福田師王「お兄ちゃんみたい」毎晩一緒に食事、先輩・板倉「コウくん」の素顔明かす「みんなの中心」
<不定期連載4>
サッカー日本代表の主軸で、ブンデスリーガのボルシアMGで2024-25年シーズンを終えたDF板倉滉(28)の不定期連載〈第4回〉は、チームメートとして共闘するFW福田師王(21)が、先輩を語り尽くす。練習はもちろん、毎晩の食事をともにするほど親密な兄貴分。ピッチ内外での素顔を明かしつつ、来年のW杯北中米大会へ2人が思い描く青写真も独白した。【取材・構成=佐藤成】
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神村学園高(鹿児島)を卒業後、即、ドイツへ渡った福田にとって、板倉は「お兄ちゃんみたいな存在」だという。Jリーグを経由することなく海外クラブに進み、右も左も分からない中で、同じチームに日本人がいることは心強かった。
「初めて会ったのは、ボルシアMGの練習に参加した高3の夏ですね。ご飯にも連れて行っていただきました。雰囲気のある人だなと思いました」
川崎Fからオランダとステップアップした板倉と異なり、自身は入団後、U-19の活動がメインだった。セカンドチームに昇格するまでの1年半は、ほとんど板倉と絡む機会はなかったという。トップチームに同行するようになった昨夏から急速に距離は縮まった。
「ピッチ内外で非常に助けてもらっています。ミーティングとか、具体的な戦術の指示とか教えてくれたり、監督とコミュニケーションを取る時も、通訳のように間に入ってくれることもあります」
今は、日本からシェフを呼んでいる板倉の家に、毎晩、食事しに行っている。
「コウくんが『いつでも来いよ』みたいな感じで言ってくれるので『じゃあ行きます』と。そんな感じで行くことになりましたね。ありがたいです」
海外で6シーズンプレーし、日本代表の正センターバックに定着した板倉は、プロとして「あるべき姿」を提示してくれる。手本として、いつしか練習後の筋トレも一緒に取り組むことが習慣となった。代表選手を間近で見て、吸収する。
「誰よりも早く来てストレッチなど準備をしたり、誰よりも残って、トレーニングやジムで筋トレをしたりしている。本当にすごいなと思います。あとは、ファン・サポーターにも優しく接したり、常にいい人。サッカーだけではダメなんだなと感じさせられます」
練習中はDFとFWという位置関係上、マッチアップする機会も多い。対峙(たいじ)してみて、その偉大さが、より身に染みる。
「ビルドアップ(前進の組み立て)で相手の逆を突くパスがうまい。守備ではカバリングの速さや危機察知能力が高いです。チームメートからも必要とされているな、と見ていて思いますし、いないといけない存在。何より結果を残しているので尊敬されています」
チーム内外から高い評価を受ける板倉の自宅は、欧州最大の日本人街デュッセルドルフに住む、小さなコミュニティーの「たまり場」にもなっているという。オフの前日には、美容師や不動産マンたちも含めた仲良し日本人グループ6、7人が、板倉家に集合する。
「試合後のご褒美みたいな感じです。みんなでバーベキューをしたり、おいしいご飯を食べたりします。コウくんは、その中でも話す方です。たまに1人でボケたり、ツッコんだり。みんなの中心で、サッカーみたいに何でもできますね」
精神的にも、その存在が大きな支えとなっている。自身がトップチームで出場機会に恵まれない時期、かけられた言葉が印象深い。
「『出番はちゃんと回ってくるから、やり続けろ』と言ってくれました。メンタル的なケアまでしてくれた。本当に全てにおいて助けてもらっています」
昨夏パリ五輪世代に当たるU-22まで世代別代表経験が豊富な福田には、夢がある。開幕まで1年を切ったW杯北中米大会に、板倉とともに出場することだ。
「(渡独後の)U-19の時も、トップでコウくんと一緒にプレーするという目標があったから頑張れた。W杯についても話しています。けがなく行きたいね、一緒に行きたいね、と。負けていられないです」
「コウくん」への愛と感謝は尽きない。日本への貢献でも、恩を返していく。
◆福田師王(ふくだ・しおう)2004年(平16)4月8日生まれ、鹿児島県出身。神村学園中高から直接海外でボルシアMGと契約。高校時代は21年全国総体、同年度の全国選手権で得点王。ドイツでは23年は主にセカンドチームでプレーし、翌24年1月にトップチームに昇格。1月27日のレーバークーゼン戦でリーグ戦デビューした。25年1月14日のウォルクスブルク戦で初ゴール。目標はポーランド代表FWレバンドフスキ。好きな食べ物はチキン南蛮。178センチ、70キロ。