ガッツポーズで笑顔を見せるサッカー日本代表の森保監督(2025年5月23日撮影)

史上9カ国目の頂点へ。サッカー日本代表が8大会連続で出場する2026年W杯北中米大会の決勝が、来年7月19日=日本時間の20日朝に、米ニュージャージー州のメットライフ・スタジアムで行われる。約1世紀に及ぶ大会史の中で、まだ8カ国しか成し遂げていない優勝を目指す森保一監督(56)が「決勝1年前」に合わせてインタビューに応じ、ちょうど1年後の世界「一」を描いた。過去の決勝を振り返りながら制覇への道のり、先に見据える「野望」を語った。【取材・構成=佐藤成】

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黄金に輝くW杯トロフィーを、何げない日常から意識している。森保監督の専用室に1枚の絵。イラストレーター宮内ヒロキ氏が手がけた「Japan’s Way」で、第2期から掲示している。自然と目に「世界一」を脳にすり込む。

「格好いいですよね。あのトロフィーは、写真で見てもやはり気になります。自分が手にしているイメージはまだ湧いていないですけど(前回22年大会の)カタールで(優勝したアルゼンチン代表FW)メッシが手にしたイメージは、めっちゃあるので。あれを自分たちが持っている、と置き換えるイメージですかね」

56年の人生、サッカーに心血を注いできた中でも、少年時代からW杯は特別だった。サッカー人生になくてはならないものだった。

「初めて見たのは1982年。ブラジルの『黄金のカルテット』ジーコ、ソクラテス、ファルカン、トニーニョ・セレーゾが好きでブラジルを応援していたんですが(2次リーグ最終戦で)イタリアのロッシに(3)点を取られて負けて。すごく残念な思いになった記憶があります。イタリアは、その勢いのまま優勝しましたね。続く86年メキシコW杯も印象深いです。4年前は一発退場で終わったマラドーナが決勝で西ドイツを倒して。まさに彼の大会でした。あとは決勝と言われてパッと思い出すのは94年米国大会のバッジョです。こういう選手でもPKを外すんだと驚きました」

森保少年にとっても夢だったW杯。93年に選手として「ドーハの悲劇」に泣いた後、日本は常連となったが、自身は日韓大会の翌03年に仙台で引退。指導者となって広島で3度のJ1優勝を果たし、代表では18年ロシア大会のコーチとして初めて大舞台を経験した。22年は監督となってドイツとスペインを連破。16強に導いたが、クロアチアに惜敗した悔しさと手応えから「優勝」を公言し始めた。

サッカーという競技の影響力も、誰よりも信じている。「FIFA(国際サッカー連盟)は国連より加盟国が多いんです」。確かに前者は211の国と地域、後者は193の国が名を連ねる。「世界的なスポーツはフットボールだけ」の自負があり、前回覇者のアルゼンチンを見て確信した。首都ブエノスアイレスで行われた優勝パレードには、推定500万人が集結。政府も臨時の祝日にしたほどだ。その映像に圧倒された瞬間から「日本でもVパレードを」が宿願となった。

「東京なら皇居周りとかですかね。もちろん考えを押しつけるつもりは全くないですけど、皆さんが集まって、日本人が日本に、日本人が日本人に、自分に誇りを持てるような時間を共有できたらいいな、と。そのために勝ちたいと本気で思っています。サッカーを通して感じてもらえれば」

コーチ、監督として、ともに日本最高成績ながら8強の壁に阻まれた過去2大会で痛感した。「いち競技団体の力では勝てない」。日本サッカー界、ではなく国民1億2380万人(24年)のエネルギーを結集して、ようやく手が届くか届かないか、の領域。そこにFIFAランキング17位からの下克上に挑む。優勝の可能性を「いま風に言うとワンチャン」と表現する。

自身が、選手が、本気で目指す世界一を争う決勝では、トップトップ(最上級)の決戦が繰り広げられてきた。「振り返ると、やはり優勝チームには世界的な名選手が多い。スーパースターの出現は必要だと思います。あとは自分自身の成長。選手起用のところは学んでいかないといけない。例えば、対談させていただいた野球の栗山(英樹)さんは、先発として9回を投げ切れる投手たちを、細かく継投してWBCを制しました。自分も試合中、選手の心情を考えて交代が遅くなることがあるので、勇気をもって、最善、最適、最高の選手起用をしていかないといけない」と期した。

「史上最強」と称される中、アグレッシブなスタイルは志向しつつ、強豪に対しては、長所を消して粘り強く戦うスタイルも忘れない。ジャスト1年後へ選手層を厚くし、戦術の幅を広げ、チームを完成させる。

己の名に運命も感じている。「男なら一番上を目指すように」と父洋記さんから名付けられた。「世界『一』になるため生まれてきた、とかは本当に世界一になってから言いたいですけど」と笑いながら「自分の名前から『一番』と『一丸』は、めっちゃ意識しています」。1年後の今日、日本列島を歓喜で揺らすため「優勝」へ一意専心する。

◆26年W杯(第23回) 米国、カナダ、メキシコで史上初3カ国共催。出場チーム数は32から48に拡大。ロサンゼルス、アトランタやバンクーバー、メキシコ市など16会場で行われる。26年6月11日(日本時間12日)に開幕。1次リーグは4チームずつA~Lの12組に分かれて争われ、各組2位までと3位の成績上位8チームの計32チームが決勝トーナメントに進出。組み合わせ抽選は12月の予定。

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【日本代表】森保監督、W杯優勝の可能性「いま風に言うとワンチャン」/インタビュー