【写真】ブレーブス対ドジャース 声をあげ力投するドジャース先発山本由伸(撮影・垰建太)

<ナ・リーグ地区シリーズ:ブレーブス1-3ドジャース>◇第3戦◇6日(日本時間7日)◇トゥルーイストパーク

【アトランタ(米ジョージア州)6日(日本時間7日)】ドジャース山本由伸投手(28)が、地区シリーズの流れを左右する第3戦の大一番でブレーブスのエース左腕クリス・セール投手(37)との投げ合いを制した。7回4安打1失点、10奪三振で、シリーズ突破へ王手をかけた。勝敗を分けたのは球数で、5回95球のセールに対し、山本は7回98球だった。配球の随所に交え、省エネにもつながったカットボール。魔球が生まれた原点を、オリックス時代の元同僚で日刊スポーツ特任記者の鈴木優氏が明かした。

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「由伸、健在」を象徴したのは、4回無死、アクーニャに投じた1球だった。外角低めのカットボール。制球ミスすることなく引っかけさせる遊ゴロとし、わずか1球でアウトにした。球数を抑えるには、あまりにも大きい1球での凡打。この日、球数増で苦戦していた左腕セールとの大きな差になった。

今年3月のWBCのベネズエラとの準々決勝で、先頭打者本塁打を打たれた因縁の相手がアクーニャだった。1勝1敗のタイに持ち込み、勢いに乗るブ軍打線の中軸。1発を打たれるわけにはいかない。ゾーンの隅を狙えば、球数は増える。「今日は最悪失点しなければ、球数がかかってもいいかなっていう気持ちで、とにかく厳しいところに投げていきました」。全球種を交え、狙い球を絞らせない。独特のカーブ、スプリットに加え、カットボールが使えることも、球数減には欠かせない要素だった。

この球を由伸が練習していた頃を、私は今もはっきり覚えている。2年目のキャンプで、キャッチボールの相手を務めていた。「優さん、マッスラ(真っすぐとスライダーの中間の球)いきます」。遠投でそう声をかけられ、投げられた球は伸びながら横へスライドして私のグラブへ収まった。距離が短くなってからも、浮き上がりながら少しだけ横にずれる。見たことのない軌道に、ただ驚かされた。

キャッチボールの後、「カットボールではないの?」と聞いた。返ってきた答えは意外だった。「カットボールというと曲がりを意識しちゃうんですよね。でもそこは大事じゃないんです。体をいい使い方で投げればこの球は投げられるので、曲がりを意識し過ぎたくない」。変化の大きさではなく、体の使い方の先にこの球は生まれる。由伸の感覚は、結果ではなく過程を重視していた。

当時、「見たことない」、「消える」と打者をうならせた“魔球”はメジャー3年目の今季、配球の15%を占めた。スプリット、直球に続いて多い数字だ。シーズンの登板数は昨季の30試合から28試合へ減ったが、投球回は173回2/3から185回へ大きく伸びた。カットボールの精度が磨かれたことも大きな要因の一つ。そしてポストシーズンの大一番で、省エネ投球につながる1球となった。

8月末、セールとの投げ合いに惜しくも敗れ、やり返した。「投げ勝ったっていう気持ちは正直全然ない。今日の試合をとにかく取れたのはすごくチームにとって大きかったと思いますし、あと1勝、全員で勝ちたい」。頼れるエースはいつも、チームのために腕を振っている。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 山本由伸7回1失点快投 98球につながった強打者アクーニャへの1球 魔球が生まれた原点とは 」