【写真】現地29日、欧州ネーションズリーグ、クロアチア戦に快勝したスペイン代表(ロイター)

ワールドカップ(W杯)北中米大会優勝後も“ラ・ロハ(スペイン代表の愛称)”の勢いは止まらず、その強さを存分に見せつけている。

前回王者のアルゼンチンを破り、16年ぶり2度目のW杯制覇を成し遂げたスペインは、欧州ネーションズリーグで2カ月ぶりに活動を再開した。

■W杯後初戦でイングランドに競り勝つ

初戦のイングランド戦はウェンブリー・スタジアムで満員のアウェーサポーターに囲まれる雰囲気の中、逆転を許す場面はあったものの、W杯で主役を演じた選手らの途中出場により3−2で勝利した。

続くクロアチア戦はホームゲームとあって終始主導権を握り、バロンドールを切望するヤマル(バルセロナ)が2得点1アシストの活躍を披露し、4−1と大勝して順調に1次リーグで首位に立っている。

23年3月のデラフエンテ監督初陣以降の国際Aマッチ51試合の成績は、39勝10分け2敗(※PK戦は引き分け扱い)。参加した4大会全てで決勝進出し、23年欧州ネーションズリーグ、24年欧州選手権、26年W杯で優勝を成し遂げている。

W杯初戦でカボベルデに0−0で引き分けたのを最後に目下9連勝中。FIFAランキング首位の座を奪還しただけでなく、世界のサッカー界史上、最も負けづらい代表チームであることが記録で証明されている。

その記録とは「連続無敗の世界記録」。公式戦41試合(34勝7分け)、親善試合を含む国際Aマッチ40試合(31勝9分け)で無敗を誇り、今なお記録を更新中だ。最後の敗北はそれぞれ、23年3月のスコットランド戦(欧州選手権予選)、24年3月のコロンビア戦(親善試合)となっている。

■F・ルイスは代表戦52試合負けなし

この記録がいかに凄いものであるかは、対戦相手にW杯優勝経験のある全7カ国が含まれていることからも分かるだろう。勝利できなかった相手はブラジルのみ(※24年3月の親善試合で3−3)。フランスに3度、イングランド、イタリアに2度、ドイツ、ウルグアイ、アルゼンチンには1度ずつ勝っている。

中でも人々がその強さを目の当たりにしたのは、W杯決勝のアルゼンチン戦だろう。90分間でシュートを1本も打たせず、1−0という結果以上に大きな力の差を見せつけ、世界中を驚かせた。

そして、この成功の裏で偉大な個人記録を更新中の選手がいる。ファビアン・ルイス(パリ・サンジェルマン)は19年6月の代表デビュー以降、52試合(37勝15分け)で1度も負けておらず、同国代表史上の連続無敗の最多記録まであと5試合に迫っている。昨季の欧州チャンピオンズリーグとW杯北中米大会で優勝を手にした唯一の選手となり、今月下旬に発表されるバロンドールの受賞候補30人に選出されている。

■様々なスタイルで戦える強み

再始動後の初戦となったイングランド戦で注目されたのは、スペインのアイデンティティーの1つであるボール支配率が通常よりも低かったことだ。W杯での1試合平均が64%であったのに対し、イングランド戦は51%と、相手に主導権を握られる時間が長かった。

試合後にその点を問われた際、ヤマルは「相手にボールを持たれても気にならない。僕らはとても速く、カウンターも得意だから」と答え、デラフエンテ監督も「このチームの強みは様々なスタイルでプレーできることだ」と話し、チームの武器が1つでないことを強調した。

前監督のルイス・エンリケ(現パリ・サンジェルマン)指揮の下、22年のW杯カタール大会に“ポゼッション至上主義”で挑み失敗に終わったことを受け、後を引き継いだデラフエンテ監督は従来の華麗なパスサッカーにスピーディーなカウンターを融合した。ヤマルやニコ・ウィリアムズ(ビルバオ)のサイドアタックを活かした縦に速い攻撃を新たな武器に、24年の欧州選手権で3大会ぶりにスペインを優勝へ導いた。

■ハイプレスでW杯8試合1失点

今夏のW杯でもそのサッカーが期待されたが、ウイング全員がフィジカル面に問題を抱えていたことから、再びポゼッションサッカーに頼らざるを得なかったものの、前回と同じ轍は踏まなかった。

引いた相手に難渋する試合が続き、決勝トーナメント1回戦ではモロッコ相手にパスを1000本近くつないだにもかかわらず、PK戦負けを喫した前回大会に対し、今大会はゴール前を固める相手に焦らずゲームをコントロールし続け、巧みな連係プレーで相手ゴールをこじ開ける強さを披露。さらに、ハイプレスで相手に攻撃の機会をほとんど与えず、8試合でわずか1失点という堅守を築き上げた。

ウイングが万全の状態で臨んだ今回のイングランド戦ではカウンターというもう1つの武器が発揮され、続くクロアチア戦ではボール支配率64%と本来の調子を取り戻しただけでなく、先制点の奪い方はスペインサッカーの真骨頂を体現する素晴らしいものとなった。試合開始から70秒間、相手にボールを一度も触らせることなく25本のパスを回し、ヤマルがゴール左下隅に突き刺す鮮やかなシュートで仕上げを担当したのだ。

就任3年半で3タイトル獲得という圧巻の実績を残しているデラフエンテ監督は先日、契約を32年まで延長した。これは30年のW杯、28年と32年の欧州選手権、欧州ネーションズリーグ3大会の計6タイトル獲得を見据えたもの。現在の攻守にわたる安定感、対戦相手や試合の流れに応じた柔軟な戦術変更、代表選手たちの年齢などを考えると、当面はスペインの黄金時代が続くことになりそうだ。

【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 欧州ネーションズリーグで再始動した世界王者スペインの強さの軌跡、公式戦41戦連続無敗 」