【町田】虎視眈々と出番狙う41歳中島裕希 果敢にゴールに迫る“夏男”はチームのカンフル剤
J1登録最年長の41歳2カ月になるFC町田ゼルビアFW中島裕希が、虎視眈々(たんたん)と出番を狙っている。富山一高から03年に鹿島入りしてプロ23年目。好調なチームにあって今季はまだリーグ戦への出場はない。昨年は夏場以降に出場機会をつかむと10月5日の川崎F戦では40歳3カ月19日でゴールを挙げ、J1歴代4位の年長記録も打ち立てた。Jリーグ公式戦660試合114得点。その経験は今季も勝負どころで生かされることになりそうだ。
◇ ◇ ◇
これほど夏空が似合う41歳はいない。日焼けした肌に長髪を汗でぬらし、白い歯を見せてニッコリと笑う。中島には永遠のサッカー少年ともいう風情がある。プロ23年目、町田では10年目を迎えた。炎天下に負けず精力的に走り、心と体を全力で追い込んでいる。
「自分はサッカーが好きでやっているので、その一心です。年を取れば取るほど1日1日の大切さを感じています。いつサッカーができなくなるか分からない。一日でも長くサッカーをやりたい、その心持ちが出ているんだと思います」
今季は8月26日時点でリーグ戦4試合、ルヴァン杯2試合、天皇杯2試合にベンチ入りしている。チームは好調で6月以降の公式戦12試合で11勝1分けと負けなしとあって、出場機会はなかった。ただやるべきことは変わらない。「常に準備はしていますし、チームが勝つために自分に何ができるか考えています」。
昨季もチームが好調に走り続けた前半戦は出番がなかった。しかし暑い夏場にチームの勢いが鈍ると出番が巡ってきた。果敢にゴールに迫る“夏男”はチームのカンフル剤となった。リーグ戦で5試合1得点、ルヴァン杯でも3試合1得点と結果を残し、攻撃のバックアッパーとして存在感を強めた。今季もどこかでチャンスはやってくる。その時に向け、ゴールハンターは牙を研ぎ続けている。
長くプレーを続ける上で家族の存在は大きい。特に小学4年生になる長男はサッカーに熱中しており同じFWというのも刺激になっている。「子どものためにもJリーガーでいたい」。アスリートとして挑み続ける父親の姿を見せたい。言葉よりも背中で語る男は、長男の試合を観戦しても一切指摘はしない。「すべてコーチに任せています。自分が親から言われて嫌だったので子供には言わない。“頑張ったね”くらい」。そう言って目尻を下げた。
J1史上最年長得点という大記録がかかる。94年に鹿島ジーコが41歳3カ月12日で得点しており、中島が10月4日の第33節広島戦以降にゴールを挙げれば31年ぶりの更新となる。ただし頭の中は個人のことよりチームのことだけのようだ。
「タイトルを取りたいという欲がいっぱい出てきている。それがモチベーションになっている。勝っている時こそ謙虚にしたたかに、上を目指して全員で積み上げていければ。自分は町田のためにやるだけ」
日焼けした肌と丸太のような太ももが、日々の努力を雄弁に語っている。【佐藤隆志】
◆中島裕希(なかしま・ゆうき)1984年(昭59)6月16日、富山県高岡市生まれ。富山第一高から03年に鹿島入り。仙台、山形を経て16年から町田に所属。J1通算101試合5得点、J2通算531試合104得点、リーグ杯通算28試合5得点。175センチ、80キロ。家族は妻と一男一女。