【高校野球】左半身まひに負けず背番号20 川崎工科1年・綾香英利 初めての感謝の夏/神奈川
<真夏のライラック:川崎工科・綾香英利内野手(1年)>
<高校野球神奈川大会:藤沢清流10-2川崎工科>◇13日◇2回戦◇等々力
困難に立ち向かう原動力は「親への感謝」だった。
川崎工科の綾香英利内野手(1年)は、ボールボーイとして劣勢の中でも仲間に声をかけて励まし続けた。試合前には一塁でノックを受けたが、実は左半身にまひを抱えながら野球を続けている。先天的に脳の血管に奇形があり、小学4年の時に入浴中の脳内出血で救急搬送。まひが生じた。
右手のグラブで球を捕り、すぐに左脇に抱えてグラブを外し、右手で投げる。野球は「全ての動作が難しい」と悩むが、やめる選択肢はなかった。「親の支えでここまで来られた。野球を頑張ることで、感謝を示したいんです」。スタンドで見守った父の勝利さん(59)は「スポーツをやっているだけですごい。みんなと同じ舞台に立てて良かった」と、うれしそうに目を細めた。
守備ではどうしても送球に時間がかかるため、打撃を伸ばそうと決めた。「ほぼ右手だけで打つ」スタイルだが、鍛え上げた右手の握力は同年代の平均を約20キロも上回る60キロ。そんな努力が、背番号20でのベンチ入りにつながった。新チームでの目標は、スタメン出場に公式戦初安打。感謝の思いは、きっと両親に伝わっている。【寺本吏輝】