホテルで宿泊することを考えればドリームスリーパーの方が割安でしょう。
バス会社によると、ドリームスリーパーの利用者はビジネスマンが多いのだとか。その理由もなるほど! 納得できます。
利便性と旅のドキドキ感の両方をひとり占めできるドリームスリーパーは、プライス以上の夜行バス体験を私たちに提供してくれます。
ビジネスでの移動はもちろんプライベートな旅行でも、この最高の夜行高速バスをより多くの人に体験してほしいと心から思います。
(出雲義和)