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「どんたく号」の旅の始まりは、名鉄名古屋駅直結の名鉄バスセンターから。仙台、福島、新宿、北陸、関西、四国、九州方面へ向かう高速バスのほか、近距離高速バス、一般路線バスも発着する、中京圏有数のバスターミナルです。
バスのりばは3階と4階にありますが、長距離高速バスは3階から発車。乗車券カウンターのほか、待合室、コンビニエンスストアが完備されています。
また、名鉄バスセンターはロケーションの良さも特長のひとつ。近くには名鉄百貨店や名駅地下街「サンロード」があるほか、JR名古屋駅や近鉄名古屋駅にも近いことから、バス乗車までにお土産を選んだり食事を楽しんだりすることもできます。
「どんたく号」は、名鉄バス(本社:愛知県名古屋市、当時は名古屋鉄道)と西日本鉄道(本社:福岡県福岡市)が1989(平成元)年12月に共同で運行を開始し、今年(2019年)で30周年を迎える老舗の夜行高速バスです。両社とも高速バスの運行に際しては実績があり、安心して利用できます。
今回乗車したのは、名鉄バス担当便。腰高のスーパーハイデッカーと鮮やかなカラーリングが特徴です。
早速、車内に入ってみましょう。車内は、幅広の3列シートが並びます。
茶系のシートモケットと木目調の床、そして最後部まで一人掛けになっているのが特長です。また、車内中央部のトイレ前がフリースペースとなっており、進行方向左側座席(A席)からトイレへの出入りがしやすくなっています。通路カーテンは中央列も含め全席に設置されています。
シートは、2014(平成26)年より導入が進められている新型シート「プレミアムワイド」を採用。
可動式枕を搭載しているほか、肘掛け下の部分を座面とすることで、座面幅が従来型のシートよりも約10cm広くなっています。腰まわりがきつくないため、ゆったりと過ごすことができます。
座面横のボタンを押しながら、シートをフルに倒してみます。かなり深く倒れます。
レッグレストとフットレスト(足置き台)です。前座席の足先が空洞になっており、足が伸ばしやすくなっています。フットレストは、靴を脱いで使用します。
各座席には、毛布、スリッパのほか、写真の置きクッションが備えられています。置きクッションは腰当てとして使うことができ、就寝時における身体の負担軽減にもなります。なお、毛布、スリッパ、置きクッションは車内備品のため、持ち帰ることができませんのでご注意を。
携帯電話やスマートフォンの充電に便利なUSBポートとコンセントも完備されています。デュアル電源環境となっており、うっかりACアダプターを忘れて乗車しても、充電用ケーブルさえあれば問題ありません。
手元をピンポイントで照らすLED式の読書灯です。車内の消灯後にも読書などが楽しめます。
この車両の「売り」のひとつである、中央列の荷物棚です。カバンやコートなど、ちょっとした手荷物を置くのに便利です。荷物棚の奥にはミラーが設置されており、万一小物類などを落としても見つけやすくする工夫がなされています。
車内中央部にはトイレを完備。途中、休憩停車は2回ありますが、いざという時に嬉しい設備です。
トイレ上部には、セルフサービス式のおしぼりボックスがあります。
車内前方のLEDモニターです。運行経路や運行に関する案内を交互に表示します。
休憩停車時には出発時刻が表示されます。休憩で外に出る際は、必ず前方のモニターにて出発時刻を確認しましょう。(写真はデモ表示です。)
車内ではWi-Fiサービスも提供されています。設定方法は、備え付けのリーフレットに記されています。
床下のトランクルームです。大きな荷物はこちらに預けますが、スペースに限りがあるため、注意が必要です。トランクの床部分がベルトコンベアになっており、スイッチひとつで荷物を奥に押し込むことができることから、乗務員の負担軽減にもつながっているそうです。
トランクに荷物を預けると、写真の「荷物引換券」が乗務員から渡されます。降車の際に必要となりますので、無くさないようにしましょう。
以上、名鉄バス「どんたく号」の車内をひと通り紹介しましたが、新型シート「プレミアムワイド」はもとより、利用者目線に立った充実の車内設備が特長といえましょう。
福岡行き「どんたく号」の名古屋発車時刻は21:00です。バスは、発車10分前に名鉄バスセンター5番のりばに入線し、乗車改札が行われます。
21:00定刻に名鉄バスセンターを発車した「どんたく号」は、名古屋中心部を通り、栄オアシス21へ向かいます。
栄オアシス21で乗車扱いを行ったバスは、東新町ランプから名古屋高速へ。さらに、名古屋西インターから東名阪自動車道に入ります。
名古屋高速に入ったところで、乗務員による運行経路、注意事項、車内設備の案内が行われます。名鉄バスといえば、昔から乗務員の接客レベルが高いバス会社として有名。過不足なく、ていねいな案内が印象に残ります。
この日は、平日にもかかわらず7割ほどの乗車率。聞くところによると、週末や繁忙期には満席になることも少なくないそうです。車内を見回してみると、10~60代と幅広い年齢層の方が利用されており、長年の運行による信頼感と、地元バス会社が運行していることへの安心感で選んでいる乗客が多いのではと感じました。
