平塚学園対横浜 サヨナラ勝利を決め、スタンドに涙であいさつをする横浜の選手たち(撮影・保坂淑子)

<高校野球神奈川大会:横浜5-4平塚学園>◇22日◇準々決勝◇サーティーフォー保土ケ谷球場

夏の横浜も強かった! センバツ優勝の横浜(神奈川)が主将の阿部葉太外野手(3年)の逆転サヨナラ打で準決勝進出を決めた。初回から投手陣が打ち込まれ、4回までに4点を失う劣勢も、5回以降1点ずつ返した。1点ビハインドで迎えた9回に2死二、三塁とし、阿部葉がフルカウントに追い込まれながらも、しぶとく右中間に運び2者が生還。劇的勝利を飾った。

  ◇  ◇  ◇  

阿部葉のバットには自信がみなぎっていた。9回2死二、三塁。4球で追い込まれてから1球ボールを見送り、さらに2球ファウルで粘った。「絶対に打てる。自分が決めるしかないんだ」。心の中で何度もつぶやいた。緊張なんてない。「こういう場面で自分に回ってくるのは、野球の神様が、ここはお前が決めないとこの先も勝てないぞ、と言っているんだ」。

運命を受け入れた主将は強かった。インハイの真っすぐを強振すると、右中間を真っ二つに破るサヨナラの2点適時二塁打に。一塁を回り、右手を高々と掲げた。「ここで終わらなくてよかった」。ホームに戻ると、涙ぐむ奥村頼人投手(3年)、織田翔希投手(2年)と抱き合い、喜びを分かち合った。

村田浩明監督(39)の言葉が選手たちに勇気を与えた。序盤は劣勢だったが、イニング間にこう言った。「7、8、9回で必ずチャンスがくるぞ」。そして、座右の銘「力戦奮闘」を付け加えた。勇気を奮い起こし、最後まで全力で戦う。その言葉どおりの逆転劇。阿部葉は「嫌な流れでしたが(村田監督の言葉で)気持ちを切らずにいけました」と胸を張った。

村田監督には脳裏に浮かんだ試合があった。「2年前、決勝で慶応に負けた試合を思い出したんです」。9回表の守備を巡って微妙な判定があり、その後に逆転3ランを浴びた。気持ちを引きずったまま裏の攻撃へ。「気持ちを切り替えて、選手たちに『行くぞ』と納得させられなかった」と1点差で涙をのんだ。失敗は繰り返さなかった。

試合を観戦していた渡辺元智元監督(80)は「これが高校野球なんだよ」とつぶやいた。「一番練習をした選手が最後に打つ。阿部がそう。そして我慢強く逆境を押し返す野球。それができてきたね」と笑みを浮かべた。強さを増す横浜の夏は、まだ終わらない。【保坂淑子】

▽横浜・織田翔希投手(2回途中から3番手で登板も4回に本塁打を浴び)「高めに浮いた甘く入った真っすぐを待って打たれ、やられたなと思った。1球で流れが変わるというのは、本当にこのことだと思った」

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【高校野球】センバツV横浜、崖っぷちから逆転サヨナラ 渡辺元監督「これが高校野球」/神奈川