ドラフト「隠し玉」の時代に終止符 デジタル技術を活用した公平な「仕組み化」進む
ドラフト会議を22日に控え、かつては「隠し玉」や泥臭い密着マークによる情報合戦が秋の風物詩だったスカウティングが、大きな転換期を迎えている。今年は高校生127人、大学生149人の計276人がプロ志望届を提出。評価の舞台裏では、デジタル技術を活用した公平な「仕組み化」が進んでいる。
これまで各球団が独自に行ってきたデータ取得。かつては球場でのビデオ撮影や球速、ストップウォッチでの走塁タイム計測などが主流だった。近年はトラックマン等を使用し、スイングスピードやミート率、回転数に加え、投手の球持ちの良さを示す「エクステンション」など詳細なデータ取得が可能となった。
これにより直接各校のグラウンドで計測するケースが増え、学校側から混乱を懸念する声が上がっていた。これを受けNPBと12球団が協議を重ね、25年から新たなルールが導入された。新運用では対象をプロ志望届提出者に限定し、各球団の希望をもとにNPBが地域性なども考慮して1チームを代表に指定。現地で取得されたデータはNPBを通じて希望球団へ一括共有される仕組みだ。
あるプロ野球スカウトは「データの数値自体は100%正確。リリース位置や球持ちなど、我々が目で見て『いいな』と感じた部分の完全な『答え合わせ』や補足として非常に役立つ」と肯定的に捉える。一方で、「回転数が高くてもストライクが入らなければ意味がない。数値はあくまで現在の『過去のデータ』であり、そこから将来どう伸びるかを見極めるのがスカウトの目」と強調した。
かつてスカウトたちが足で稼ぎ、情報を秘匿した「隠し球」の時代は終わりを告げた。データがフラットに共有されるようになった今、真の勝負は単なる数値の過信ではなく、その先にある伸びしろや人間性、スタミナといった「数字に表れない未来」を見極めるスカウトの眼力と、球団の育成力へとシフトしている。アナログとデジタルの融合という新たな局面を迎えている。【鳥谷越直子】