法政の佐相健斗監督

亡き父の意志を継承する「シン・打撃伝道師」が古豪復活の歩を進めている。

春夏4度の甲子園出場歴を持つ第4シード・法政(西東京)が19日、世田谷学園との4回戦(コトブキヤスタジアム)に臨む。

チームを率いる佐相健斗監督(34)は1月に相模原で前監督の父真澄さん(享年66)を病気で亡くした。高校球児の時は川崎北(ともに神奈川)の選手と監督として親子で激戦区を戦い、その後は指導者を志し、20年に法政の監督に就任。志半ばとなった公立の名将に捧げる夏は「1戦必勝」を掲げる。

東京都三鷹市にあるグラウンドはラグビー部やサッカー部、そして中学部活動と共用。全面で使える日はないという。「今ある環境で上を目指していくために効率良く練習することを追求してきた」。

決して恵まれた環境ではなくても、創意工夫で考え抜くスタイルは県立校の川崎北での選手時代とも重なる。08年夏の北神奈川大会3回戦、当時監督の父と2年生ながら「4番左翼」の健斗監督は父子で強豪・横浜商大に勝利を挙げた。

独自の打撃理論を展開し、選手の才能を開花させるのが、父の指導方法だった。健斗監督もそれを受け、打者として成長をした。

最も記憶に残っているのが、小学生の時。理想のレベルスイングを追求するため、父がデジタルカメラを使って健斗監督のスイング軌道を撮影し専門誌に載っているような分解写真にして解説してくれたという。

打撃理論に関する本も執筆してきた父の理論は「小さい頃から頭に刷り込まれていたので、本を読まなくても頭に入っている」と健斗監督。法政ではさらに理論をアップデートしようと、模索を続けている。

父は19年夏の神奈川大会では阪神及川雅貴投手を擁した横浜に打ち勝ち、ベスト4に食い込んだ。

「野球は打った方が楽しいじゃん」

いつも、そう笑って話す父に、長男は「束になって強豪私学を倒す集団をつくる力があった」と思い返す。春季東京大会で6年ぶりの夏のシード権を奪還した法政は、16日に福生を4-1で下し、初戦突破を飾った。迎え撃つのは、プロ注目スラッガーを擁す世田谷学園。「(父みたいに)打ち勝ちたいけど、あぐらをかいて戦えるチームではないので、一つの勝利へ束になって挑みたい」。41年ぶりの夏の聖地へタクトを振る。【泉光太郎】

情報提供元: 日刊スポーツ
記事名:「 【高校野球】法政・佐相健斗監督「束になって」亡き父の意志継承の夏へ 19日4回戦/西東京