04年ア・リーグ優勝決定戦第5戦、同点のホームを踏むレッドソックス・ロバーツ

メジャーリーグはトレード期限が近づいて来ました。毎年メジャーでは7月31日(日本時間8月1日)。トレード期限の戦力補強に成功したチームが世界一になるといっても過言でないぐらい大事な時期を迎えています。すなわち、チームのGMにとって一番の腕の見せどころと言えます。

それは過去の歴史を振り返って見ても一目瞭然です。中でも、私にとって最も印象的なのは2004年のレッドソックスです。当時のテオ・エプスタインGMが「我々が勝つには守備力の強化が必要だ」と強調。それこそが伝統的な打撃のチームに欠けていた最大の弱点でした。

そこで7月末のトレード期限に看板スターのノマー・ガルシアパーラ遊撃手を放出し、代わりにツインズからダグ・ミンケイビッチ一塁手、エクスポズからオーランド・カブレラ遊撃手という名手2人を獲得。さらにドジャースから代走のスペシャリスト、デーブ・ロバーツ外野手を取り、本来の投手や打者とは異なる戦力補強を施しました。

そして、ア・リーグ優勝決定シリーズで宿敵ヤンキースに3連敗を喫して迎えた第4戦。9回裏3-4とリードされた土壇場で先頭打者が四球で出塁すると、代走ロバーツが初球すかさず二盗に成功。次打者の適時打で同点のホームを踏み、延長12回に劇的なサヨナラ勝利を収めました。

そこからポストシーズン史上初の3連敗から4連勝でリーグ優勝を果たしました。さらにワールドシリーズでカージナルスに4連勝のストレート勝ち。1920年ベーブ・ルースを放出して以来の「バンビーノの呪い」を解き、実に86年ぶりの世界一。その決め手となったのが、現在ドジャースを率いるロバーツ監督でした。

最近では21年ブレーブスのロナルド・アクーニャ外野手が、けがで残りシーズン絶望。そこでアレックス・アンソポロスGMがトレード期限に外野手4人を獲得しました。その4人全員が活躍し、中でもエディ・ロザリオがナ・リーグ優勝決定シリーズMVP。さらにホルヘ・ソレアがワールドシリーズMVPと、世界一の立役者になりました。

また、23年7月にレンジャーズの本拠地球場を訪れた時、クリス・ヤングGMに会うと「チーム優勝のために先発投手を獲得する」と明言しました。すると、その直後にメッツからサイ・ヤング賞3度受賞のマックス・シャーザー、さらに翌日カージナルスから先発左腕ジョーダン・モンゴメリー獲得に成功。2人の活躍もあって、球団史上初の世界一に輝きました。

昨年はドジャースがホワイトソックスから剛腕マイケル・コペック投手、カージナルスからベンチ層を厚くするためにトミー・エドマン内野手、さらにタイガースから先発のジャック・フラハティ投手を獲得。とりわけ、エドマンがナ・リーグ優勝決定シリーズMVPの活躍で、世界一に貢献しました。

今年ドジャースはトレード期限にどんな戦力補強を施すでしょうか? 最大の補強ポイントはオーバーワーク気味のリリーフ投手陣にあると言えます。既にオリオールズの「ビッグマウンテン」こと巨漢フェリックス・バティスタ、ガーディアンズの守護神エマニュエル・クラセら、多くの名前が挙がっています。

大事なトレード期限の戦力補強により、ドジャースは球団史上初、さらに今世紀メジャー初のワールドシリーズ連覇なるか? 今シーズン後半戦に本格的な投打二刀流復活を目指す大谷選手の活躍ともども、新戦力の動向からも目が離せません。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 迫るトレード期限、補強選手がワールドシリーズ制覇の決め手になることも GMは腕の見せどころ