【高校野球】浦和実の小野蓮「キャプテン降りる」チームのため嫌われ役もいとわなかった主将/埼玉
<高校野球埼玉大会:昌平1-0浦和実>◇25日◇準決勝◇大宮公園野球場
僅差だった。スマートフォンで逐一結果を調べたくなるほどの熱戦の末に、今春のセンバツ4強の浦和実(埼玉)が昌平に敗れた。春夏連続での甲子園出場の芽がついえたのを確認した後、主将の小野蓮内野手(3年)の顔が浮かんだ。
大きな葛藤と戦っていた。大会前に「実はセンバツが終わった後、キャプテンを辞めたいとみんなに伝えたことがあったんです」と打ち明けた。自ら主将を降りると決断した背景について「自分が選手たちに言ってきたことが一向に変わらず、変化がないまま1日1日が終わっていくことに無力さを感じて。チームが良い方向に変わるなら、僕はそれでいい」と理由を明かした。
目に付いたのはグラウンド外の部分だ。日頃から進んであいさつや感謝の気持ちを伝え「応援されるチーム」を目指してきたが、センバツ出場が決まった後からめっきり自然に言う回数が減ったように映った。遠征中にグラウンドを貸してくれた関係者への「ありがとうございます」の一言。宿泊先で料理を提供してくれたスタッフへの「ごちそうさまでした」といった気遣い。流れ作業のように行う仲間たちの姿に気の緩みを感じ「このまま最後の夏に入ったら…」という危機感が重い決断をさせた。
グラウンドでのプレーに直結するわけではない。小野自身もそれは分かっているが「1つ1つのことが全て、野球につながるから」と自分の信条は曲げない。嫌われることをいとわず口酸っぱく言ってきた。
膝のケガもあって出場機会は少なく、主に試合では三塁コーチャーとしての役割だ。甲子園という大観衆の前でチームが躍動する姿を目に焼き付けたからこそ「僕は応援してくれる人たちのために戦いたい」と強く思った。
仲間たちからの強い慰留を受け、最後の夏も変わらず主将として臨んだ。選手としての活動はこれで一区切り。「今後は指導者を目指して、大学では学生コーチとしてやっていきたいです」。いつの日か、今度は現場で監督として再会する日が来るのが楽しみだ。【平山連】