【MLB特集】新天地に馴染んだヌートバー、PSであるか侍対決 日本プロ野球でのプレーは?
2023年WBCで侍ジャパンのリードオフマンとして世界一に貢献し、今季途中、カージナルスからトレードでダイヤモンドバックスへ移籍したラーズ・ヌートバー外野手(28)が、新天地で挑むポストシーズン(PS)への意気込みなどを語った。
PSに進出すれば、大谷翔平投手(31)らのドジャース、鈴木誠也外野手(32)らのカブスをはじめ、侍の仲間と対決する可能性もあるだけに、実現すれば、あらためて日米両国から注目を集めそうだ。【取材・構成=四竈衛】
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移籍後、まだ1カ月あまりとはいえ、外交的で人懐っこいヌートバーは、「転入生」とは思えないほど、すっかりチームに溶け込んでいた。自主練習後の取材中、すぐ脇を通り抜けたケプラーがいたずらっぽく放った言葉は、日本語で「仕事しろ!」。ほぼ英語しか話せないヌートバーに対し、ドイツ生まれのケプラーが日本語でイジる光景は、何とも不思議で、ほほ笑ましかった。
連日、最高気温40度を超える砂漠地帯のアリゾナ州フェニックス。「とにかく暑いね。セントルイスの夏は蒸し暑いけど、ここはドライだから」。昨オフ、両足かかとの手術を受け、今季はIL(負傷者リスト)入りして開幕を迎えた。「もう大丈夫。シーズン中もオフシーズンもトリートメントは続けているから」。温暖な地だけに、故障明けでも体調面の不安はなく、あらためて新たな環境での充実感がのぞいた。
トレード最終期限の8月3日。事前にウワサが飛び交っていた中、ダ軍への移籍が決まった。
「確かにいろいろな感情があったよ。アリゾナに行くと聞いた時は、ワクワクした。プレーオフが狙えるし、ノーラン(アレナド)とまた一緒にプレーができるのはうれしかった」。
昨オフ、ダ軍に移籍したゴールドグラブ賞10回のノーラン・アレナド三塁手(35)は、同じ南カリフォルニア出身でカ軍時代に5年間一緒にプレーした間柄。代理人も同じで、公私ともに「兄貴」として慕う存在だった。ただ、セントルイスは21年にメジャーデビューして以来、ずっとプレーしてきた第2の故郷。感傷的になるのも当然だった。
「セントルイスでの生活はすばらしかった。デビューした場所で5~6年過ごして、チームメート、コミュニティー、近所の人達にも恵まれて、セントルイスに育ててもらったから」。
その一方で、プロフェッショナルとして、勝つために必要とされることは、望むところだった。
「とてもクールなこと。だからこそ、トレードされてワクワクしているし、プレーオフを狙う新しい生活はとても刺激的だよ」。
公式戦が残り1カ月を切った中、ダ軍はワイルドカード争いで好位置を維持。PSへ進めば、日本人選手が所属する球団と対決する可能性も高い。
「すごくエキサイティングなこと。頭の中には、今永、誠也(鈴木)のカブスもあるし、大谷、由伸(山本)、朗希(佐々木)のドジャースもいる。パドレスには、ダルビッシュは出られないけど、裕樹(松井)もいる。ナ・リーグのポストシーズンレースのことは常に考えているよ。いつも彼らと対戦するのは興奮することだからね」。
23年WBCで侍ジャパンの一員としてプレーし、世界一の頂点に立ったことは、ヌートバーにとって人生を変えたと言っても過言でないほど、大きなインパクトを与えた。言葉の壁があっても、チーム全員、さらに日本のファンから受け入れられたことは、野球選手としてだけでなく、1人の人間としても、かけがえのない宝物だった。
「ものすごく大きいことだった。侍ジャパンでプレーして金メダルを獲得した経験は、本当にすばらしかった。その後、今は、みんなと永遠の友人として、いい関係が続いている。もし、侍でプレーしていなかったらそうはならなかったと思う。自分のキャリアの中で、おそらく考えられなかったことだし、本当にすばらしい経験だった」。
だからこそ、米国と日本の野球には、常にアンテナを張り巡らし、客観的な視線で見つめてきた。
「日本の野球は、(打席で)コンタクトすることや守備を大事にする。米国ではより多くの三振もするけどパワーがある。ただ、最近は少しずつ変わってきているよね。大谷、村上、誠也にしても、アメリカンスタイルの野球になってきているし、少しずつ変わってきている。10年後にはNPBもMLBに近くなっているかもしれないね」。
トレード移籍した一方、27年の来季までダ軍が保有権を所有。同年オフにFAとなる立場として、将来的に日本でプレーする可能性はあるのだろうか。ストレートな質問に、ヌートバーは一瞬、真面目な表情になりつつも、笑みを浮かべて言葉をつないだ。
「(日本で)プレーしたい気持ちはあるけど(笑い)、少なくともあと1年はここ(ダ軍)でやるつもりだから。できるだけ長く米国でプレーするつもりだけど、もし(日本行きが)そうなれば楽しい経験になるだろうね」。
ただ、今は近い将来ではなく、目の前の戦いしか見ていない。公式戦も残り3週間あまり。ヒリヒリするような最終決戦へ向け、少しだけ口調を強めた。「今は、ポストシーズンに出るためにプレーしているんだから」。チームとして勝つ喜び、充足感を知るヌートバーは、その時ばかりは笑みをこぼすことなく、鋭い眼光で言い切った。
<編集後記>
日本人の母久実子さんの手料理で育ったヌートバーは、当然のように大の日本食好きでお気に入りは母お手製のギョーザ。幼い頃は、夏休みのたびに来日し、これまでWBCを含め8回ほど、日本の土を踏んだ。「焼き肉もそうだけど、日本の食べ物は何でも信じられないくらいおいしいよ」。ただ、次回のお楽しみは、意外にも和食ではない。「みんな日本のイタリアンがめちゃくちゃおいしいと言うけど、まだ食べたことがないんだ。今度行ったら、日本でイタリアンを食べたい。いずれにしても、日本の食べ物はベストだよ」。母久実子さんの「食育」は、かなりのハイレベルだったに違いない。