名古屋西インターから東名阪自動車道に入ったバスは、亀山ジャンクションで新名神高速道路に入り、その後は名神高速道路~中国自動車道~山陽自動車道~中国自動車道~関門橋~九州自動車道を経由して、北九州・福岡へと向かいます。
「どんたく号」の途中休憩は、消灯前と起床後の2回のみとなっています。
消灯前の休憩場所は、名鉄バスセンターから1時間20分ほど走行した、滋賀県の新名神高速道路土山サービスエリア。こちらでは22:20から15分間停車しました。
トイレやコンビニのほか、売店、フードコートも完備している大きなサービスエリアですが、停車時間が15分と短いので、トイレや洗顔、買い物は早めに済ませましょう。
なお、こちらのサービスエリアは、建物が上下線共用となっており、上り車線側の駐車場へ行くこともできてしまうため、くれぐれも間違って他のバスに乗ってしまわないように注意しましょう。
土山サービスエリア発車時にバス車内は消灯されます。消灯後は数か所のサービスエリアにて乗務員交代と車両点検のために停車しますが、乗客は下車することができません。
起床後の休憩は、消灯後約7時間経過した山口県の関門自動車道壇之浦パーキングエリアにて実施されます。定刻では5:40頃に到着しますが、こちらも停車時間は15分と短いです。洗顔や買い物は早めに済ませておきましょう。
壇之浦パーキングエリアといえば、あのローカルバラエティ番組『水曜どうでしょう』(北海道テレビ)の旅企画「サイコロの旅2」でも有名なサービスエリアですが、実は本州と九州の架け橋「関門橋」が間近で見られるビュースポットでもあるのです。
残念ながら、冬期は夜明けが遅いために真っ暗ですが、日が高い春先から秋にかけては、目の前の関門橋と対岸の九州を一望することができ、このサービスエリアでひと休みするドライバーも多いです。
暗闇のパーキングエリアに停車する「どんたく号」です。
壇ノ浦パーキングエリアを発車したバスは、関門橋を渡り、門司インターからは北九州都市高速道路を走行、北九州市内のバス停に停車していきます。
最初に停車したのは、小倉駅前の高速バス専用降車場。こちらでは5~6名が下車していきました。
その後、砂津(チャチャタウン前)、黒崎インター引野口では降車客がおらず、6:55に八幡インターから再び九州自動車道へ。直方パーキングエリア、若宮インターチェンジに停車した後、7:22にバスは福岡インターを流出します。ここからは、福岡都市高速道路を走行し、福岡市中心部へと入ります。
7:41にバスは定刻よりも若干早く博多バスターミナル2階降車場に到着。半数以上の乗客が下車していきました。
JR新幹線・在来線・福岡市営地下鉄(空港線)への乗り換えはもちろんのこと、西日本鉄道(西鉄バス)・JR九州バスの路線バスや県内・県外高速バスへの乗り換えは、こちらでの下車が便利です。
そして、ほぼ定刻の8:02に、バスは終点の西鉄天神高速バスターミナル降車ホームに到着。西鉄電車(天神大牟田線)・福岡市営地下鉄(空港線・七隈線)及び県内・県外高速バスへの乗り換えは、こちらでの下車が便利です。
名古屋~福岡(博多)間をJR新幹線で移動する場合、片道普通運賃と新幹線特急料金(「のぞみ」指定席利用)の合計金額は18,540円となります。(いずれも1月26日現在、バス比較なび調べ)
また、名古屋(中部・小牧)~福岡間を飛行機で移動する場合、ANAは13,410円~32,810円、JALは13,100円~28,500円、SFJは12,310円~25,910円となります。(いずれも2019年2月出発で、最安運賃は事前購入割引運賃。各社公式サイト調べ)
LCC「Jetstar」を利用した場合では、通常期で4,990円~18,990円となります。
そんな中、名古屋~福岡線「どんたく号」は、片道運賃が7,500円~11,500円となっています。
また、「どんたく号」には、長崎方面への観光に便利な乗り継ぎ割引きっぷ「長崎連絡きっぷ」も設定されています。「どんたく号」の乗車券と九州急行バスが運行する高速バス「九州号」(福岡~長崎線)の乗車券がセットになったおトクな連絡きっぷで、片道最安9,560円で名古屋~長崎間を移動することができます。「九州号」は福岡~長崎間を最速約2時間で結び、運行本数も平日56便・休日59便と便利です。
【福岡線】「長崎連絡きっぷ」の発売について 名鉄バス公式サイト
LCC「Jetstar」と比較すると、利用日によっては「どんたく号」の方が高くなることもありますが、JR新幹線や飛行機(レガシーキャリア)と比較すると、時期によっては新幹線や飛行機の半額以下の運賃で眠りながら移動できる(=宿泊費が節約できる)ことから、「どんたく号」のコストパフォーマンスは高いといえるでしょう。
なお、週末や繁忙期は混み合いますので、早めの予約・購入をおすすめします。
今回は、名古屋から福岡間までの全区間を利用しましたが、平日の水曜日に利用したということもあり、片道8,500円(D運賃)で移動することができました。
新型シート「プレミアムワイド」も座り心地がよくゆったりとしており、至れり尽くせり車内設備、そして通路カーテンのおかげで、消灯後は翌朝の休憩までほぼ目を覚ますことなく、ぐっすり眠ることができました。
・ゆったりシート&充実設備のバスでぐっすり寝ながら移動したい
・安心で信頼のあるバスで移動したい
・他の交通機関よりも安く移動したい
という方に、「どんたく号」は最適なバスだと思います。
(須田浩司)