台風10号は、九州に接近・上陸後、本州を縦断するおそれ。動きが遅く、同じような場所で長時間にわたり大雨が降り続くため、昨日27日の予想より更に予想雨量が増え、記録的な雨の範囲が広がりました。九州、四国、近畿南部の広い範囲で総雨量1000ミリ以上が予想され、四国など多い所では2000ミリを超えるおそれがあります。地すべりなど大規模な土砂災害や河川の氾濫など甚大な災害発生の危険度が高まるため厳重な警戒が必要です。

●台風10号 九州に接近・上陸 西日本・東日本を縦断するおそれ

非常に強い台風10号は、さらに発達を続け、発達の最盛期となる29日(木)にかけて九州に接近・上陸、その後、西日本・東日本を縦断するおそれがあります。

気象庁は28日13時、鹿児島県(薩摩、大隅、種子島、屋久島地方)に台風を要因とする「暴風・波浪特別警報」を、16時20分には鹿児島県(薩摩地方)に「高潮特別警報」を発表しました。経験したことのないような暴風・高波・高潮のおそれがあるため最大限の警戒が必要です。

台風の進む速度がゆっくりであるため、西日本・東日本を中心に記録的な雨量となるおそれがあるため厳重な警戒が必要です。

●記録的な大雨の見通し

日本気象協会は、台風10号に伴う今後の大雨と災害の見通しを発表しました。

日本気象協会独自の「JWA統合気象予測」では、31日(土)までに予想される72時間雨量が第2報より大きくなり、九州地方や四国地方の広い範囲で800mmを超え、最も多いところでは1,200mmに達すると予想されています。予想される雨量となった場合、これまでに観測された雨量の最大値との比(既往最大比※1)が150%を上回り、大きいところでは200%に達する可能性があります。日本気象協会と静岡大学牛山素行教授との共同研究の結果(※2)によると、既往最大比が100%になると犠牲者が発生しはじめ、150%を超えると犠牲者の発生数が急増する可能性があることがわかっており、災害発生危険度が極めて高いことから厳重な警戒が必要です。

※1既往最大比:解析雨量が1kmメッシュ化された2006年5月以降に観測された雨量の最大値との比のこと
※2 本間基寛,牛山素行:豪雨災害における犠牲者数の推定方法に関する研究,自然災害科学,Vol. 40,特別号,pp. 157-174,2021.

●記録的な大雨 長く続く

西日本から東日本の太平洋側では、台風に伴う暖かく湿った空気が流れ込み、雨が降り始めています。29日(木)から31日(土)にかけては、九州・四国を中心に大雨が続く予想です。大雨が長く続くことにより、河川の氾濫や土砂災害に厳重な警戒が必要です。

●台風10号の特徴

今回の台風の特徴は、進む速度がゆっくりであることです。28日15時時点の台風進路情報では、29日(木)から30日(金)まで台風が九州を縦断する予想です。この影響で、特に九州南部や四国地方では、同じようなところで長時間にわたって雨が降り続くことが予想されています。台風が西日本から東日本にかけて縦断するような進路となった場合、九州南部や四国地方、近畿南部や東海地方といった普段から雨量が多いところであっても、これまでの観測最大値を上回るような記録的大雨となるおそれがあります。西日本から東日本の太平洋側を中心に、大河川も含めた多くの河川での氾濫、広域での土砂災害の多発に警戒が必要です。雨量が多くなる前からの早めの行動を心掛けてください。

●総雨量2000ミリ超えも 記録的大雨エリアも前回予想より広がる

8月28日(水)~9月1日(日)までの積算雨量予測です。今回の台風第10号では、台風がほぼ停滞し降水量が多くなった場合の想定として、九州・四国・近畿南部と広い地域で1,000mm以上が予想され、特に四国地方の最も多いところでは2,000mmを超える可能性があります。
近年、降り始めからの雨量が2,000mmに達した事例として、平成23年台風第12号(紀伊半島大水害)があります。この台風では、8月30日から9月5日にかけて紀伊半島の南東部を中心に広い範囲で1,000mmを超え、一部の地域では2,000mmを超える記録的な大雨となりました(図4右)。この台風により、奈良県、和歌山県、三重県をはじめ、全国で死者・行方不明者が98名となり、広い範囲で被害が生じました。とくに、降水量が多くなった奈良県、和歌山県では「深層崩壊」と呼ばれる大規模な土砂崩れが多発し、河道閉塞(土砂ダム)や道路の寸断が生じました。
今回の台風で大雨が予想されている九州南部や四国地方は、深層崩壊の頻度が高いと言われている地域に該当します。これらの地域では、降り始めからの総雨量が1,000mmを超えるおそれがあり、地すべりなどの大規模な土砂災害が発生する可能性があります。山間部を中心に、道路の寸断による集落の孤立や、河道閉塞による土砂ダムの形成などのおそれがあります。厳重に警戒してください。

台風の進路予報にはまだ幅があります。台風の進路によっては雨量の予測が大きく変化する可能性がありますので、最新の気象情報を確認してください。

情報提供元: tenki.jp日直予報士