梅雨の入り・明けの速報値は、予報に基づくものです。気象庁は、9月に春から夏にかけての天候経過を振り返り、梅雨入り・明けを統計値として確定させる作業を行い「確定値」として改めて発表します。北陸の2024年迄の過去10年をみると、2019年を除く全ての年でなんらかの変更が行われています。近年は地球温暖化の影響もあり、梅雨が明けても明けなくても猛暑はあり、短時間強雨の頻度が増えています。仮に梅雨明けの速報発表が行われても、台風シーズンが終わる10月頃迄は、短時間強雨への備えを怠らないことが大切です。

●「既に梅雨入りしていた」「まだ梅雨明けしていなかった」ケースも

梅雨の期間の確定値は、統計値として意味があるものです。ただ、これまで、一般向けにはあまり分かりやすいかたちで公開されてきませんでした。「歴史にifはナンセンス」、速報値が修正され確定値が発表されても、正しい日に遡って経済をやり直すことは出来ません。ニュースネタにもなりにくい側面もあるものと考えられます。

トップ画像は、北陸地方(福井・石川・富山・新潟県)の梅雨の速報値と確定値の過去10年分の状況で、オレンジ色は変更があった年、緑色は唯一変更がなかった2019年を示しています。

また、ピンク色の年は、確定値で梅雨の期間が速報値の期間よりも長くなった年で、これは「既に梅雨入りしていた」または「まだ梅雨明けしていなかった」とも言い換えることが出来ます。

確定時のこうした変更は、直近の過去10年では、9回行われています。これは「変更されることは珍しくない」というよりは「変更されることはよくある」と言っても良さそうなレベルです。自然の一部である人間が、予報段階で自然現象に線引きすることの難しさがここにもあらわれています。

●2022年 北陸地方の梅雨明け「6月28日」⇒「特定できない」に大幅修正

6月28日の梅雨明け速報発表直後は、夏の高気圧が北へ張り出し、晴れて厳しい暑さとなりました。ただ、安定した晴天は長続きせず、「梅雨明け十日」ならぬ「梅雨明け五日」程度にとどまりました。

その後の7月3日には福井で日降水量が100ミリを超える大雨となり、その後も北陸地方では、上空の寒気や湿った空気の影響で記録的短時間大雨情報の発表や日最大1時間降水量の更新があるなど、7月下旬にかけて梅雨末期のような天気が続きました。

8月上旬には、日本海に停滞する前線の影響で新潟や福井では線状降水帯が発生、新潟の3自治体には大雨特別警報が発表され、石川では記録的短時間大雨情報の度重なる発表、梯川(かけはしがわ)が氾濫する等、記録的な大雨となりました。

その後も、北陸地方は湿った空気の通り道となり、台風周辺の湿った空気も流れ込んで、短時間強雨による道路の冠水や土砂災害などが各地で頻発し、安定した夏空とは程遠い状況が続きました。

こうしたことから、梅雨入りの確定値は速報値を8日前倒しの6月6日頃、梅雨明けの確定値は速報値で6月28日頃としていましたが、「特定できない」に大幅修正されことがあります。

●梅雨明け前から猛暑 明けても短時間強雨 水不足にも注意・警戒

今夏は、梅雨が明ける前の中休み中から既に猛烈な暑さを記録しています。また近年は、梅雨明けしても安定した夏空が続かないことが多くなっています。

北陸地方の梅雨明けの平年日は7月23日頃。仮に平年より早い梅雨明けの速報が発表された場合でも、引き続き短期的な大雨には十分注意・警戒しましょう。自宅周辺の側溝など、排水が問題なく行われることを定期的に確認したり、避難グッズもすぐに持ち出せるように準備しておきましょう。猛暑で水不足になる懸念もあります。今から出来る限りの備えをお願いします。

情報提供元: tenki.jp日直予報士