【田村藤夫】日本ハム大卒3年目・宮崎一樹外野手を見て思った。草薙まで足を運んで良かったと
<ファーム日本選手権・ファイナルステージ 日本ハム5-2巨人>◇4日◇静岡・しずてつスタジアム草薙
日本ハムの大卒3年目、宮崎一樹外野手(25)の判断力に非常に強く光るものを見た。
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久しぶりに草薙に来た。当時は草薙球場として、東西対抗に出場した思い出の球場だったが、今はしずてつスタジアム草薙と名前も変わっていた。
10月に、こうしてファーム日本選手権を見に球場に来ることができるのは大変うれしいが、遠くまで足を運んだだけに、果たしてじっくり解説できるプレーに出会えるか、ちょっとそこだけが不安だった。
それは杞憂(きゆう)に過ぎなかった。初回、宮崎の守備を見て、「ああ、これは!」と目が留まった。こうなると、そこから宮崎のプレーをしっかり視野に入れて、試合に集中することができる。すると、宮崎の好判断がいくつか飛び出し、心は軽くなった。
まず初回の宮崎のレフトの守備が良かった。1死から湯浅のレフト線への打球は、俊足を加味すると二塁打になってもおかしくない打球だった。これを宮崎が反応良く、フェンス手前で押さえて、すぐに二塁にダイレクト送球。それも正確だった。
湯浅は二塁に行く気満々も、宮崎の好返球に一、二塁間の1/3ほどまで走って断念。あわてて一塁に帰塁せざるを得なかった。私は捕手だったから、この守備力は大変ありがたい。立ち上がり1死一塁と、1死二塁では雲泥の差だ。それも、普通に守っていれば二塁を奪われているケースで、宮崎のファインプレーに匹敵するキレのある動きで一塁に足止めにした。
味方からすれば、緊張感が良い意味で大いに高まるし、相手からすればまるで損をしたかのような空気になる。このそれぞれのチームに与えるインパクトは、宮崎の意図したプレーが生み出したものだった。
2回の守備でも山瀬の、あわやレフトオーバーの当たりを、打球も見ずに背走して、最後はグラブを精いっぱいに伸ばして好捕している。打球判断、脚力、そして最後の球際、すべて抜群の動きだった。初回の打球処理ですっかり波に乗ったように見えた。
そして3回の攻撃では走塁でうならされた。二塁打で出塁。次打者今川の打球は三遊間のちょうど真ん中付近へ。緩くもなく、懸命に追えばギリギリ追いつくような、非常に際どい打球だったが、宮崎の判断は速かった。通常、二塁走者は自分よりも右側に飛んだ打球では帰塁するのがセオリーだが、宮崎は一気に三塁にスタートする。
私は見ていたが、遊撃手がスライディングしてなんとか追いつく、そして三塁手も捕球すべくサードベース付近から出ていた。つまりサードベースはがら空き。この状況になる前に、宮崎はそうなることを予想していたのだろう。打球の勢い、飛んだコース、遊撃手、三塁手の動きを総合的に見て、自分の右側に飛んだ打球だったが、根拠を持って「ゴー」という動きに見えた。
この3つのプレーは、ただ足が速いからとか、打球への反応が良かったから、などの理由で評価するよりも、さらにワンランク上のプレーだったと感じる。つまり、湯浅の打球を処理する時に、どういう類いの打球ならば二塁で刺せるかと、あらかじめ予期し、備えていたフシがある。
あの場面でフェンス前で打球に追いつくことが必須で、フェンス前で追いついたなら、自分の肩であればダイレクト送球できると確信していたのではないか。理想は湯浅が走り、二塁で刺すことだったとは思うが、一塁に足止めさせたことは、秀逸の動きだったと言っていい。
そして走塁でも、同様に備えていたと感じる。どういう打球であれば、三塁を狙えるか。それがたとえ右側に飛んだとしても、どんな条件がそろえば三塁を陥れることができるか。きちんと頭の中で整理できていたように感じる。三塁手がベースから離れるであろうこと、それを打球が飛んだ瞬間に狙っているから、判断は宮崎の中では自動的に下されるのだろう。
たまたまの走塁ではなく、快足を過信した傲慢(ごうまん)なプレーでもない。根拠を持ち、決断の背景が整理されている、非常に中身のあるプレーだった。だいぶ褒めた。しかし、球場に足を運んだからこそ、全体をしっかり見渡して、感じられるダイナミックな動きだった。来て良かったと、思えるプレーだった。
よく、外野手は打たなければならないポジションと言われる。それは宮崎も同じことだ。打率2割7分はほしい。そして、それは1軍で残すのはなかなか大変なことだ。大卒3年目とは言え、そんなに一朝一夕にバッティングは結果が出ないものだ。ただ、それでも1軍の外野手競争に割って入らなければならない。そのためにはどうすればいいのか?
武器を持つことだ。分かりやすく言えば俊足であること、守備が安定していること。そうした観点から言えば、宮崎は判断力という武器がある。偶然の好プレーという類いではなく、どういう条件がそろえば走者を足止めできるか、どんな種類の打球が飛び、内野手がどういう動きをすれば、先の塁を奪える可能性が高まるか。そういうことが整理された上での判断力だ。立派な武器になる。
新庄監督も外野手として超一流だったことから、とかく外野手に求めることはレベルが高い。しかし、宮崎のこの日のプレーならば、十分に通用する。これからCSに戦いの場は移る。宮崎にチャンスがあるかどうか、そこはまったくの未知数だが、この日のファーム日本選手権で、私の目には宮崎の動きは強く輝いて見えた。(日刊スポーツ評論家)