DeNA対ヤクルト 2回表ヤクルト無死、左越えソロ本塁打を放つ村上(撮影・浅見桂子)

<DeNA1-5ヤクルト>◇29日◇横浜

あいさつ代わりの1発を決めた。ヤクルト村上宗隆内野手(25)が復帰初打席で1号先制ソロを放った。2回にDeNA東の直球を左翼席に運んだ。上半身コンディション不良で長期離脱。4月17日阪神戦以来、103日ぶりに1軍に戻り「4番三塁」で即スタメン出場し、最高の結果を出した。帰還した主砲の1発で流れをつかみ、チームは22年6月(8連勝)以来、3年ぶりの7連勝。5位広島とは4・5ゲーム差となり、鯉の背中が見えてきた。

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まだ西日がグラウンドを斜めに照らしていた。村上はバットを両手に握ったまま確信の“後ろ歩き”で、左翼席の中段に飛び込む打球を見届けた。復帰初打席の2回先頭、2ストライクからDeNA東の真ん中高め146キロ直球を完璧につかまえた。1号の先制ソロは決勝弾。29イニング連続無失点だった難敵左腕をいきなり攻略した。「変な緊張もなくすごく楽しかった。僕が帰ってきて負けたら、何を言われるか分からないので必死に頑張りました」。待ちわびた1軍の空気を堪能しながら結果を導いた。

キャリア初の長期離脱を強いられた。3月に痛めた患部は、復帰した4月17日阪神戦で再発。症状は、より重かった。現実を受け止めながら、「その1日を一生懸命生きる」と言い聞かせ、今できることに徹した。5月下旬。屋外でキャッチボールを再開した。距離にして約30メートルも「やばい、野球楽しい」と素直に言った。これまで当たり前だったことに心が躍った。

ベクトルは自分はもちろんチームの未来にも向けた。惜しみなく時間を割き、経験を注いだ。

あの日は初夏の日差しが照りつけた。6月12日。2軍の戸田球場で村上の姿はドラフト2位モイセエフの打撃練習の横にあった。「来た球に回るだけ」「悩むな。頭で考えるからダメなんだ」。30分以上、熱く付き添った。プロの壁にぶつかる未来の大砲候補の迷いを消すように、フルスイングを貫く哲学を注ぎ込んだ。

その姿勢の根底には自らの歩みがある。自身も青木GM特別補佐らと数々の打撃論を交わした。新人時代は山田哲人をまねて足を上げるフォームにも挑戦した。実践と修正を繰り返し、今がある。偉大な背中を追い、次なるスターが生まれる。

もちろん、けがをしないに越したことはない。それでも村上は言う。「引退した時、2025年はあんまり試合に出ていなったなと振り返る期間になると思う。これから先もっともっと長い野球人生。もっともっと頑張ります」と意義ある時を過ごし、勝負の舞台に戻ってきた。チームは3年ぶりの7連勝で、どん底を抜けた。帰還した主砲は、ツバメを上昇気流に導く光となる。【上田悠太】

▽ヤクルト・オスナ(6回先頭、左翼ポール際に7号ソロ)「勝ちに貢献できて本当にうれしい。(村上の復帰で)中心選手がいれば、打線の厚みが増すのは間違いない。チーム全体、全選手にいい効果があるんじゃないかな」

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【ヤクルト】村上宗隆「僕が帰ってきて負けたら…」復帰即弾で確信の“後ろ歩き”3年ぶり7連勝